古民家を見学するのは、その地域の暮らし方を知るチャンス。
先日も日本最古の古民家住居を見学しましたが、
温暖地域では古民家的な性能要件でもまだ「住む」ことは可能だと思われる。
冬をなんとか「耐えれば」暮らせるのかなぁと思えるけれど、
しかし寒冷地域の方では、さすがにそのままのかたちでは
継続して住み続けるというのはきびしいと思われ、
青森県では、江戸期の住宅というのはあんまり見学機会が少ない。
そういうなか、先日の青森県行脚時に六戸「道の駅」に建てられていたのが、
この「苫米地家住宅」であります。
WEBでの紹介には、以下のような記述。
〜六戸町において、奥入瀬川流域に現存する家屋のうちでは
最古と思われるのが、柳街の苫米地勲氏の住宅である。
苫米地家の由緒やこの家屋の建築年代を示す史料などは一切残されていないが、
上北地方の民家の建築手法の進展状況から比較してみると
おそらく江戸時代後半には建てられたものと推測される。(六戸町史より)
旧苫米地家住宅には、「しきだい(式台)」と呼ばれる施設が設けられており、
当時は武士階級の住宅に限られた出入口(建物正面左側)であったとされ、
身分や家の格式を表現する施設であったとみられる。 」とあります。
当初は六戸町大字柳町字柳町にありましたが平成4年に
六戸町指定有形文化財に指定され、平成17年に現在に移築保存されています。
〜という建物です。
六戸は次世代基準の地域区分で本州地域ながら北海道同等地域に近く、
積雪・寒冷とも列島内でも最高レベルの地域。
茅葺きの屋根の断熱は重厚ですが、外観形状はきわめてシンプルな寄棟。
まるで現代の造形感覚とも似通ったプロポーションでうっとりさせられる。
これは雪の屋根への堆積を考えたときに、もっとも合理的な力学で
受け止めるかたちであるように思われてきます。
また、屋根以外の外皮表面積がもっとも小さくなっているので、
エネルギーの貴重な時代には、もっとも「省エネ」志向の選択だと思える。
屋根が重厚な茅葺きになっているので、積雪で覆われたときに
外壁部分は屋根と外周の「堆積層」が繋がって一種の「かまくら」になる。
はるかな後世ですが、わが家が北海道に入植した当時、大正初年の
家では、かえって雪によって「保温」されていたと聞かされていますが、
どうしても「籠もって」しまう精神性への影響の方が、
積雪地では「寒さ」よりも危惧される「問題」であったのかも知れません。
そういう北国人の性向が、わたし自身の少年期にも、
躁鬱的心理として、自覚的なものがあります。
六戸も年間堆雪データを見ると、100cm程度の垂直積雪深なので、
そのような家と暮らしののありさまが想像されてきます。
そして、暖房と調理が一体化していて、
家庭内での火力の集中が図られていることが見て取れました。
これは他の地域の古民家ではあまりみられない特徴。
北国人にとって、エネルギー「爆炊き」への思いは
やむを得ず耐えなければならない冬の躁鬱的心情解脱への祈り要素もあると
雪に閉ざされた日々の暮らしの思い、様子がつたわってくる。
こうした内部空間を見ていて、呼び覚まされるものがあります。
想像力を刺激される、貴重な寒冷地古民家だと思いました。
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