音楽流れる。
呆然と2人を見ていたジョーイ、嬉しそうに
微笑んで、ゆっくり下手方へ歩いて行く。
途中、振り返りもう一度2人を見詰め去る。
ジェフ、優しく歌う。
“今気付いたこと・・・
誰かを愛しいと思うこの気持ち・・・
胸の高鳴りは
守りたい者を探し当てた喜び・・・
昨日までは
気付かない振りをしていたこと・・・
愛する思いは優しさと
紙一重で全く違うと言うことを・・・
愛がないから表わす優しさと
愛があるから自然に溢れる優しさの・・・
違いをハッキリ感じ取った今
心から愛していたのは君だけと
もう誰も誤魔化せない・・・”
ローズ、呼応するように歌う。
“こんな気持ちは初めて・・・
側にいるだけでとても
心安らいで
温かい思い溢れる・・・
あなたを愛したと気付いた時・・・
ただ湧き上がる
不安と喜び・・・
紙一重で全く違うと言うことを・・・
愛がないから堪らなく不安になる・・・
愛があるから心から幸せだと感じる・・・”
2人、手を取り見詰め合って歌う。
“違いをハッキリ感じ取った今・・・
心から愛していたのは君(あなた)だけと・・・
もう神をも誤魔化せない・・・”
ジェフ、優しくローズに口付け、その胸に
そっと抱き寄せる。 ※
フェード・アウト。
――――― 第 6 場 ―――――
フェード・インする。と、カーテン前。
下手より両手をポケットへ無造作に
突っ込んで、嬉しそうに口笛を吹きながら、
ジョーイ登場。
上手方へ。中央、口笛を止め、上手方を
見て何かを認めたように、その方を見据える。
と、上手よりフレッドゆっくり登場。ジョーイに
近寄る。
(ジョーイ、フレッドを見据えたまま立ち尽くす。)
フレッド「・・・こんにちは・・・。その顔は・・・俺のことを覚えてい
たようだな・・・。」
ジョーイ「・・・忘れるもんか・・・!!」
フレッド「おやおや・・・。あの時以来、いいことと悪いことの2つ
があった・・・。まず、悪いことは勿論、あの日あそこで我
々の殺人を君に見られてしまったこと・・・。いいことは、
その後、君が偶然ジェフの知り合いで、捜す手間が省け
、直ぐに見つかったと言うことだ・・・。」
ジョーイ「・・・だからどうだって言うんだ・・・。」
フレッド「いやに刺々しいなぁ・・・。俺はジェフの親友だぜ。もう
少し愛想よくしてくれたっていいだろ?」
ジョーイ「・・・上辺だけのくせに・・・」
フレッド「上辺だけ・・・?ハハハ・・・。(態とらしく笑った後、急に
真面目な顔付きになる。)あいつはそんな風に思ってな
いと思うがね・・・。」
ジョーイ「兄ちゃんを騙すつもりか・・・。」
フレッド「騙す・・・?そんなつもりはないさ・・・。人間、誰しも表と
裏の顔を持つものだ・・・。もし、あいつが騙されたと思う
なら、あいつは俺の上辺だけしか見てないってことにな
る・・・。それで親友面してるんだとしたら、俺の方が騙さ
れたと思うね。」
ジョーイ「・・・酷い野郎だ・・・。やってることも最低なら、心根も
最低なんだな!!・・・警察へ行く・・・!!」
ジョーイ、怒りに肩を震わすようにフレッドの
横を通り過ぎ、上手方へ行く。
フレッド「(通り過ぎたジョーイに向かって。)おい・・・」
ジョーイ「(溜め息を吐いて立ち止まる。)・・・なんだよ・・・まだ何
か・・・(振り返る。)」
フレッド、背広の内ポケットから取り出した
ナイフで、振り返ったジョーイの腹部を一突き
する。
ジョーイ「(呆然と腹部を見て押さえる。)なんなんだ・・・」
フレッド「・・・おまえが悪いんだぜ・・・。おまえがもう少し、物分り
のいい少年なら、俺はおまえを俺の一存で・・・見逃して
やってもいいと思ってたんだ・・・なのに・・・」
フレッド、言い捨てて下手へ走り去る。
ジョーイ「待て・・・」
ジョーイ、よろめきながら呟くように、
