2021年12月のブログです
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野沢尚さんの『反乱のボヤージュ』(2004・集英社文庫)を読む。
すごく久しぶり。
当然、内容は全く忘れていて、若者小説なので、あまり期待しないで読み始めたが(野沢さん、ごめんなさい)、これがすごい面白い。
じーじの中で、今年のベスト3に入りそう。
ある大学の、古びた学生寮の取り壊しをめぐる人間模様。
例によって、あらすじは控えるが、自治会の学生、ノンポリの学生、運動部、応援団、途中から加わる舎監、などなどの中で、主人公の成長が描かれる。
ノンポリの学生も、みんな、さまざまな事情を抱えていて、それを描く野沢さんの筆はすごい。
そして、温かい。
それが単に甘いだけでなく、生きる切実さを伴っているので、深く、哀しい。
なかなか深い良質の小説だ。
以前、読んだ時には、ひょっとすると、この深さがよくわからなかったのかもしれない。反省。
しかし、この年になってでも、こういう良さを味わえたことは幸せだ思う。
うっかりもののじーじゆえ、こういう読み落としもきっとたくさんあるに違いない。
謙虚に読書と勉強に励みたい。 (2021.12 記)