設計支援サービス企業はTSMCなどファウンドリーとも相乗効果で成長する(TSMCの工場)=同社提供
台湾で半導体の設計支援を手掛ける企業が成長している。
世芯電子(アルチップ・テクノロジーズ)など主要3社の売上高合計は過去4年で3倍超となった。米IT(情報技術)企業などによる半導体の自前設計を支え、台湾の半導体受託生産会社(ファウンドリー)にも受注機会をもたらしている。
設計支援サービス各社は家電や通信、サーバーといった特定用途ごとに特化した多品種少量の半導体を得意分野とする。
専門技術者を多く抱え、設計・開発から製品化までを顧客と伴走し、カスタム品を作り込む。
台湾で有力なのがアルチップと創意電子(グローバル・ユニチップ)、智原科技(ファラデー・テクノロジー)の3社だ。
2023年12月期の3社の売上高合計は686億台湾ドル(約3000億円)と、19年12月期に比べ3.4倍に成長した。
特に世芯電子は同期間の売上高が7倍ほどと成長著しい。
株価は足元こそ調整局面にあるものの、4年前の10倍超の水準だ。台湾有数の値がさ株として「股王(株式市場の王)」とも称されるようになった。
この数年の急成長の原動力は、米国などのIT(情報技術)大手による半導体の自前設計の流れだ。米クラウド大手などが人工知能(AI)処理の効率化のため、自社のサーバーや端末に最適な半導体の自社開発に相次ぎ乗り出した。
各社は半導体技術者を採用するなど技術の蓄積に動くが、半導体の開発経験はまだ十分でなく、半導体専業メーカーには及ばない面がある。ここに設計支援サービスの商機が生まれている。
こうした設計支援ビジネスは米半導体大手ブロードコムや日本のソシオネクストなども手掛ける。台湾勢の強みとなっているのは、台湾に有力企業が集中するファウンドリーとの歴史的な提携関係の深さだ。
3社はそれぞれ台湾の上場企業だが、創意電子はファウンドリー世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)、智原科技は同大手の聯華電子(UMC)を主要株主とする。アルチップもTSMCと提携関係にあり、顧客の設計から生産委託までをスムーズにつなぐエコシステムができあがっている。
半導体の自前設計の拡大は、ファウンドリーの側からみても受託生産の裾野拡大につながる。TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏も設計支援など提携先との関係を「大連盟(グランド・アライアンス)」と呼び、優位性を強調してきた。
各国・地域が自国の半導体産業の振興に力を入れるなか、巨額投資を伴う工場の誘致が注目されがちだ。だが産業競争力を高めていく上では、設計を含めたエコシステムを構築できるかという視点も欠かせない。
(台北=龍元秀明)
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