13日の米株式市場は半導体大手ブロードコムの話題で持ちきりだった。四半期決算で収益の先行きに強気の見方を示したのをきっかけに株価が急伸。時価総額は初めて1兆ドル(約154兆円)を超えた。新スターの誕生に市場は沸き立った。
ブロードコムの株価は13日、前日比24.4%高の224.80ドルで終えた。米国の半導体企業の時価総額が1兆ドルの大台に乗せたのはエヌビディアに次いで2社目だ。人工知能(AI)向け半導体の販売が収益の拡大をけん引し、株価はさらに上値を追うとの期待が広がっている。
株価が大幅に上昇したきっかけは、ブロードコムが12日夕に発表した2024年8〜10月期の決算だ。売上高は前年同期比で51%増の140億5400万ドルと大幅な増収となった。
24年11月〜25年1月期の売上高は146億ドルになる見通しで、QUICK・ファクトセットが集計した市場予想(145億5000万ドル)を上回った。
好材料はこれだけではない。ホック・タン最高経営責任者(CEO)は決算説明会で、主要顧客3社に対するAI向け半導体の収益機会が27年10月期に600億〜900億ドルに膨らむとの予想を示した。
24年10月期は150億〜200億ドルとしており、数年間で大幅に拡大する。
キーバンク・キャピタル・マーケッツのアナリストによれば、ブロードコムが抱える主要顧客3社とはグーグルとメタプラットフォームズ、動画共有アプリTikTok(ティックトック)を運営する中国のバイトダンスとされる。
タンCEOは「今後3年間におけるAI向け半導体の事業チャンスは非常に大きい」とみている。
アナリストの間では目標株価の引き上げが相次いだ。トゥルイスト証券はAI向け半導体の伸びが「大企業としては驚異的だ」と指摘。目標株価を205ドルから245ドルに上方修正した。エバコアISIは250ドルと、従来の201ドルから改めた。
ネットメディアのジ・インフォメーションによれば、ブロードコムはアップルとAI向け半導体で提携している。アップルに対する売り上げの伸びが期待されたのも投資家を強気に傾けた要因といえる。
バーンスタインのアナリストはブロードコムのタンCEOについて13日付のリポートで「革ジャンが似合うかもしれない」と記した。
革ジャンはエヌビディアのジェンスン・ファンCEOが講演などの際に着用し、同氏のトレードマークとなっている。エヌビディアに次ぐAI向け半導体の担い手として存在感を強めることへの期待を示す賛辞だ。
もっとも、13日のダウ工業株30種平均は下落した。半導体の競争激化への懸念からエヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が下げたほか、その他のハイテク株への売りも目立った。
ブロードコム株を買う資金を手当てするために幅広い銘柄に売りが出たとの見方がある。ブロードコムが米株相場のけん引役になるには、新規資金の流入が活発化するのを待つ必要があるかもしれない。
(NQNニューヨーク=川上純平)
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