イ・ファヨン出所早過ぎ。
2月26日(月)に絶賛最終回Dlife『カッコウの巣』、まー全74話(本国本放送では102話)の長丁場ともなると終盤は脚本も演出も息切れして細部に目が行き届かなくなるのはつねですが、ファヨン逮捕前ほとんどお腹の目立たなかったジンスクさんの赤ちゃんが、ヒジャ女史(ジンスクの義姉でビョングク母)におんぶされて元気に泣いてたし、このドラマのある意味核心人物=ジヌくんは幼稚園児だったのが贔屓目に見ても小2ぐらいにしかなっていないし、ファヨン、一年半ぐらいで仮出所したのかな。
ガチ殺されかけたサンドゥが被害届を出さなければ、殺人未遂容疑は無し、横領等の経済犯罪と脅迫程度で裁かれたのだとすれば、そんなに長い服役でもなかったのかもしれない。そもそもあの国の刑法は、司法取引等もあり州毎にかなり違うUSAのそれ以上にさっぱりわからないところがあります。
それにしても乗っ取った会社の代表時代と同じような服装ヘアメイクとハイヒールでヨニさんと再会ってのはちょっと。ムショ帰りらしく髪にパーマ気がなくなってるとか、肌が青白くなってるとかアイラインが細めになってるとかぐらいは演出してもよかったのではないかと思うんですが。このへんは女優さんが「ラストシーンぐらい美しく終わりたい」と主張したかな。ジンスクが痩せぎすのまま妊娠期間が飛んだのも同じ理由かも。人物、特に女性人物ごとに衣装に特徴があって、好みは分かれるでしょうがビジュアル面では「これがかの国のセレブ女性スタイルか」「かの国のアパレル業界人か」「かの国のDQNファッションか」等と退屈せず楽しめました。
前の記事で「ファヨンが結局いちばんやりたいことは何なのかわからなくなった」と書きましたが、進退きわまったファヨンが最後のソラ(=やはり年の離れた妹ではなく、かつてサンドゥとの間にもうけて養子に出した実の娘でした)への電話で「あの女(=ヨニ)に(兄ドンヒョンの)復讐したかっただけ」と、嘘はなさげに吐露していたし、財閥御曹司夫人の座とか、跡取りの子供を産めば捨てられないだろうとかより、ファヨンにとっては、優秀な医学生で一家の希望の星だったドンヒョン兄さんがある意味(ヨニ同様に)“初恋”の思い人で、横合いから出てきた(他に何でも持っている社長令嬢の)ヨニに奪われた・・という感覚のまま代理母→ビョングク誘惑→会社乗っ取りと突き進んだということなのでしょう。“母性”をモチーフに、あざとめに作った復讐系でしたが根っこは意外とシンプルな、女の嫉妬でした。
恨みつらみずく、打算ずくでねじくれ曲がった関係と対照させるように、本能のおもむくまま異性を好きになり親密になって、進展すれば子を授かる・・という“自然”の関係がさりげなく称揚されているのも、サブストーリーとしてぜんぶ当たったとは言えないけど好感が持てました。
世間知らずだったヨニが若気の至りで駆け落ち同棲したドンヒョンとの生活は、結果的にドンヒョンのバイク事故即死、ヨニの身体にも大きなダメージを残してその後の悲劇の始まりになってしまいましたが、最後までヨニはドンヒョンへの思いを失わず、後悔もせず、彼の骨壺と遺影に語りかけながら自分を取り戻す場面もあり、最終回のラストはあんなにやり合ったファヨンと初めて一緒に花を手向け、納骨堂の前庭で遊ぶジヌを抱きしめて終わることができました。
ヨニの父チョルは自分の会社に財閥のバックを得るためヨニをドンヒョンとの愛の巣から力ずくで連れ帰り、ヨニが望まなかった御曹司ビョングクにヨニ名でラブレターを偽筆するまでして政略結婚させ、ビョングク母で財閥会長のヒジャ女史は何としても男子の跡取りを得るべく、不妊のヨニを蔑ろにして代理母を使いジヌをもうけるという、きわめて不自然で人間の生理や心理や摂理を無視した策動で傷口をひろげましたが、そんな中でもファヨン叔父のチャンシクとビョングク叔母のジンスクは、両家族がめちゃくちゃ対立して罵り合っているにもかかわらずいつの間にか職場恋愛、授かり婚。
