吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

医療訴訟判決「腸閉塞」 その2

2015年10月06日 05時51分31秒 | 日記
 当該患者の治療を一部始終見たのではないため、はっきりとは断言できない。しかし腸閉塞の際に緊急手術が必要かどうかは、長らく外科や救急医学をやってきた自分でも難しいと痛感している。腹痛が強烈なものであっても緊急手術の対象にならない疾患はいくらでもあるし、また腹膜炎の所見がないものもいくらでもある。手術のタイミングが早ければ「手術は必要なかったんじゃないの?」と言われるし、手術が遅ければ生命が脅かされる可能性もある。一般的には腹部触診所見や熱の推移、そして白血球所見やX線所見などで判断される。しかし手術適応のある腸閉塞や腹膜炎でも、検査で所見がないものも多いのである。今まで何回も遅すぎて冷や汗をかいたことはあったし、また逆に手術が早すぎて家族から「手術は不必要だったのでは?」といわれたこともあった。この医学が進んだといわれる現代でも誠にもって厄介な疾患であるのだ。