金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

75:さとうまきこ 『東京サハラ』

2006-04-13 11:23:08 | 06 本の感想
さとうまきこ『東京サハラ』(理論社)
★★★☆☆

「ここではないどこか」を夢見る人々の短編集。
最後の「帰り道」が「西へ」「ぼくの援助交際」とリンクしてるのね~。
日常生活の中の対象がはっきりしない苛立ち、
どこかへ行けばすべてが解消されるという幻想。
好みじゃないのだけど、誰もが一度は通過する感覚なのかなあと
思いながら読む。
「ぼくの援助交際」はとくにそうだったけれど、
文章の書き方が示唆的ではっきりと説明されないことが多く、
対象年齢はやや高め?


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74:草野たき 『透きとおった糸をのばして』

2006-04-12 11:24:30 | 06 本の感想
草野たき『透きとおった糸をのばして』(講談社)
★★★★☆

『ハチミツドロップス』が結構好みだったので借りてきました。
講談社児童文学賞でのデビュー作。
恋愛のトラブルがきっかけで、親友に拒絶されることになった中学生の香緒。
同居人の千里ちゃんとるう子ちゃんの関係、
頼まれて参加するとこになったバンド活動を通して、
一歩踏み出していく様子が描かれる。
最初はトーン低めかな?と思ったけれど、コミカルな部分もあり、
静かにじーんとくる部分もあり。
ストレートな友情ではなく、「透きとおった糸」であるところがポイント。
中学生の頃って日常生活における恋愛の割合が大きくて、
いまなら「そんなことで……」と思えることが、
修復不可能な状態につながっちゃうのよね~と
なつかしく思い返してみたりしました。
この方の本はあと二冊出ているようなので、読むのが楽しみ。

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73:佐野久子 『ナナエ』

2006-04-10 11:26:29 | 06 本の感想
佐野久子『ナナエ』(新日本出版社)
★★★★☆

表題作「ナナエ」は、小学生の男の子・和也の物語。
父親が拾ってきた野良猫に、好きな女の子の名前をつけちゃったり、
クラスメイトに猫の名前がバレてあたふたしちゃったりするのが、
可愛くってにやにや笑ってしまった。
大人の都合にしたがうしかない子どもの無力感みたいなものも感じられて、
ラストはすこし悲しい。

「なかよしごっこ」は、奈々江の転校先のクラスメイト・ナオの話。
小学生のころの教室での人間関係、今から思えばたいしたことじゃないけれど
只中にいるときは世界がゆらぐような大事だった、
あの感覚がよみがえって来るようで、胸が痛んだ。
「わたしはわたし」と自分で認めること、
それを周囲に対してつらぬくこと。
その難しさがわかるだけに、この子もこれから苦労しそうだなあ……と
ハッピーエンドで受け止められず、せつなくなりました。

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72:恩田陸 『ネクロポリス (下)』

2006-04-09 11:28:09 | 06 本の感想
恩田陸『ネクロポリス 下』(朝日新聞社)
★★★☆☆

うーむ……眠かったせいか物語の世界にいまいち入り込めず。
なんだか納得しきれないような、もやもやした読後感です。
遠野物語好きとしてはうれしい部分も多かったのだけど。
あれだけちりばめられていた謎が、いともあっさりと片付けられ、
しかもファンタジー的説明のせいか、腑に落ちない。
最近の恩田さんの作品はハズレなしだと思っていたのですが、
上巻での期待が大きかっただけに、このラストはやや不満。


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71:氷室冴子 『北里マドンナ』

2006-04-05 11:29:43 | 06 本の感想
氷室冴子『北里マドンナ』(コバルト文庫)
★★★★★

出勤途中に読む本がなくなってしまったので、古い文庫を出してきました。
中学時代に大好きだった話で、氷室さんの本は引越しの際に
あらかた処分しちゃったものの、これと『恋する女たち』は残しておいたのです。
忘れかけていた気持ちを思い出させてもらったようで、ちょっとしんみり。
はっとするようなフレーズと、情景が画像として目に浮かぶような文章に、
やっぱり氷室さんはすごい……としみじみ思いました。
『なぎさボーイ』と『多恵子ガール』も読み返したくなってきた!
麻生野枝編は、とても楽しみにしていたので残念。

こういう上質な日常の青春ものをもっと読みたいと思うのだけど、
このカラーの土壌がいまはもうなさそうだなあ。さびしい。

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映画:『フリーダ』

2006-04-01 11:32:00 | 映画の感想
『フリーダ』(ジュリー・テイモア 監督)
★★★★☆

メキシコのシュールレアリスム画家フリーダ・カーロの人生を描いた物語。
自画像の通り、眉毛つながってます。
彼女にふりかかる運命を知っていただけに、バスが出てきたときから
もう「やめてー!」と目をおおいたくなってしまいました。
これでもか!これでもか!というくらい襲いかかってくる苛酷な運命と、
それに立ち向かう彼女の強さに目の離せない二時間。
夫リベラの病的な浮気症に苦しみつつ、夫の浮気相手と関係を持ってしまう
エキセントリックな展開にはびっくりでした。
傷つけあいながらも生涯を通してリベラと強く結ばれていたのは、やっぱり
芸術と思想という媒介があったからなんだろうなあ……。
彼女の絵の「痛み」の背景がよくわかっておもしろかったです。
エキゾチックな世界も見所のひとつ。
(元妻が着ていたピンクのブラウスが可愛かった)

しかし肉体的な痛みの描写に弱いわたしは再度見ることはできないと思うので、
好み度は★4つ。

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