向かいからの怒声はNさんだった。お酒によっているようだったが、お父上の胸ぐらをつかみ、聞き取れないほどのがなり声で何か怒鳴っている。時々語尾のみ「・・・・だろー! っこの野郎!」と聞こえるのだ。時々、片足で店のガラス戸を蹴飛ばして何枚もガラスを割っている。そのたびに「ボンッ! ガシャーン!」と耳をつんざくのだ。そういえば彼は普段からよくお父上に怒られていた。その理由は知る由もない。おそらくそんな普段からの鬱憤が爆発したのかもしれない。自宅2階の窓からこの諍いを眺めていたが子供の目には強烈な光景であった。翌日、彼の母上が割れたガラスをほうきで掃いて片付けていた姿が妙に切なかったような気がする。