金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

62:三浦しをん 『舟を編む』

2012-06-19 08:57:35 | 12 本の感想
三浦しをん『舟を編む』(光文社)
★★★☆☆

玄武書房の営業部に所属し、変人扱いされていた馬締は、
定年を迎える辞書編集部の荒木から見込まれ、
新しい辞書『大渡海』編纂メンバーとして
辞書編集部に迎えられる。
新しい所属部署に馴染めず、気落ちする馬締は、
突然現れた大家の孫娘・香具矢に出会い、心を奪われる。

********************************

先輩から借りたもの。
本屋大賞受賞とのこと。

辞書編纂にかかわる人々を描いたという点で珍しく、
編纂にかかわる舞台裏を垣間見ることができるのは
おもしろい。
視点が変わり、それぞれの登場人物の私生活にも
スポットをあてているせいか、
辞書編纂にまつわる要素のウエイトが低くなっているような?
辞書の完成をゴールにおいているので、
結果的にそれに関する感動が薄くなってしまったのが残念。
松本先生の人生なんて、もっと感動を呼びそうなものだけどなあ。

「CLASSY.」に連載されていたのか……
と巻末を見て知り、このライトさにも納得。
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61:山本容子 『マイ・ストーリー』

2012-06-18 08:57:06 | 12 本の感想
山本容子『マイ・ストーリー』(新潮社)
★★★★☆

銅版画家・山本容子さんのエッセイ。
島根県に行ったとき、美術館でこの人のエッセイを読んだ記憶があるんだけど、
たぶんこの本じゃないかな。
『青春の玉手箱』よりも私生活を赤裸々にさらけ出していて、
読み応えあり。
人生や芸術に対する考え方も深いところまで掘り下げて書かれているように思う。
不倫はやっぱりダメ!って思うし、開き直った感のある文章にもやもやは残るんだけど、

「わたしが知りたくても知ることができなかったことをさっと取り出し、
 まったく不安なしに、どこへでも連れて行ってくれる人と一緒にいられることは……」

の部分には、心を動かされてしまった。
自分の視野をぐんと広げてくれる人、それだけの力を持った人になんて
そうそう出会うものではないものね。
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NHK大河「平清盛」レビュー24

2012-06-17 20:49:10 | NHK大河「平清盛」レビュー
【第24話の一言】

しょうもないギャグ回だと思ってたのに、だまされた。

**************************************

どうしよう……わたし、義朝が好きかもしれない……

先週ひそかに、弱くてかわいそうな義朝にときめいていたのだが、
今週はさらに義朝のかわいそう度がアップ。
「恩賞くれ!!」としつこく食い下がっても
平氏を取り立てようとする信西にはスルーされ続け、
貴族たちには陰口たたかれ、
息子が役職についたのは由良のおかげ。
統子内親王には「由良に重荷を背負わせるな!」と叱りつけられ、
清盛には
「どうせあんたもいつか捨てられるんだからねッ!」
と浮気性の男を寝取られた女のような、負け犬の遠吠え的セリフを言うはめに。
似ていない親子だと思ってたのに、
報われず、みじめに打ちひしがれてるとこが為義に似てきたよね。
いちばん好きだったのは、パパ大好き!な若い頃だけど。

一方の清盛は、いきなりバージョンアップしまくってて怖い。
保元の乱直前から、ちょくちょくできる子ちゃんぶりを発揮していて
「おいおい、どうしちゃったんだよ」と思っていたが、
今回で完全に別人格に切り替わったな。
ガラの悪い郎党(盛国含む)を引き連れて
「黙って俺に従え」とヤクザのような脅しをかけるわ
(BGMに笑った。あそこだけ別番組だった)、
婚礼の席で新郎を笑顔で庭へ投げ飛ばして
「早く子ども作れ!」と言い放つわ、
豹変ぶりにハラハラ。
あの鬱陶しいくらいに青臭い、中2病の清盛は
もう帰ってこないのだね……。

そして結婚式で、新郎に「この結婚ナシにして」と言われ、
目の前で新郎に暴力ふるった義父から、ヤクザな笑顔で
「これからもよろしくね☆」
とか言われる経子の新婚生活を思うと、かわいそうで泣けてくる。
これまで、できすぎたいい子ちゃんだった重盛は、
大人になってからバリバリに不幸顔。
今回で退場した崇徳の「薄幸系根暗男子」のポジションは
重盛が受け継ぐの?
平重盛って「父に対しても抑えが効く優等生」のイメージなんだけど、
この大河の重盛は、不遇な人生を歩むような気がしてならない。


