イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

おーまいそぉー

2009-07-25 00:05:42 | 夜ドラマ

今季TVドラマではじけるもうひとりの“つばさ”=『任侠ヘルパー』翼彦一(ひこいち、草彅剛さん)もがんばっていますね。23日放送の第3話、被虐待の兆候のある節子お婆ちゃん(森康子さん)の押し入れにひそんだりこ(黒木メイサさん)が、孫(忍成修吾さん)の虐待現場を押さえるも、逆襲されボコられそうになったとき、バーン唐紙開けて現われた場面はヒーローみたいにカッコよかった。

それも、この場面まで、節子お婆ちゃんを気にかけるりこに、彦一は表向き同調しようとはせず、「メンドくせぇな」「手柄たてようッてんなら慎重にやれっつってんだよ」とむしろブレーキかける方向だったから一層カッコいい。

そもそもこのドラマ、任侠諸君が高齢者介護に前向き本気に取り組む場合、その動機はまるっと“幹部への登用=任侠としての成り上がりサバイバル”であって、間違っても社会貢献意識や高齢者への人間愛なんかでは(出発点としては)ない…という善悪反転と言うか、“善⇔悪間に、期せずしてバイパス開通”の図式があるから気持ちがいいんです。「ろくでもないチンピラどもが、介護を通じて心優しい真人間に更生していく」式のお話だったらクサくてカユくて、到底視聴に耐えなかったはず。

高志が祖母を虐待していただけではなく、実はヤミで覚せい剤取引もやっていたことが、りこ率いる四方木組の若頭たちに知れ、東京湾に沈められそうになったとき、女組長たるりこが乗り出し「そいつは自首させろ」と命じる場面も震えがくるほどカッコよかったですね。「極道には極道の(極道の領分を侵犯したシロウトを制裁する)やり方がある、サツの手に渡すなんて、そんな腑抜けた真似をしたら、(ただでさえ年若い女が組長ということで舐められてるのに)うちの組、ヨソの組に示しつかないすよ」と見下したように言う若頭(田中哲司さん)に「メンツなんざぁあたしが幹部になって取り返してやるよ!」と啖呵切ったときは、月河、同性だけどりこ抱きしめたくなりました。

メイサさん、硬質な面差しを無表情に閉じて、肩と言わず腰と言わず胸と言わず“ゆさゆさ”させた大股極道歩きも、“タイヨウ”職員の黄色シャツユニでもダークスーツでもとにかくカッコいいんだな。男性視聴者なら別角度からもっとたまらないんじゃないでしょうか。“ゆさゆさ”ですもん。あの黄シャツ欲しい!って声も視聴者から上がってたりして。

介護でポイント稼いで幹部へ…のモティベーションから、いつしか節子お婆ちゃんを肉親のように本気で守ってあげたい気持ちになるりこに対し、終始表向きクールに、ウザそうにあっちゃ向いてホイだった彦一が、決してまるごと知らん振りなわけではなく、雀荘入り浸りの高志をひそかにウォッチしていたりする描写も実にいいですね。それも、りこのお婆ちゃんへの思いにほだされたとか、任侠の世界では致命的な“女”というハンディキャップを努力ではね返そうとする負けん気を男として愛しく思うなど、いままで草彅さんが役柄上得意にしてきた“ヒューマン優しさ”の範疇に包含させるのではなく、「研修メンバー欠けたら、連帯責任だろうが」という身もフタもないエクスキューズを与えて甘さを殺しました。

もうね、ここまで、これでもか!これでもか!と「愛じゃないよ、優しさじゃないよ、いい人じゃないよ」とコワモテ作って念を押しまくるドラマ、愛さずにはいられないじゃありませんか。

