3日午前の東京株式市場で日経平均株価は大幅に続伸した。
前日からの上げ幅は一時900円を超え、取引時間中として3週間ぶりに3万9400円台に乗せた。
米政府は2日、人工知能(AI)向けの先端半導体や高性能の半導体製造装置の輸出規制を発表。日本は規制の対象外となったほか、中国のメモリー半導体大手が規制リストから除外された。市場に安堵が広がり、日本株の意外高につながった。
午前終値は前日終値比667円(1.7%)高の3万9180円だった。
米政府は取引を事実上禁じる「エンティティーリスト」に140社の中国系企業を追加した。
韓国や台湾などが人工知能(AI)向けのメモリーや半導体製造装置を中国に向けて輸出することも事実上禁じた。一方で、既に独自の対中輸出規制を実施している日本やオランダなど約30カ国は新たな規制の対象外とした。
米国の対中半導体規制の強化は関連銘柄の収益悪化懸念につながりそうだが、3日午前の東京市場の反応は総じて好反応となった。
東京エレクトロンは一時前日比1140円(5%)高の2万4780円まで上昇し、約2カ月ぶりの高値をつけた。アドバンテストも一時4%高となり、この2銘柄で日経平均を172円押し上げた(午前終値時点)。ディスコは7%、レーザーテックも6%上げる場面があった。
日本の半導体製造装置メーカーの意外高を演出したのは、対中規制への懸念から半導体株が下落する方向に賭けてきた投資家の買い戻しだ。
大和証券の柴田光浩シニアストラテジストは「新たに日本に対し規制されないと明らかになった点に注目し、株式市場はポジティブに反応した」と分析する。
前日に米国で発表になった景気指標が米国景気の底堅さを示す内容だったこともハイテク株買いを誘った。
11月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は5カ月ぶりの高水準となり、市場予想も上回った。
ニッセイアセットマネジメントの山本真以人チーフ・アナリストは「規制の発表に米製造業指数の上振れのニュースが加わり、半導体市場の先行きの悲観が和らいだ」と指摘する。
今回の輸出規制の内容で株式市場が最も注目したのは、半導体メモリー「DRAM」大手、長鑫存儲技術(CXMT)がリストから外れたことだ。
岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストは「日本の半導体製造装置メーカーにとって中国向けの大手顧客とみられ、同社が規制対象から外れたことが日本の半導体株の買いにつながった」と分析する。
その代表格が半導体装置大手KOKUSAI ELECTRICだ。同社の2024年3月期の有価証券報告書によると、CXMT向けの売り上げは261億円と売上高全体の15%ほどを占める。コクサイエレは3日、一時6%高と急伸した。
午後になると日経平均は上げ幅を拡大し、前週末からの上昇幅は1200円を超えた。
市場心理を反映したのがオプション市場だ。3日に盛んになっているのが株価上昇に備えた取引で、日経平均株価の2日終値(3万8513円)よりも高いコール(買う権利)が買われた。12月物を行使価格帯別にみると、権利行使価格が4万円以上のコールの価格は商いを伴って上げている。
東海東京インテリジェンス・ラボの鈴木誠一チーフエクイティマーケットアナリストは「想定外の株高に投資家は買い戻しを余儀なくされた」と指摘する。
ただ、株式市場は楽観一辺倒ではない。大和証券の柴田氏は「中国企業による規制を見越した投資前倒しの動きが一巡すれば、今後需要がピークアウトする懸念が残っている」と指摘する。
半導体株は株式市場のセンチメントを左右する。株高の持続力に注目が集まりそうだ。
(大久保希美)