★ 『座右の銘』など今まで、あまり聞かれたこともなかったのだが、
昨年、カワサキのアーカイブスのインタビューの最後に、
『後輩に伝えたい言葉』と共に
『座右の銘は?』と聞かれたのである。
後輩に伝えたい言葉は、
Kawasaki Let the Good Times roll! と答えたのだが、
座右の銘は、一瞬、考えて、
『人の不幸を喜ぶ者は自らの無力を恥じよ』 と答えたのである。
こんな感じで『アーカイブス』の中に表示されている。
★ はじめてお聞きになる方が多いと思うが、
これは吉田茂内閣の副総理を務めた『緒方竹虎の言葉』なのである。
1888年(明治21年)1月30日 - 1956年(昭和31年)1月28日)
1956年(昭和31年)、私が大学を卒業する前に亡くなっているのだが、
大学2回生の頃、朝日新聞の記事の中で、
『この言葉』と出会って、
非常に強く印象に残ったのを覚えている。
緒方竹虎はなかなかの有名人なのだが、
その時一度出会っただけで、
このこと以外は何も存じ上げている訳ではない。
当時は、野球部にいて、野球に熱中していた時期で、
『人生で生かす』というよりも、
『競争相手や相手チームの不幸』を喜んだりすることが現実に多かったので、
相手のミスなどには関係なく『本来の実力向上』を目指すべきだなと思ったのである。
最初は、そんなことから私の中に入ってきた言葉なのだが、
社会人になってからいろんな機会に、『この言葉を思い出す』ことが結構多くて、
この言葉を思いだしながら、自らの『実力向上』に務めたのである。
二輪業界の厳しい競争の中でも、レースでも、
『他人の不幸を喜ぶ』ような状況に置かれることが現実に多かったのだが、
そのたびに『この言葉』を想いだしたし、
自らを叱咤するようなことが続いたのである。
そういう意味では、結構ちゃんと身について
『他人の不幸を喜ぶ』ようなことはなく、
人生を過ごすことが出来たなと思っている。
★ ところで『座右の銘』を調べてみると、このように書かれている。
「座右の銘」とは、自分の心を律するための「格言」のことです。
「座右の銘」に決まりはなくて、どんな言葉でも「座右の銘」にすることができます
また、座右の銘は1つと決まっているわけではなく、1人で2つ、3つと複数持っている人も多くいます。
昔の皇帝など位の高い人は、「銘」に自分が尊敬する過去の人の言葉を記し、自分の右側に置いていたと言われています。皇帝にとっての「右側」というのは、自分がもっとも信頼する補佐役などを座らせる場所です。
このことから「自分にとって重要な右側に置くほど、大切な言葉」という意味で
「座右の銘」と言われるようになったとされています。
ここに書かれているように、『座右の銘』は複数持ってもいいということだが、
そういう意味では、最も具体的にずっと心がけてきたことは、
川崎航空機工業の社是と執務態度で、
こちらの方が実際には私の『座右の銘』であったかも知れない。
社是 『正直・誠実・勤勉』
執務態度 『信頼・互譲・協力』
これは極く最近、ずっとお世話になっている村島邦彦さんが、
『焼酎を贈るけど、何か6文字ぐらいの言葉を』と仰るので
『信頼・互譲・協力』と申し上げたら、このように書いて贈って頂いたのである。
★この『正直・誠実・勤勉』、『信頼・互譲・協力』は、実際の仕事の上で大いに役立ったこともあって、1976年、東南アジアにCKD事業を本格的に進出しようとしているとき、最も重要な市場のタイでの交渉は、相手は華僑でなかなかムツカシかったのである。
個別の交渉条件を慣れぬ英語で交渉することなどなかなか大変で、出張最終日まで纏まらなかったのだが、
最後に私が黒板に『正直・誠実・勤勉、信頼・互譲・協力』と書いたのである。
華僑の息子たちは解らなかったのかも知れぬが、オーナーの親父さんはこの言葉を見て、『解った』と言ってくれて、タイでのCKD事業がスタートすることになったのである。
★私の人生はこのように生きてきたつもりですし、
今後も、常に私の右に置いて、生きていきたいと思っています。
Furuya . Let the Good Times roll !
私に出会う人がハッピーになるように、行動します。
『人の不幸を喜ぶものは自らの無力を恥じよ』 これからも頑張ります。
『正直・誠実・勤勉』 『信頼・互譲・協力』
これは既に身に付いていると思っています。