標記のような薬があれば便利である。しかし早いというのは比較の問題であり、このような薬があるとすれば「遅く治る薬」も存在することになる。この前、高校生で風邪の患者さんが来院した。インフルエンザ検査では陰性である。どうやら受験生とのことで「早く治る薬くれませんかねー」とお願いされた。受験生であれば切羽詰っているだろう。もし試験日までに体調が回復しなければヘタをすると1年棒に振る可能性だってある。気持ちは痛いほどよく分かる。しかしながら、こちらだって患者さんにいつもは「遅く治る薬」を処方して、彼のような大事な時期の人にだけ「早く治る薬」を処方しているわけではない。そんな薬なんてないし、世の中、そんなうまくいく美味しい話は絶対にないと自分も社会人になってからいやと言うほど経験した。だが別段受験期の彼に今その事実を知ってもらおうとは思わない。なので「よ~し、わかった、特別よく効く薬を処方しましょう。頑張って下さい」と言ってフツーの感冒薬を出した。これは医療のさじ加減である。それにしても彼がこのブログを読まないことを願うものである。(笑)