2014年、米国史上最大規模の石炭灰流出で川面に現れた石炭灰の渦=バージニア州
(CNN)
石炭を燃焼させた後に残る大量の石炭灰は池や埋め立て地に廃棄されており、水路に流出したり、土壌を汚染させたりする恐れがある。
その一方で、こうした有害廃棄物は、クリーンエネルギーの推進に必要な希土類元素(レアアース)の宝庫となる可能性も秘めている。
テキサス大学が主導した最近の研究によると、科学者らは米国各地の発電所から発生した石炭灰を分析し、最大1100万トンのレアアースを含有していることを発見した。
これは米国国内の埋蔵量の8倍近い量で、金額にして約84億ドル(約1兆2600億円)に上る。
今回の発見は、新たな採掘の必要なしに米国内でレアアースを調達する大きなポテンシャルを秘めている――。
論文を執筆したテキサス大学ジャクソン地球科学大学院の研究教授、ブリジェット・スキャンロン氏はそう語る。
「まさに『ゴミを宝に』というスローガンの実例だ」「我々が試みているのは基本的に、サイクルを完結させて廃棄物を利用し、廃棄物の中にある資源を回収することだ」
こうしたいわゆるレアアースは、スカンジウムやネオジム、イットリウムといった地球のコアに存在する金属元素の集合体を指す。
レアアースは電気自動車(EV)や太陽光パネル、風力タービンを含むクリーンテクノロジーにおいて重要な役割を果たす。
その名前とは裏腹に、レアアースは自然界では珍しくない。ただ、周囲の鉱石から抽出・分離するのは難しく、需要に供給が追いついていない状況だ。
イリノイ州スプリングフィールドの火力発電所近くにある石炭灰廃棄用の池/Register
世界が地球温暖化を招く化石燃料からの脱却を進める中、今後はさらに多くのレアアースが必要になる見通し。
国際エネルギー機関(IEA)によると、レアアースの需要は2040年までに最大で現在の7倍に跳ね上がるとみられている。
ただ、米国の供給量は依然として少なく、国内にある大規模なレアアース鉱山はカリフォルニア州のマウンテンパスのみだ。
米国は現在レアアースの95%以上を輸入しているが、その大部分は中国から来ており、サプライチェーン(供給網)や安全保障上の問題を突きつけている。
スキャンロン氏はCNNの取材に、「我々は状況を改善する必要がある」と説明。このため、従来とは異なるレアアースの供給源に目を向ける動きが出ており、「こうした供給源の一つが石炭や石炭副産物だ」と指摘した。
地下の鉱床から直接採掘する場合に比べ、石炭灰はレアアースの濃度が比較的低い。長所は入手のしやすさで、米国では毎年約7000万トンの石炭灰が発生している。
CNN記事2024.12.07より引用