金木犀、薔薇、白木蓮

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75:吉本隆明 『超恋愛論』

2007-06-11 10:16:05 | 07 本の感想
吉本隆明 『超恋愛論』(大和書房)
★★★★☆

吉本隆明が恋愛論……。
なにやらとても不思議な感じがするのだけれど、
巷にあふれる恋愛論とはやはり違います。

エッセイ的な部分はあまり好きじゃなかったな。
でも男性が根拠を持ってまじめに、
ロマンチックな理想を語るのは嫌いじゃありません。

第3章は論説的。
近代文学者たちの私生活や作品についての例を挙げ、
日本社会のシステムや因習とのかかわりから
描かれる恋愛を分析しているところがおもしろい。
漱石が『こころ』や『それから』でくりかえし描いている
一人の女性をめぐる三角関係というものは、
非常に日本的な恋愛の形態である、というのが筆者の主張。
日本の知識人の内向性と同性愛な要素に触れ、
当時の社会のあり方と文学の関係について言及しています。

わたしが大学時代に受けた講義で最も印象に残っているのは、
専攻とはほとんど関係ない、「名作の読み直し」でした。
宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』で、親友だと思っているのは
ジョバンニだけで、カムパネルラはそう思ってないよ、とか、
『こころ』は恋愛の話ではなく金銭問題の話なのだ、とか。
妄想めいた論文を読むのがとってもおもしろかった。
入学したばかりの頃に、
「出世したい人、お金をもうけたい人は文学部に来るな」
というようなことを教授が言っていたのだけど、
その講義で、確かに文学って非生産的でロマンチックなのだなあ
……と思ったのでした。

コメント
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