トランプ米政権の初閣議に出席した起業家のイーロン・マスク氏は「技術支援」と書かれたシャツを着て現れた=AP
【ワシントン=高見浩輔】
トランプ米大統領は26日に開いた初の閣僚会議で、米政府効率化省(DOGE)を率いるイーロン・マスク氏への支持を迫った。
政府職員のリストラを進める強引な手法に、一部の省庁は距離を置いている。米政権は同日、改めて各省庁に政府職員のリストラ命令を出した。
ホワイトハウスで開かれた閣議は、冒頭に記者が相次ぎ質問する形になった。
マスク氏は連邦議会の承認も受けていない「特別政府職員」という異例の立場で出席し、閣僚が並ぶ円卓の後ろに座った。
冒頭に発言を促されたマスク氏は「テック・サポート」と書かれたシャツを示し、自身の役割は技術支援にすぎないと理解を求めた。
「多くの非難や殺害予告を受けている」と述べつつ、歳出削減をしなければ国が破綻すると訴えた。「我々は間違いを犯すこともあるが、すぐに修正する」とも述べた。
「イーロンに不満を持っている人はいるか?もしいるならここから追い出すぞ」。トランプ氏がこう発言し、笑いが起きる場面もあった。
マスク氏は22日、SNSで政府職員らに「先週の業務成果を示さなければ辞職」と通告した。
米人事管理局(OPM)が成果報告を求めるメールを送ると、国防総省など複数の省庁は答える義務はないと反発した。230万〜240万人の職員のうち回答は半分程度にとどまっている。
マスクはメールについて「実際は脈拍のチェックだった」と述べ、反応があるかどうかを調べたかっただけだと弁解した。トランプ氏は割って入り、未回答の職員は「いなくなるかもしれない」と厳しい表情で付け加えた。
米政権は26日、改めて各省庁に職員の「大幅な削減」を求める通知を出した。ロイター通信などによると、現行のつなぎ予算が失効する前日の3月13日までにリストラ計画を提出するよう求める内容だ。
早期退職や解雇が決定した職員はすでに10万人を超えているが、積み増しを求めた。
トランプ氏は閣議でDOGEが年1兆ドルの歳出を削減する目的だと改めて強調した。選挙中の2兆ドルからは水準を下げたが、それでも実現は困難だ。
トランプ氏は年6.8兆ドルの歳出のうち4割程度を占める社会保障やメディケア(高齢者向け公的医療保険)を削らないと表明している。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
文字に起こされた印象とは違い実際には冗談交じりの発言だった、故に笑いが起きた。
どの組織でも大きくなれば無駄も出れば能力差も意欲差も出る、それをプロ経営者により合理化するという大統領のアイデア。
本人の手法はものの本を読めば当初からわかっていた話、それをいま批判する事は大統領の任命を批判する事になりかねない、故の冒頭の発言。
民間のウェブサイトによれば26日時点で95イニシアティブ、計546億ドルが削減され、納税者1人あたりでは364ドルにのぼるという。
ハーバード大学・ハリスポールによる最新の世論調査では米国民の8割以上が「歳出削減が必要」と考えており、DOGEは米国民の意向に沿って大ナタを振るっているといえる。
一方、急進的な歳出削減は混乱と景気への下押しにつながりかねない。
上記の削減額はGDPの0.2%、年率換算では0.7%相当に達し、それだけQ1あるいはQ2の米国の経済成長率が下押しされる恐れがある。
連邦政府職員の解雇や辞職はマクロ経済には大きな影響を与えないようだが、支出削減となれば話は別。警戒が必要だろう。
「イーロンに不満を持っている人…」の発言時、参加者の表情をカメラが捉えていましたが、笑いというより苦笑を浮かべる人や、硬い表情の閣僚も目立ちました。
行政改革の難しさを浮き彫りにした構図だと思いました。
そんな中でのマスク氏の実行力は評価すべきと思う一方、マイナス面をここまで無視して大丈夫なのか… 様々な政策の実行部隊の協力が得られにくくなったり、優秀な人材が省庁に集まらなくなるといったリスクもあるでしょう。
更に、副作用から改革できない様々な制度(例えば公的な住宅支援政策等)についても、短期的なコスト削減優先で性急な改革が実行された場合、その意図せざる結果が懸念されます。