DNPやテクセンドフォトマスクはそれぞれ、2nm世代の先のプロセスに向けたフォトマスク開発にも乗り出す。具体的には、高NAプロセス向けや1.4nmプロセス向けである。

 こうした最先端プロセス向けのフォトマスク開発に当たり、DNPやテクセンドフォトマスクはそれぞれ、外部の企業や研究機関と協業している。

 

DNPはimecと、テクセンドフォトマスクはIBMと協業している。DNPは、5nmプロセスや3nmプロセスに向けたフォトマスクでもimecと共同開発しており、それを2nmプロセス以降でも継続する形だ。

テクセンドフォトマスクも、かねてIBMとフォトマスクの研究開発を進めてきた。高NAや2nm以降のプロセスに向けたフォトマスクの共同開発についても新たに契約し、2024年2月からの5年間で進める。

 

 

外販フォトマスクに追い風

 

EUV露光の導入以降、フォトマスク技術開発のハードルが上がった。

そのため、大手のファウンドリー企業やメモリーメーカーは、最先端プロセスに向けた内製フォトマスクの研究開発に集中してきたという。その結果、EUV露光用フォトマスクでは内製品が主流になった。

 

その分、レガシープロセスでは外販フォトマスクを利用するケースが増えてきたという。すなわち、外販フォトマスク市場に追い風が吹いている。

外販フォトマスクの市場は成長する見込みだ。そこで、外販フォトマスクメーカーは、DUV(深紫外線)露光技術を用いるプロセスに向けたフォトマスクを増産しつつ、2nmプロセスのような最先端品の研究開発を進めている。

 

DNPを例に見ると分かりやすい。半導体業界団体の米SEMIのデータを基にDNPが推計した結果によると、外販フォトマスクの市場は、2020年から2027年にかけて年平均成長率8.13%で拡大していくという。これは、半導体市場を上回るペースだとする。

そこでDNPは、外販フォトマスク市場にとってボリュームゾーンである、28nmや40nm、65nmといったレガシープロセスに向けたフォトマスクの生産能力を拡張している。

 

2023~2025年度に約200億円を投資し、2025年の生産能力を2022年比で1.2倍にする計画だ。

現在最先端とされるEUV露光用のフォトマスクも、将来EUV露光技術が成熟してレガシー化すれば、内製品から外販品へと置き換わっていくとDNPはみている。すなわち、ラピダス以外の顧客を開拓する余地がある。

 

 

ナノインプリントにも注力

 

外販フォトマスクメーカーの中には、微細な回路パターンを形成する原版として、ナノインプリントの型(テンプレート)に力を注いでいる企業もある。代表格はDNPだ。

半導体製造に向けたナノインプリントリソグラフィー装置を手掛けるキヤノンと共同で研究開発している。顧客に対してナノインプリントテンプレートを2024年度中に供給する予定だ。2030年までに顧客が量産プロセスに採用すると見込む。

 

半導体プロセスの一部にナノインプリントを導入することで、消費電力の削減や生産性向上によるコスト削減につながる。

ロジック半導体かメモリーかによって適用箇所は異なるものの、例えばビアホールの形成に利用される。

 

DNPは、ナノインプリントテンプレートを含むフォトマスク事業の売り上げ増を狙う。

具体的には、2025年度の売上高を2022年度比で約15%増やす計画である。2030年度には、2022年度に比べてEUV露光用マスクで約100億円、ナノインプリントテンプレートで約40億円の増収を狙う。