ゲストキャラロクデモ孫役・忍成修吾さんの“世が世なら気のいいお祖母ちゃん子だったかも”と思わせる佇まいもよかった。節子さんと高志両親は折り合いが悪く、高志はその両親から勘当されて、金に困って節子お祖母ちゃんの家に転がり込んでいた身。転がり込むお祖母ちゃんも居なければ、薬物ヤミ売買以前に、それこそ彦一たちのように他人の高齢者から振り込め詐欺で金を巻き上げる立場になっていたかもしれず、虐待現場からタイヨウに連れ帰った彦一が高志の打ち明け話にいちだんと複雑な表情だったのも頷けます。

同年代イケメン俳優さんたちの中でも“キレたら怖い”“普段から微量いけしゃあしゃあ”な面構え№1の忍成さんを起用したのがヒットでしょうね。もう何年も前だけど、LIFEカードCMでのオダギリジョーさんの生意気後輩役がよかったですよね。

“決まった範囲内でしか世話してくれないヘルパーさんより、たとえ虐待されてもずっとそばにいて一緒に寝起きしてくれる家族のほうが頼りになる”というお婆ちゃんの言葉、せっかく“友達”として心を開いてくれかけたのに認知症が進行して「アンタのせいで高志がいなくなった」と突き飛ばされ、「結局家族じゃないと助けられないのか」とヘルパーの限界を痛感するりこ、そして彦一。

どんなに動機は純粋でも“制度とカネ”に縛られるということが、介護提供者として働く側からは限界(そして逃げ場)であり、介護受給者からは“だから全幅の信頼はおけない、リスペクトもできない”壁になる。これは任侠くんをからませずとも、リアルに介護現場の悩みでしょう。

本スジ以外にも、学校でいじめられ友達ができないことをシングルキャリアマザーの母(夏川結衣さん)に言えない涼太(絶賛こども店長・加藤清史郎さん)、その母=タイヨウ経営顧問の介護サービス会社辣腕社長晶(あきら)も頭痛や物忘れに悩まされて重病の気配があるし、「アニキのママってどんな人?」と喧嘩指南してやり中の舎弟涼太に尋ねられて「…忘れたな」と答えられない彦一など、次話以降掘り下げていけそうな伏線が縦横に張りめぐらされ目が離せません。

欲を言えば、いま少し“お気楽お仕事コメディ”要素が息抜きとして欲しいかも。放送開始当初、そっち方向主体のドラマと思って視聴始めた向きには“逆拍子抜け”ではないでしょうか。任侠チームの中で見た目いちばんわかりやすくヤクザらしいコワモテの二本橋(宇梶剛士さん)が、人間としてはいちばん苦労人で腰が低くてサービス業向き、という可笑しさは配置してあるものの、夜2200台の娯楽時間帯にしては、ちょっと全体にシビア寄り過ぎる気もします。月河個人的にはこの“逆肩透かし感”大好きだけど、より多くの人が視聴してくれるかどうかやや心配。

「やり出したら幹部志願より、こっちのほうが性に合って、稼業替えを真剣に考え出した」「でも子分たちの生活どうしよう」みたいなヤツが1人ぐらいいてもいいんじゃないかな。これから出るのかな。インテリ打算担当六車(夕輝壽太さん)なんか、逆に、行きそうじゃないか。“早く出世できる”が狙いなら、日本一人材不足のこの業界にしくはないぞ。

本家(なのか?)NHK『つばさ』はもっと大変。城之内エンタープライズ社長(冨士眞奈美さん)、オマエやっぱりサンデートイズだっただろう!つばさ(多部未華子さん)、ラジオぽてとを馘首されたら、速攻東京は月島に行くべし。女社長の息子がもんじゃ焼き屋をやってるから(ないない)。

…冗談はともかく翔太(小柳友さん)から、「頑張れとかあきらめるなとか、俺のために仕事をやめるとか、簡単に言うな」「つばさに励まされると重い、しばらく1人にしてくれ」発言は、出るべくして出た気が。優しく親身に構ってあげれば、誰でも、いつでも、どんな状況でも元気が出るというものではないのです。ハタチのおかんも、所詮はハタチ。一枚壁を破らないとね。

コメント
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