次期FBI長官に指名されたカシュ・パテル氏=ロイター
【ワシントン=坂口幸裕】
トランプ次期米大統領は11月30日、次期米連邦捜査局(FBI)長官にカシュ・パテル氏を指名すると発表した。
第1次政権で高官として支え、起訴されたトランプ氏の捜査にあたったFBIなどを「ディープステート(闇の政府)」と批判する陰謀論を唱えてきた人物を充てる。
トランプ氏は自身のSNSでパテル氏について「優秀な弁護士、捜査官で、汚職を暴き、米国民を守ることにキャリアを費やしてきた米国第一の戦士だ」と指摘。
「FBIに忠実さや勇敢さ、誠実さを取り戻すために働くだろう」と記した。
FBI長官人事には議会上院の承認が必要になる。米紙ニューヨーク・タイムズは「承認には難航が予想される」と報じた。
パテル氏は司法省のテロ担当検察官などを歴任後、2018年から連邦議会下院の情報特別委員会幹部だった共和党議員の補佐官を務めた。
米CNNによると、トランプ氏のロシア疑惑捜査などを巡る対応でFBIの捜査を批判した議員の側近として注目を集めた。
トランプ氏はFBIに不信感を抱く。1期目のロシア疑惑などを巡り「不当な捜査」があったと主張する。自身を擁護するパテル氏を1次政権で国防総省の首席補佐官や国家安全保障会議(NSC)のテロ対策上級部長といった要職に充てた。
トランプ氏や支持者は、極左などが政治的な立場で業務に当たる連邦政府をディープステートと呼び「ならず者」を解雇すべきだと訴える。トランプ氏の起訴にかかわった司法省やFBIが標的になるとの見方が広がる。
パテル氏はトランプ氏が敗れた20年大統領選が「盗まれた」という主張に同調し、ディープステートの連邦職員がトランプ氏を失脚させようと狙ったとの見方を拡散させた。
米ブルームバーグ通信や米NBCテレビよると、パテル氏は自著「Government Gangsters」で「FBI幹部が政治的駆け引きに走るのを抑えるため」同本部を首都ワシントンから移転させるべきだと主張する。FBIの権限の大幅縮小も求める。
FBIを含む法執行機関や情報機関を念頭に「反民主主義的な」公務員を米国民のために働く「愛国者」と入れ替えるべきだと提起。現在の政治情勢について「腐敗した支配階級と国民との戦い」と断じる。
CNNテレビによると、FBI長官は大統領の政敵を調査するなど強大な権限を持ち、機密情報の公開を決定したり連邦職員を粛正したりできる立場にある。
現FBI長官のクリストファー・レイ氏は1次政権だった17年に就いた。任期は最大10年で、トランプ氏は大統領在任中の機密文書を不適切に所持した疑いで自身の邸宅を捜索した現体制のFBIを敵視し、レイ氏を解任する意向を示してきた。
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予想されていましたが、なかなかの人事。既に司法省の任命承認から辞退したゲーツとともに、トランプにとっては自分の分身のような人物の配置。
ロシア疑惑からトランプを守った功績をトランプが評価。「国民にとっての脅威 」と呼ぶFBIの上層部を「ディープステート」として一掃するのがパテルの持論。
ジャーナリストを調査し、場合によっては訴追するとも宣言。FBI長官は政権が変わっても辞めないのが通例で、レイ現長官は2027年まで10年の任期があります。
ただ、トランプにとっては自分を訴追した「敵」なので追い出すことを公言していました。
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