『猫と鼠』
新潮文庫、番号12、『ボッコちゃん』収録。
タイトルに偽りあり。
オチまで全部読むと、そう思ってしまう。
悪事を働いた人物がその弱みを握られて、定期的に金をゆすり取られる。
推理ドラマ辺りでよく見るパターン。
そんな、脅迫する者とされる者の二人が、話が進むにつれて立場の上下が入れ替わる。
強気の間は言葉遣いが丁寧で、弱気の間は言葉遣いが乱暴で、という対比が楽しい。
……と思ったら、また入れ替わる。
結局どっちもどっちで大変な身の上という忙しさに、
コイツら実は「狐と狸」だろとツッコミ入れたくなる。
ネタバレしないように言葉を選べば、この話の獣は2匹じゃ足らない。
飼われる犬とか、食い尽くす狼とか足したくなる。
なお、この話、語り手が死を覚悟したところで終わるけれど。
星氏が本気出したら、この先も何度だって回転できるだろう。
例えば、その内どっちも影武者になったりとかね。
それでは。また次回。