虚ろな瞳で息も絶え絶えに歌う。
“本当に・・・
大事な・・・ことは・・・
誰かを・・・大切だと・・・思・・・う・・・
自分の・・・気持ち・・・
相手が・・・自分・・・を・・・
どう思う・・・とか・・・
そんな・・・ことより・・・
自分が・・・皆を・・・愛してい・・・ると・・・言う・・・
その・・・気持ち・・・
それが・・・一番・・・大切な・・・こ・・・と・・・”
ジョーイ、痛みに膝を付いて、彼方を
見遣る。
ジョーイ「・・・兄・・・ちゃん・・・姉・・・ちゃん・・・」
ジョーイ、倒れる。
音楽盛り上がって、フェード・アウト。
――――― 第 7 場 ―――――
フェード・インする。
遠くに車の通行音が聞こえている。
冷たい風が時折吹き抜けていくよう。
舞台中央、ジョーイの被っていた帽子を
握り締め、佇むジェフ。
ジョーイの声、木霊するように聞こえる。
ジョーイの声「兄ちゃん・・・」
そこへ下手奥よりフレッド、ゆっくり登場。
ジェフを認め近寄る。
フレッド「どうしたんだ、ジェフ?こんなところへ呼び出して・・・。
話しなら社内でも出来るのに・・・。」
ジェフ「(フレッドから目を逸らしたまま。)・・・少し・・・聞きたいこ
とがあるんだ・・・。」
フレッド「(何かに気付いたように。だが知らん顔するように。)・・・
聞きたいこと・・・?」
ジェフ「ああ・・・」
フレッド「何だよ。またスザンヌのことで何か悩んでいるのか?
(笑う。)」
ジェフ、ただ黙って振り返り、フレッドを
見詰める。
フレッド「どうしたんだよ・・・。おまえらしくない。言いたいことが
あるんなら、ハッキリ言えよ・・・。」
ジェフ「・・・昨日・・・午後から社内にはいなかったようだけど・・・
?」
フレッド「ああ、BJブライスに行って、そろそろ首を縦に振っても
らえないだろうかと、ずっと頭を下げてたよ。お陰で今日
は首が痛くて・・・。(首を摩りながら笑う。)」
ジェフ「・・・昨日の午後からおまえはBJブライスには行っていな
い・・・。他にもおまえが立ち寄りそうなところにはいなかっ
た・・・。何故・・・嘘を吐く・・・?」
フレッド「・・・調べたのか・・・?おまえは親友の何を疑っている
んだ?失礼じゃないか・・・。」
ジェフ「じゃあ何処へ行ってたんだ・・・。」
フレッド「・・・関係ない・・・」
ジェフ「・・・もう一つ・・・ここ何年か、おまえが取ってきた契約者
の中で、どう言う訳か高額契約者が早死になのは、どう
言うことなんだ・・・。」
フレッド「知らないね!!」
ジェフ「俺はおまえを信じてきた・・・。これからだって信じていた
い・・・。」
フレッド「ならいいだろ!?」
ジェフ「・・・おまえが自分から、悪に手を染めたんじゃないと信じ
てる・・・。だから・・・俺に本当のことを聞かせてくれ!!」
フレッド「(態とらしく笑う。)・・・何言ってるんだ・・・。」
ジェフ「・・・昨日・・・ジョーイが殺された・・・(絞り出すような声で
。)・・・あんないい奴が・・・」
フレッド「・・・へ・・・ぇ・・・」
ジェフ「・・・この間、あいつは殺人現場でおまえを見たと、不安
がっていたんだ・・・!!あの時は半信半疑で、直ぐにお
まえに問うこともせず、こんなことになってしまった!!・・・
一体誰があいつを殺したんだ!!教えてくれ!!」
フレッド「・・・それを聞いて・・・おまえはどうするんだ・・・」
ジェフ「できることなら俺がこの手であいつの仇を討ってやりた
い!!」
フレッド「(ゆっくり言葉を選ぶように。)・・・今から丁度2年前・・・
営業で何処へ行っても断られ・・・専務からも・・・一つも
契約が取れないような奴は・・・会社には必要ないと言
われ・・・途方に暮れていた・・・。おまえには、こんな気
持ちは分からないだろうな・・・。」
