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60年経過症例

2020-05-18 07:51:29 | Weblog
最近興味深い症例があった。
18歳の時に下顎前歯をぶつけて歯質がかけたため前装鋳造冠にて補綴したとのことだが
色が変色こそしているが、78歳になる今まで何も症状も問題もなく非常に満足しているとのこと。
1960年に装着しているので、60年経過症例(提示してる写真)、年季がはいった補綴物である。
私が生まれたのは1971年なので、この前装鋳造冠は私よりも年上である…

1961年に国民皆保険制度が始まっているため、1960年にこの治療をやったときは
医療保険は任意加入だったので、保険でこの前装鋳造冠を行ったかどうかは
本人曰く覚えていないとのことであったが、
いづれにせよ60年も何も問題なく口腔内にある超長期経過症例である。
60年代の歯科医療といえば、1977年の高速タービンカップリングが出回る前の時代である。
今とは比べ物にならない限られた器材の中で行う歯科治療。
支台歯形成を行うにも現代とは違い、やりにくかったと想像する。
そして歯科医が技工を当たり前に行う時代である。
まさしく歯科医の技術がすべての時代である。また、
この時代の先生方は写真やレントゲンなどで、記録をとり続ける方は少なかったと思うが、
名声や地位にこだわる治療でなく、
コツコツと地道にすべての患者の治療を丁寧に行っている姿が
この様な症例から滲みでている。心から敬意を抱く。

昨今は最新器具器材やらデジタル化が掲げられ、なんでもかんでも
最近の治療がうたい文句にされているが、物に頼らず自分の手技を磨く必要性を
この様な症例からも、我々はもっと再認識しなければならない。
基本を忠実に行う手技には確実性があり、それを実直に続けることほど困難なものはない。

私の持っている長期症例 最長でまだ18年。(開業したのが18年前なので仕方ない)
60年経過症例を前にすると、
「地道になんてことのない治療でもコツコツと丁寧に行う姿勢をもち続けない」
と、先人たちの声が聞こえてくるようで、改めて身が引きまる。

感動してしまったので、写真とレントゲンを撮らしてほしいとお願いした次第。

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