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EV電池リサイクル始動 住友金属鉱山は日本で精製施設

2024-11-28 21:13:25 | 環境・エネルギー、資源

電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)で使ったリチウムイオン電池を再利用する動きが日本で始まった。

住友金属鉱山や日本化学産業は2030年までに拠点を設け、ニッケルなどの使用済み金属を精製して新車向けに納める。資源に乏しい日本は電池向け金属の確保が喫緊の課題だ。希少金属の海外流出を防ぐ。

 

 

電池部材を手がける日化産は30年までに200億円を投じ、EVやHVの使用済み電池を破砕してできる黒い粉「ブラックマス」を再生する拠点を国内に設立する。

電池の主要部材の一つである「正極材」に使う金属だけを薬品で分離させて抽出する。精製した金属は、国内の正極材メーカー向けに供給する。

 

 

月にEV5000台分を処理

新拠点では月当たりEV5000〜6000台分のブラックマスを処理する。本格展開に向けて、26年にも福島県で実証棟(パイロットプラント)を稼働させる。

抽出した金属をどれだけ再利用できるかなどを調べて、本格運用につなげる。鉱物由来の電池材料と同等以下の価格での供給を目指す。

 

日産自動車のEV「リーフ」は10年に発売された。10年代に発売されたEVの第1世代は30年ごろに廃車を迎えるとされる。現状は国内に再生網が十分に整っていない。

 

 

日本で流通する多くのEV電池はニッケル、コバルト、マンガンなどの原料を使う。

これらの金属は東南アジアやアフリカが産出地で、日本国内では調達できない。海外に流出すれば大きな痛手になる。

 

EVの普及が進む中国では、寧徳時代新能源科技(CATL)などの民間企業が金属の処理や精製といった技術で先行する。

日化産の角谷博樹社長は「ブラックマスを正極材材料に精製できなければ、電池材料が中国などに流出しかねない」と危機感を口にする。

 

EV電池をリサイクルする市場の拡大余地は大きい。日本総合研究所によれば足元の国内市場はゼロだが、40年までに1000億円以上に成長する見通しだ。

ガソリン車からEVへの乗り換えが進み、EVが増加すれば不要になる電池も増える。電池を破砕してブラックマスの増加が見込まれる。

 

 

EV電池メーカーに金属の再生を求める規制の動きが出ていることも後押しする。欧州連合(EU)では31年までに、電池に使う金属ごとに一定の割合で再生材の使用を義務付ける。

例えばコバルトは16%、リチウムは6%以上を使用済み電池から抽出する再生材で賄う必要がある。韓国でも7月、政府がEV向けを中心とした使用済み電池の再利用を促進する方針を示した。

 

国内大手も投資を積極化している。正極材メーカーの住友鉱は26年中にブラックマスからニッケルとコバルトを抽出する事業を始める。

愛媛県にある拠点の敷地内に設備を新設し、精製して自社生産する正極材材料に使う。

 

EV電池のもう一つの主要部材である「電解液」に使う電解質の再生にも取り組む。

住友鉱がブラックマスを精製する工程で出たリチウム資源を、材料メーカーの関東電化工業に供給。電解質を精錬し、電解液メーカーに販売する。

 

三菱マテリアルは25年にも、ブラックマスから正極材材料を抽出する実証棟を約20億円を投じて稼働させる。

数年内に追加投資し、数千トンのブラックマスを処理できるリサイクル設備の構築を視野に入れる。

 

 

 

 

市場拡大に向けて、異業種が協力する枠組みも相次いで立ち上がる。「グリーンEVバッテリーネットワーク福岡(GBNet福岡)」が7月、福岡県で発足した。

トヨタ自動車九州や、AESCジャパンなどの電池メーカー、住友鉱などの電池部材メーカー、環境省などで構成。EVの新品の販売から摩耗した電池の再利用、金属を抽出して新品向けに供給する再生網のモデルケースをつくる。

 

10月にはNTTドコモや三井住友フィナンシャルグループなどが参加する「EV電池スマートユース協議会」が発足。EV電池の再利用のための法整備や電池の診断基準確立を進める。

 

 

 

電池回収網に課題

使用済み電池から金属を抽出する仕組みはできつつあるが、電池の回収ルートの構築は課題だ。「電池の回収量が慢性的に足りない」。

日産と住友商事の共同出資会社、フォーアールエナジー(横浜市)の堀江裕社長は指摘する。フォーアールエナジーは福島県浪江町にEV向け電池の再利用拠点を持つ。

 

同社は廃棄されたEVの車載電池を回収し、災害用の蓄電池などに再利用する事業を手掛ける。中古EVの多くが海外に輸出され、日本国内で電池を十分に回収できなくなれば、事業の根幹が揺らぎかねない。

「(電池を確保するために)独自にやれる対策を講じてきた。それでもEV流出が続くと電池の調達コストが上がってしまう」(堀江社長)。

 

EV電池のリサイクルを進めるには、日本国内で中古EVを流通促進する施策も必要と説く。自社では調達網拡大へHVの電池の活用を検討する。

EV電池の循環産業は自動車や電池メーカーにとどまらず多くの事業分野に影響する。金属の流出を食い止める供給網づくりが急務だ。

(郭秀嘉、落合修平)

 

 
 
 
 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

 

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志田富雄
日本経済新聞社 編集委員
 
ひとこと解説

欧州連合(EU)は域内で流通する電池についての規制を決め、段階的に施行していきます。

2031年8月以降は電池に使う鉛85%、コバルト16%、リチウム6%、ニッケル6%についてリサイクル材を使うことを義務化、36年にはさらにリサイクル比率が引き上げられます。

決められた比率以上のリサイクル金属を使った電池ではないとEUで販売ができなくなります。 バイオ燃料の利用や原料(森林破壊につながらない)規制もそうですが、欧州で先行する規制が市場の変化を後押ししている側面があります。

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日経記事2024.11.28より引用
 
 
 
 

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