〈その他いろいろ〉

・西行→前回に引き続きイケメン要員。今回は本気で何のために出てきたのか不明。

・基盛がカワイイ。笑顔がキュート

・後白河さん、優勝者を無視しないであげて!!
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60:山本容子 『青春の玉手箱』

2012-06-16 08:39:51 | 12 本の感想
山本容子『青春の玉手箱』(講談社)
★★★☆☆

銅版画家・山本容子さんのエッセイ。
ネスカフェのCMと、よしもとばなな「TUGUMI」の装画、
「美人だなあ~」という印象しかなかったのだけど、
エッセイは以前にも何冊か読んだことがあったはず
(タイトル不明)。
美術大学の雰囲気や、当時の風俗について書かれた部分が興味深い。
大学時代、講義の中で年配の先生が「アンノン雑誌」について
語るのを聞いて、本屋で売ってる実際の雑誌とのあまりのギャップに
「この人、実際読んだことないのにしゃべってるな」
と思ってたんだけど、昔の「an・an」「non・no」は
いまとずいぶん違ったのね……。
そして、同じ分野で仕事をしている男女は、
どちらかが成功するとやっぱりダメなのだなあ。
これは男女に限らず、友人同士でもそうだと思うけど。

芸術家はきちんと話ができ、文章も書けなくてはいけない、
という先生の教えが印象的。
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59:吾妻ひでお 『逃亡日記』

2012-06-15 09:46:49 | 12 本の感想
吾妻ひでお『逃亡日記』(日本文芸社)
★★★☆☆

『失踪日記』の「便乗本」だとのことだけど、
『失踪日記』を読んでいなくても楽しめた。
インタビューが主で、漫画と失踪の舞台となった場所の写真も収録。
デビューまでの生い立ちや、デビュー後のエピソードなんかは
当時の業界をほとんど知らないだけに、興味深い。
ファンならもっと楽しめるのでは?




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58:羽生善治 『決断力』

2012-06-14 09:00:00 | 12 本の感想
羽生善治『決断力』(角川oneテーマ21)
★★★☆☆

たまに見ている書評ブログさんで取り上げられていたもの。
初版は2005年で、一部は仕事で既読。

わたしは将棋に関してはまったくの無知なのだけど(ルールも知らない)、
ビジネスマンを読者として想定した(?)新書だからか、
知らなくても読む上で困らなかったし
知らないからこそ楽しめたところもある。
「将棋が体系化されたのはここ20年の間のこと」だとか、
「将棋界にも戦法に流行がある」とか、
「インターネットで将棋も変わった」とか、
へええ~!と思うような内容がいくつも。

ネットで見かける棋士のおもしろエピソードには、
いつも笑っちゃう。
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57:石川直樹 『最後の冒険家』

2012-06-13 08:29:47 | 12 本の感想
石川直樹『最後の冒険家』(集英社)
★★★★★

気球について知りたいと思っていたところに、そういえば
『いま生きているという冒険』に気球にまつわる記述があった、
と思い出して、読む。
著者のことはほとんど知らないものの、『いま生きて~』で、
自分の体験と考えを適切な言葉に置き換えることのできる
人だなあ……という印象があったので、今回も期待していた。
これは正解。
ノンフィクションは人を選ぶ気がするんだけど、
文庫落ちもしているので、興味を持った人はぜひ読んでほしい!

交通機関も発達し、前人未踏の地というものがなくなった現代において
かつての「冒険」「探検」を行うことは困難になった。
神田道夫はかつての冒険家の系譜に連なる最後の冒険家であった……

というスタンスで神田氏との出会いから、彼が行方不明になった後までを
つづったノンフィクション。
神田氏がどうなったか、と知っていて読んだからなのか、
冒頭からすでにもの悲しい。
そして無茶な計画であったために、同行を断られ続ける
2回目の熱気球太平洋横断遠征についての下りには、
結末がわかっているだけに本当に胸が痛む。

毎年、雪山に登山したあげく遭難した人たちのニュースを見て、
「捜索隊は本当に大変だなあ。危ないってわかってるのに、
 まったく関係のない人まで危険にさらして、はた迷惑なことだ」
と腹立たしく思っていたのだが、これを読んで、
わざわざ雪山に登ろうとする人たちの気持ちも
ちょっとわかったような気がする。
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56:こぐれひでこ 『こぐれひでこのごはん日記 秋冬篇』

