三菱UFJフィナンシャル・グループはNISAの普及を受け、資産運用関連サービスを強化する
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は、投資一任サービスのロボットアドバイザー(ロボアド)最大手のウェルスナビを買収する。
近くTOB(株式公開買い付け)に踏み切り、全株式を取得して完全子会社にする方針だ。少額投資非課税制度(NISA)の普及を受け、資産運用関連サービスを強化する。
傘下の三菱UFJ銀行が年度内にもTOB後の株式の強制買い取り(スクイーズアウト)を含めた一連の手続きを完了させる計画だ。
三菱UFJは3月に15%強を出資し、協力関係を築いてきた。ウェルスナビの時価総額は28日終値時点で627億円。追加取得をめざす株式は同日の株価ベースで530億円ほどに相当し、三菱UFJはプレミアム(上乗せ幅)について最終調整している。
ウェルスナビは東証グロース市場で上場廃止となる見込みだ。経営陣を続投させる見通しで、現在の体制を維持して成長を図る。
ウェルスナビは投資家がネット上でいくつかの質問に答えるだけで最適な資産配分を自動的に提案し購入するサービスを手がける。
預かり資産は10月末時点で1兆3000億円規模に達し、競合するお金のデザイン(東京・千代田)などを大幅に上回る。
三菱UFJは完全子会社にすることでスマートフォンのアプリなどで最適な金融商品を提案するサービスの開発を加速させる。
両社は既に「マネー・アドバイザリー・プラットフォーム(MAP)」事業を26年度までに立ち上げる戦略を掲げている。
1000万人規模が利用する三菱UFJのアプリのデータや顧客の属性などをベースに資産運用のほか住宅ローンや保険も含めた家計の見直しを顧客ごとに提案する仕組みだ。ウェルスナビは完全子会社になることで自社のリソースを一段と振り向けやすくなる。
三菱UFJは資産運用サービス分野への投資を拡大させている。25年1月末には傘下のネット証券、auカブコム証券の株式をKDDIから取得して完全子会社にする。
ウェルスナビのロボアドサービスとauカブコムの株式取引を事実上一体で利用できる体制を整え、顧客基盤の拡大で先行するSBI証券や楽天証券に対抗する。
背景には24年に始まった新NISAによる競争の激化がある。金融庁によるとNISA口座数は6月末時点で2400万口座を突破し、半年で300万口座ほど増えている。
三菱UFJによるウェルスナビの買収は、大手金融機関とフィンテック企業の合従連衡の動きを象徴している。三井住友FG傘下の三井住友カードも家計簿アプリのマネーフォワードの個人向け事業を分離して設立する新会社への出資を決めた。
楽天グループなど「ポイント経済圏」の広がりもあり、個人向け金融の顧客拡大へ広告宣伝やサービスへの投資の拡大が不可欠だ。
フィンテック企業はサービスのデザインや開発力で強みを持ち、大手金融機関は「金利ある世界」への回帰などで手元資金が手厚くなっている。今後も出資などで連携を探る動きが広がりそうだ。
日経が先駆けて報じた最新のニュース(特報とイブニングスクープ)をまとめました。
日経記事2024.11.29より引用