昨年の今頃からのこの1年間で、TV視聴に関して大きく変わったことと言えば、“NHK朝ドラのチェック”が準レギュ化したことですね。
もちろん高齢家族のお相伴です。『瞳』で、電器店の須賀健太くんが引っ越し転校することになり、里子の友梨亜ちゃん(森迫永依さん)が瞳(榮倉奈々さん)に励まされて手作りのケーキを…という辺りから観はじめたのかな。ダンサー志願・瞳が、微妙に北海道の「~っしょ」言葉を残しながら東京は月島で洋品店を営むじいちゃんの家で里親見習いをするに至った経緯や、EXILEメンバーのMAKIDAIさん扮するカリスマダンサーとお近づきになったきっかけなどは、いまだ未知です。
公式サイトを見つけて遡ってみればわかるのかもしれませんが、そんなに必死で調べて隅々踏み固めなきゃ前に進めないほどの緊密なドラマでもない。朝ドラはそういうゆるさが魅力なんだと思います。
『だんだん』も、いま放送中『つばさ』も、それくらいの距離感で、ちょっと間があいては追いつき、また疎遠になってはヨリ戻しで今日に至っています。
個人的には『つばさ』がいちばん高体温ですね。高齢組に促されなくても、土曜の午前中や平日夜のBS‐2など自主的にチャンネル合わせますからね。ホームコメディや、しんみりほのぼの家族もの的なドラマは滅法苦手なんだけど、これは家族もご近所、職場の赤の他人たちをも含めた、ヒロインをめぐる“ヘンテコリンな人々図鑑”にもなってるところが魅力です。
それはともかくNHK朝ドラと言えば、劇中、家族が揃う卓袱台茶の間セットと並んで、玄関前をメインに向こう三軒両隣くらいまでの“ご近所街角セット”もつきもの。『だんだん』では松江の田島家は縁側ぐらいしか記憶がないけど、祇園の“花の家”前はしっかりセットしていました。
これに約1年慣れたから、放送中の昼帯『夏の秘密』の下町セットの苦笑ものな箱庭作為感にも、さほど苦笑せず、微苦笑程度ですんなり騙されてあげられるということがあります。
常ならば“富豪セレブ邸宅”“会社・事務所”“庶民の日本家屋”“独り者のマンション・アパート”のほかは“登場人物全員行きつけ(プラス、それ以外の客がほどんど皆無)の喫茶店・スナック・レストランetc.”ぐらいしかセットが登場せず、それぞれ3LDKか2DKか1 K程度の空間内で物語が終始するこの枠の昼帯。今作は和風喫茶を中心に、町工場、理髪店、ラーメン屋、クリーニング店などを含む、ちょっとした中通りの往来ひとつをまるまる作りました。
全60話ほどの中で数えるほどしかない屋外ロケシーン以外は、誰と誰の、何のどんなニュアンスのシーンでも、ドアから一歩外に出ると玄関先で空間が途絶えるのが当たり前だった世界で、今作に限って、手間暇かけて“街角”を作ったということは、この街角に物語の鍵があるのだろうなと想像がつきます。
思えば、“今日の続きが明日観られる”という平日帯ドラマ、13:00~のTBS系の2枠がなくなってしまったので、このフジテレビ系東海テレビ制作枠のほかは、テレビ東京のLドラ枠(『ママはニューハーフ』放送中)と、NHK朝ドラしか現存していないんですね。
しかも、NHK朝ドラ、『瞳』以降の3本限定で言えば、1話完結ならぬ“1週間6話完結”をほぼ繰り返し、1週でひとつの問題を解決しては最終週への階段を上って行くような構成になっていて、いきなり古い例ですが83年の『おしん』のような、次から次へとヒロインに出来事がふりかかって有為転変する、本当の意味での連続ドラマとは、かなり本質的なところで異なっています。
言わば“切れてるチーズ”みたいな、食べやすくこなれのいい仕立てになりました。
月河のように、昼帯を全話数中99パーセント留守録で、夜や週末に見てるような視聴者はウルトラレアで、これだけTV録画機器が普及した時代でも、依然、全視聴者中に占める“在宅でリアルタイムで見ている”率がいちばん高いドラマ枠がこの昼帯だと思います(NHK朝のそれはBSも含めると1話当たり4回の保険的再放送枠があり特殊)。
リアルタイム視聴で脱落せず追尾し続けるのは、“暇なとき回し”ができる録画視聴の何倍もの“ドラマ体力”“フィクション耐性・順応性”が必要なはず。そういう視聴者の比率が高い枠で、あえて塊りのエダムチーズみたいな、重たく粘っこいガチの連続ものを作り続けるこの枠のスタッフは逞しいし、勇気があると思う。不況に沈むTV界でこの姿勢は貴重です。
良くも悪しくも在京キー局のニッチを行くテレ東のLドラは、週完結の扱い易さと、連続ものの濃さとのちょうど中間をとった感じでしょうか。“濃くしても軽い”のが身上かな。『ママはニューハーフ』では原千晶さんがいいですね。金子昇さんは役柄上、減量と間断ない剃毛疲れ?でいまいち芝居がおとなしいように見えます。もう少しギラギラ暑くるしいほうが金子さんは好きだけどな。
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