SUMCOの千歳工場は新千歳空港から自動車で10分ほどの場所に立地する(10月、北海道千歳市)
シリコンウエハー大手のSUMCOは北海道千歳市の工場で、自動車や再生可能エネルギー発電設備に使うパワー半導体向けのウエハーを製造している。
カメラセンサー用半導体などに使うウエハーの生産では、半導体製造プロセスの前半部分にあたる加工まで施し高付加価値化している。
同工場は最先端半導体の量産を目指すラピダスが進出した北海道千歳市に立地する。千歳臨空工業団地で、前身の千歳シリコンが三菱マテリアルシリコンの子会社として1993年に操業を始めた。
三菱マテリアルシリコンとの合併などを経て、2005年に現在の名称になった。
工場が立地する工業団地は、新千歳空港まで自動車で10分ほどで行き来できる。製造した商品は空輸で顧客メーカーの工場や拠点まで運ぶ。
天候リスクが少なく、国内外に発着便数が多い新千歳に近いことは、出荷や材料調達の上で利点となっている。
工場は1階が設備用スペースで、気温変化の影響が比較的小さい2階をクリーンルームとした。
クリーンルーム内は上から下に空気が流れる構造で、ゴミなどの不純物が入りにくいつくりになっている。同工場の担当者は「ゴミがある確率を例えるならば、日本海に魚が約20匹しかいない水準だ」と説明する。
SUMCOは国内では九州や東北に、海外では台湾でインゴットの生成やウエハーのスライスをしている。千歳工場は、スライスされ研磨されたウエハーの加工を担う。
千歳工場の主力商品は「エピタキシャルウエハー」だ。研磨されたウエハーをエピタキシャル炉の中で約1200度まで加熱する。
炉内に気化した四塩化ケイ素や三塩化シランを流し、ウエハー表面にシリコン膜を成長させる。
エピタキシャルウエハーは研磨した後のウエハーに比べ不純物が少ない。同ウエハーは欠陥率が低く「より信頼性が求められる半導体素子に使われる」(SUMCOの担当者)という。
露光やイオン注入、熱拡散技術を利用した「埋め込み層付きエピタキシャルウエハー」も製造する。IC用の埋め込み層を形成し、その上にシリコン膜を成長させる。
顧客の設計に合わせて製造し「顧客の製造工程の簡素化や省略化につながるメリットがある」(同)。
埋め込み層付きの加工は「ウエハーメーカーの域を超えている」(同)という。半導体メーカーが行うプロセスの前半部分も担う形だ。こうした加工を施し高品質なウエハーを製造できる点は千歳工場の強みとなっている。
生産するウエハーは、スマートフォンに付いているカメラやデジタルカメラ、自動車に搭載される画像処理を担うセンサー向けの半導体に使用される。
また電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの自動車のスイッチや再生エネ発電設備の電力変換器に使われるパワー半導体にも採用されている。
今後もエピタキシャルウエハーや埋め込み層付き製品の生産に特化した事業に取り組む。プロセスの改善を進め、さらなる生産性の向上を目指している。
(塚田源)
日経記事2024.12.11より引用