2012-06-12 09:06:48 | 12 本の感想
こぐれひでこ『こぐれひでこのごはん日記 秋冬篇』(早川書房)
★★★☆☆

気分転換本。
著者のことを何も知らなくて、料理家かなにかだと思っていたんだけど、
イラストレーター&コラムニスト、らしい。

料理の写真って、カラーじゃないとダメだね……。
モノクロではあまり意味がない気がする。
ごはん日記はいろんな人が書いていて、
見栄えのいいもの、文章がおもしろいものもあるので
その中でこの本を選ぶとしたら、
この人のファンであるという条件が必要になるかもしれない。
Web連載はカラーの写真もきれいでいい。
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55:川越晃子 『おにぎり』

2012-06-11 09:56:06 | 12 本の感想
川越晃子『おにぎり』(グラフィック社)
★★★☆☆

各都道府県のご当地おにぎりに、おにぎりの歴史、
おいしい米・塩・海苔のガイド。

まさに暇つぶし本であった。
レシピがほしいわけでも、おにぎりの歴史が知りたいわけでも
なかったので、わたしには何も残らなかったが、
「おいしいおにぎりを食べたい!」
「いつもとちがったおにぎりを作ってみたい!」
という人にはいいかも。
ご当地おにぎりは写真がカラーで載ってるので
見ていておもしろいし。
徳島県の「すだち味噌」のおにぎりと
愛媛県の「菜ずし」はおいしそうだった。
古代米のおにぎり(石川県)ときなこのおにぎり(長野県)にも
興味を引かれる。
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NHK大河「平清盛」レビュー23

2012-06-10 20:49:43 | NHK大河「平清盛」レビュー
【第23話の一言】

ま た お 前 か !!! > 鬼若

**************************************

清盛にとっての叔父の処刑、義朝にとっての父の処刑を
通過儀礼として描きたいのはわかるが、
戦後処理に尺を取り過ぎて、
なんか間延びしちゃった印象のあるここ数回。

忠正「わしが何より恐れるのは己が平氏の禍となることじゃ」
為義「親兄弟の屍の上にも雄々しく立て!」

かっこいいことを言いながら、都合よく、おじさん&為義パパが
自ら「斬れ」と発破をかけてくれるわけだが、
処刑まで各登場人物の懊悩に焦点をあてて引き延ばしている感が
否めず、感情移入しづらい。

清三郎「おじさん、竹馬できた?」
忠正「すまん、できてない」
清三郎「じゃあ、帰ってきたら作ってね」
忠正「ああ、そうしよう」
 
↑これはずるいよな! 子どもを使うのはずるいよな!
あやうく泣いてしまうところだった!!

非常に静かな前半と、感情の動きを大きく描いた処刑の場面の
コントラストはよかったし、
「斬れない」と言いながら自ら忠正を手にかけた清盛&
自分たちの処刑を清盛に促す忠正の息子たちの姿と、
結局父を手にかけることができず、正清にそれをやらせてしまった義朝&
「最後の頼みもきけない奴が我らの父上を父と呼ぶな!」とののしる兄弟たちの
対比は、今後の平氏と源氏の明暗を暗示しているようで
演出としては好き。
そして、キラキラネーム一歩手前の鬼武者が
「元服したい!」
と言い出したところ。
これまでもこの子が何か言うたびに、
「セリフを言わされてる」感満載で不自然な感じが拭えず、
「またこまっしゃくれたこと言いやがって……」
と思っていたのだが、
「早く大人になって父上を支えたい」
と言い出したときのはほろりと来ちゃった。
だって、昔、義朝も為義に同じようなこと言ってたんだよ……


〈その他いろいろ〉

・西行→イケメン要員。意味もなく出てきた。
 師光→解説要員。「信西様の決断にはこーんな意図があったんですよ!」
 信頼→お笑い要員。出オチ。

・成親「申し訳ございませぬ……!」→嘘泣きでーす☆

・斬首の命を受けて帰宅した義朝にいきなりDVかまされる由良。
 なんか……最近、この人の報われなさ、痛々しさに
 胸がきゅんきゅんしちゃう。
 常盤の子を見て
「優しい子に育てればいい、鬼武者は強い子に育てなければならない」
 と言ってたところも、正妻であることと、嫡男の母であることだけが
 この人を支えているのだなぁ……と思えて切なくなっちゃう。
コメント (2)
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