そのジンスクを熱烈に追い回していた常連客のギソプ教授は、チャンシクとのバトルで一歩退いて、同じレストランマネージャーのゴンヒに惚れられいつの間にかカフェ経営に転身、なかなか指輪でプロポーズできませんでしたが最終回では結婚も決まっていました。どちらも、状況を考えるとヒョウタンからコマみたいなものでお世辞にもお似合いのカップルには見えないのですが、縁は異なもの味なもの。男と女が惹かれ合って結婚に至るなんてのは、そもそもこんなノリと勢いでいいんじゃないかという、物語世界の一縷の救済ともなりました。
ヨニの大学の後輩で、生前のドンヒョンとも交流がありファヨンの報復感情を心配していたユ・ソンビン室長は「ヨニ先輩は初恋の人、だから幸せになってほしい」「それ以外を望んでいない」を貫き、ヨニ妹ジュヒの、姉への対抗心も混じった好意をさらりと受け流しながら、最終回では警察とともに駆けつけてファヨンの入水を食い止める大活躍。
チョルの会社で駆け出し時代に法務顧問を務め、恩があるというミョンウン弁護士は、最初から「あなたが美人だから」とあっけらかんとヨニに接近、ジヌの親権を取り戻しファヨンの会社乗っ取りのからくりを暴くべく法廷で強い味方になってくれた上で「あなたに必要とされたいと頑張ってきたが、考え違いだった。僕があなたを必要としていた」と告白しますが、「私はいま母親であって、女ではない」とやんわり退けられると、ストーカー化したり逆ギレしたりもせず、「待ちましょう、でもずっとは困る」と距離を置いてくれました。皆が皆、好き勝手に惚れたり憎んだりの一方的肉弾戦ぶちかましているわけではない、こういう、ちゃんと理性を介在させた好意の持ち方だって可能なんだという形を示した。
強引な設定で無理無体な展開、何かっつったら怒声、号泣、殴り合いド突き合いの典型的な韓国製マクチャンながら、それなりにバランスはとれていた。前回も書いた通りジヌの親権訴訟決着後はあからさまな尺伸ばしが目立ちましたが、視聴中途放棄しようとは不思議に一度も思いませんでした。
ただ、月河と違って「子供が好きで好きでたまらず、幼い子が泣いたり笑ったりしているのを見ただけでキュンとなる」タイプの感性の人はこのドラマ視聴しないほうがいいです。とにかく一貫して“子供をダシにして大人同士がさや当て”という話ですから。ジヌとソラ役の子役さんは演技頑張っていますが、頑張られるほど胸が痛んで正視に耐えないという向きも多いでしょう。
普通に素(す)で爆笑できるところもいっぱいありましたよ。ジンスクさんのレストラン(=財閥の外食産業部門本店)では従業員を「マイケル」とか「ミランダ」とか英語名の源氏名で呼んでたりする。キャバクラか。ロールプレイ風俗か。
代理母のギャラ受け取って復讐を誓い姿を消したファヨンが、外資食品企業のアジア地区渉外責任者として財閥家の前に再び現れたときの変名が“グレース・リー”って。今作に限らず韓ドラは“心機一転、別の身分で再登場”の際に、まったくそれっぽい容貌になってないのに無駄に英語名名乗るというお約束があるみたい。
そう言えば昭和40年代の日本製なんちゃって国際スパイドラマ『キイハンター』等でも、コテコテの日本人俳優さんがよくジョニーとかジョージとかジェームスとかの役名で出て来たなあ。日本で言えばあのへんの時代のセンスに、いま韓国ドラマ制作現場は居るのかもしれません。
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