その日は、霧が出ていた。
俺たちは息を呑んで、崖下の森を見下ろしていた。
吸い込まれそうな深緑。
「黒い森」というだけあって、まるで黒い海のようだ。
許された者しか入れない、そう思わせる境界線。
ここはエルフにとって、あるいは機械の民にとっても、大切な始まりの地なのだと。
立ち尽くす俺たちの沈黙を、エリュテイアが破った。
「参りましょう。今こそ、マキナ様にお目通りを」
彼女を先頭に、俺たちは断崖を下りていった。
森の木々は、まさに侵入者を阻む壁だった。
高いだけじゃない。幹も枝も太く、隙間には蔓草が絡みついている。
「番人を呼びますわ」
下りた地面に、パルムで買った「マギの枝」で図面――魔方陣を描いていく。
同じく「リドの土」を空に撒き、そして彼女は、踊り始めた。
全身を滑らかにくねらせ、複雑なステップを繰り返す。
儀式は、やがて成功した。
枯木色をした小鬼のような、この世界と異なるナニカが現れた。
「けけけ。何百年ぶりかね。そんな見事な奉納演舞を見せてもらったのは」
「森の精霊インプよ。願いを望む者へ、カシュオーンへの正しき道をお示し下さい」
「道は示そう。だが、望みが開かれるとは限らない」
「試練ならば受けます」
「けけけ。なら好きにしな」
小鬼は、エリュテイアに何やら小さな物を差し出した。
「常に源に向かって流れるカシュオーンの水を」
俺たちは息を呑んで、崖下の森を見下ろしていた。
吸い込まれそうな深緑。
「黒い森」というだけあって、まるで黒い海のようだ。
許された者しか入れない、そう思わせる境界線。
ここはエルフにとって、あるいは機械の民にとっても、大切な始まりの地なのだと。
立ち尽くす俺たちの沈黙を、エリュテイアが破った。
「参りましょう。今こそ、マキナ様にお目通りを」
彼女を先頭に、俺たちは断崖を下りていった。
森の木々は、まさに侵入者を阻む壁だった。
高いだけじゃない。幹も枝も太く、隙間には蔓草が絡みついている。
「番人を呼びますわ」
下りた地面に、パルムで買った「マギの枝」で図面――魔方陣を描いていく。
同じく「リドの土」を空に撒き、そして彼女は、踊り始めた。
全身を滑らかにくねらせ、複雑なステップを繰り返す。
儀式は、やがて成功した。
枯木色をした小鬼のような、この世界と異なるナニカが現れた。
「けけけ。何百年ぶりかね。そんな見事な奉納演舞を見せてもらったのは」
「森の精霊インプよ。願いを望む者へ、カシュオーンへの正しき道をお示し下さい」
「道は示そう。だが、望みが開かれるとは限らない」
「試練ならば受けます」
「けけけ。なら好きにしな」
小鬼は、エリュテイアに何やら小さな物を差し出した。
「常に源に向かって流れるカシュオーンの水を」