『天国の恋』は第2週(11月4日~)初頭であきらめました。前作『潔子爛漫』が小粒ながらしっとりといい出来だったし、今作は昼帯を知り尽くした中島丈博さん、昨年の『赤い糸の女』以来、満を持しての新作オリジナル脚本とあって、放送前からかなり期待していたのですけれどね。
とにかく絵柄が汚い。汚すぎる。
汚いと言って悪ければ殺伐とし過ぎる。当方、ドラマは月~土のNHK朝ドラと日曜のスーパーヒーロータイム以外はまず99パーセント、リアルタイム向き合い視聴は無理ですから録画セットしておいて、暇を見てCMカット編集してから観るわけですが、消音で早送り、止まって戻って消去開始指定、消去終了指定、あっ送り過ぎたまたちょっと戻って・・と編集作業していくと、映る絵柄があまりに殺伐なため、早く編集終えて音声付きで視聴したい!という意欲がどんどん後退するわけです。
4~5話分続けて、絵だけ進めて止めて戻って止めての作業をしている途中で、「あっ!いまの場面すぐ音声聞いてみたい!」と編集完了を待ちきれなくなることが一度もないというのは、ほかでもない、絵自体に魅力が無いからだと思います。ストーリーや台詞の責任ではありません。消音でやってての話ですから。
テーマ(アラフォー主婦が目覚めた本能の恋と修羅)からいってキャストが全般的に中高年シフトになるのは仕方がありませんが、若いほう担当の、ヒロインの恋愛相手男子やヒロイン高校生時代版とその友人たちも含めて、どうにもわざわざ“より醜悪に見える”撮り方見せ方を選んでいるとしか思えない。ヒロイン斎(いつき)役の床嶋佳子さんは言わずと知れた安定の演技派だしお顔立ちもそれは端整な人なのに、肌の色ムラや凸凹がいやでも目につく接写距離がやたら多いのです。斎の高校生時代を演じる小宮有紗さんも、特命戦隊イエローバスター=ヨーコの頃はあんなに可愛かったのに何で?いつからこんなに?と思うくらいくすんだ表情ばかり。少女期斎の、くすまざるを得ないドラマ上の境遇を考慮するにしてもです。
斎(いつき)高校生篇は弟役や同性異性の友人たち役も、小宮さんと同系の、古風め寄りの端整な子を選んでキャスティングしているので、ますます“見せ方”のイビツさが目立ちます。“死んでも綺麗に撮らないぞ”ぐらいの覚悟すら感じるほど。
男性中年俳優さんたちの顔面アップに至ってはもう言わずもがな。制作意図はたぶんゴヤの風刺版画集『ロス・ディスパラテス(妄)』の実写版的な世界醸成を狙っているのでしょうが、そういうひねったダークさ、ねじれた哄笑、いま見たい世界ではないんですよね。
要するに当方の視聴バイオリズムと噛み合っていないだけかもしれない。中島丈博さん作のこの枠のドラマも、大正時代の実在の伯爵夫人心中未遂事件を核に翻案した2006年『偽りの花園』辺りまでは、洒落にならない人の業(ごう)のせめぎ合うブラックさをうまいこと夢々しさの衣にくるんでいたのですけれどね。たぶん翌年の『麗わしき鬼』を境に、ダークなエグみ剥き出し直球でくるようになってきた。昨年の『赤い糸の女』も2ヶ月9週だったから勢いで特につかえることもなく完走できましたが、あと1ヶ月長かったら自家中毒を起こしていたかもしれません。
個人的なタイミング、地合いの不都合さだと思えば、中島さん作品にもこの枠にもそう深く失望はしませんが。何と言っても今年2013年に入ってから、完走した連続ドラマは『あまちゃん』と『夫婦善哉』『実験刑事トトリ2』、『雲霧仁左衛門』のみという状況です。先行放送、再放送で拾う機会が盤石にある『八重の桜』さえザイルを手放しました。
『梅ちゃん先生』とか『おひさま』のような、ふわっと甘口のドラマに耳まで浸かった直後なら、中島さん印の、あけすけかつ沈殿物の多いエグみも快適だったでしょうし、ゴヤ風の汚しの入った絵柄にも食いついたかもしれません。何事もご縁とタイミング。次作以降に期待しましょう。
・・そうは言ってもお昼~午後のTV編成は激変の予感。贔屓のこのドラマ枠も来年からはどうなるのでしょうね。いっそ過去作の再放送枠になるなら大歓迎ですが。
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