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ならず者国家の抑え方 トランプ氏が向き合う複合危機 風見鶏

2024-11-30 17:09:39 | NATO・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


トランプ次期米大統領(中央)は中国の習近平国家主席(右)やロシアのプーチン大統領(左上)、
北朝鮮の金正恩総書記(左下)らとの取引を探る=写真はロイター

 

ウクライナ戦争は北朝鮮が兵士を派遣し、中国とイランも軍事・経済の両面でロシアによる侵略を支える構図が鮮明になった。

「彼らの連携にくさびをうたなければならない」。11月下旬、イタリアで開かれた主要7カ国(G7)外相会合はこの4者の協調をどうやって打破するかをめぐり議論が白熱した。

 

欧州と中東の戦火はやまず、アジアでも紛争の火種がくすぶる。

地域を超えて相互に結びつき、同時に進むこれらの危機への対応を誤れば戦乱の拡大を招きかねない。世界の外交・安全保障の当局者の間でこんな危機感が強まる。

 

この難題に臨む米国の次期大統領にトランプ氏が就く。G7などで足並みをそろえて対処するよりも2国間の取引(ディール)を好むが、いまの国際情勢に通じるだろうか。

第1次政権では北朝鮮の核問題を打開するため、国連安全保障理事会で常任理事国の中ロの協力も得て北朝鮮への数度の経済制裁につなげた。

 

経済面で追い込んで米朝のトップ交渉に持ち込み、事態の進展を試みた。失敗の一因はその交渉の進め方にある。

米朝首脳会談の調整が始まった2018年3月、同じタイミングでトランプ氏は中国に貿易戦争を仕掛けた。

 

反発した中国は水面下で北朝鮮への支援を再開し、制裁に抜け穴ができた。米中、米朝の2国間関係を包括的にとらえて事を運ぶ視点を欠いていた。

米ハドソン研究所のケネス・ワインスタイン日本部長は「2国間の取引外交だけで、ならず者国家の共闘を食い止めるのは難しい」とみる。

 

対北朝鮮で中ロとの協力はもはや期待できそうにない。むしろイランを交えた4者の結びつきは強固になった。

「かつてのドイツとイタリア、日本のようにこの枢軸は世界を大戦に導きかねない」(元米政府高官)との見立てすらある。

 

中国がロシアをけしかけて欧州で戦線を広げれば米国はその対応に忙殺され、台湾海峡で中国がさらに優位に立つ――。

トランプ次期政権で要職起用が取り沙汰されるエルブリッジ・コルビー元国防副次官補は「米軍と世界はこんな脆弱な状況にある」と懸念する。

 

次の米政権で外交・安全保障を担う枢要なポストには対中強硬派が並ぶ。

その代表格は国家安全保障担当の大統領補佐官に就くマイク・ウォルツ下院議員だ。台湾防衛で米国の関与を明確にしない「戦略的曖昧さ」の変更を唱える。

 

これは米中関係の土台となってきた歴代米政権の「一つの中国」政策の修正にもつながる。

外交カードならともかく、実行に移せば中国を対外的な強硬策へと押しやりかねない。それが台湾有事などにつながれば日本にも波及する。

 

「『今日のウクライナはあすの東アジアかもしれない』と日本が言っていたとおりの展開だ」。先のG7会合では米欧の出席者から岸田文雄前首相の発言を引いて日本外交に期待する声があがった。

日本には安倍晋三政権下で「自由で開かれたインド太平洋」構想を提唱し、第1次トランプ政権もそれを採用して米太平洋軍を「インド太平洋軍」に改称した経緯がある。アイデアと働きかけ次第でトランプ氏を動かしうる。

 

石破茂首相は29日の所信表明演説で、通例だと演説の中盤以降で触れられることが多い外交政策を最初の課題に挙げた。

日米関係に関し「両国の国益を相乗的に高めあう」と強調した。

 

国際社会で複合的に生じている危機の収束は米国だけではおぼつかない。日本にとって米国の足らざるをどう補えるかを模索する4年が始まる。

(編集委員 永沢毅)

 

 

 
 
 
 

経験豊富な執筆陣が国内外の政治情勢について論考します。

 

 

日経記事2024.11.30より引用

 

 


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