「戻りましょう」と言ったところ、その高齢男性は「何をおっしゃるか! 私は足こそ不自由だが頭はしっかりしている。戻るのは自分の気持ちが許さない。複雑といってもきちんと説明してくれれば分かるのでここからの最短距離を教えてくれ」という。(えっ?・・・だって私は一応ジョギングの最中なんですけど・・しかも「自分の気持ちが許さない」といいますが、それよりも私を許して開放してくださいよ)という言葉を私はゴックンと飲み込んだ。だめだ、怒らせたらとても怖そうだ(というか面倒くさそうだ)。私は諦めた。「では、いいですか? この交差点をまっすぐに行くとT字路に当たりますから、そこを左に・・・」 私はその高齢男性に最短距離の説明を始めた。