ジェフ「・・・フレッド・・・」
フレッド「・・・そんな時に出会ったのが・・・今・・・俺が手を組んで
いる裏組織だった・・・。あいつらは、俺に契約の取り方
を・・・客の掴み方を教えてくれた・・・。そして・・・その金
を自分のものにする方法まで・・・。」
ジェフ「・・・フレッド・・・まさか・・・おまえ・・・?」
フレッド「・・・最初は奴らの仲間になることを躊躇った・・・。だが
あまりに違う・・・同僚であるおまえの営業成績と・・・自
分を比べた時の惨めさ・・・!!俺はその時、何もかも
捨てたんだ!!誇りや自尊心・・・そして自分の将来ま
で!!」
ジェフ「おまえはそれと引き換えにしてまで・・・金や欲に目が眩
んだのか!!」
フレッド「それだけじゃない・・・何時もおまえの足元に虐げられ
ていた、自分の会社での地位を向上させたかったんだ
!!」
ジェフ「・・・知らなかった・・・おまえがそんな風に思っていたなん
て・・・」 ※2
フレッド「・・・そして・・・丁度あの夜も・・・半年前に書類工作して
加入させた身寄りのない男の殺害を、偶々あの少年に
見られてしまったんだ・・・。俺は上の奴から、その少年
を見つけ出して、何としても始末しろと命令された・・・。
だが・・・保険の掛かった身寄りのない、老い先短い老
人と・・・これからの未来の可能性を一杯持った少年と
では違い過ぎる・・・。俺は少年を説得し・・・金を握らせ
何とか何処か遠くへ逃げろと・・・説得するつもりだった
んだ・・・!!それなのに・・・!!」
ジェフ「・・・まさか・・・おまえが・・・」
フレッド「・・・その“まさか”さ・・・」
ジェフ「(思わず怒りに身を震わせ、フレッドに殴り掛かる。)馬鹿
野郎!!」
フレッド、倒れる。
ジェフ「なんてことをしたんだ!!何故おまえは!!」
フレッド「(項垂れる。)」
ジェフ「(フレッドの胸元を掴む。)ずっと!!ずっと・・・親友だと
思ってきたのに!!(涙を堪えるように。)何故もっと追い
詰められる前に、俺に相談してくれなかったんだ!!何
故!!・・・自分一人で何とかしようだなんて・・・!!おま
えはあいつの人生を奪っただけでなく、自分自身の人生
をも無くしてしまったんだぞ!!何故なんだ・・・!!何故
なんだ、フレッド!!」
フレッド「・・・すまない・・・」
ジェフ「俺に謝ったところでもう!!あいつは二度と戻って来な
いんだ!!何故・・・ずっと親友だと・・・(絞り出すように。)
」
フレッド「・・親友なんかじゃない・・・」
ジェフ「・・・フレッド・・・」
フレッド「・・・俺は・・・自分が許せない・・・。今まで上辺だけでも
おまえの親友面していたことが・・・。こんな手の汚れた
俺が・・・おまえの親友でいれる筈がないんだ・・・。今ま
でも・・・そして・・・これからも永遠に・・・。自首するよ・・・
。今まで・・・ありがとう・・・。」
フレッド、項垂れて上手へゆっくり去る。
ジェフ、呆然と佇んだまま、スポットに
浮かび上がり、切なそうに歌う。(カーテン
閉まる。)
“人が・・・見る夢は・・・
人により様々・・・
だけど願うことは・・・
幸せになりたいと・・・
ただそれだけなのに・・・!!
なのに道は曲がるのか・・・
真っ直ぐに進めず
何故悩み苦しむのか・・・!!
誰にもやってくる
未来に見る夢は・・・
ただ優しさに溢れた
ものだといい・・・
そんな細やかな・・・
夢を握り潰す程
人は突然に・・・
変われるものだろうか・・・
誰が・・・見る夢も・・・
たいした変わりはないと
たった一つの願い・・・
幸せになりたいと・・・
心の底にある思いは
ただそれだけなのに・・・
突然迷ったように
進めなくなるものか・・・!!
夢見た明日さえも・・・
未来に見た夢も・・・
もう二度とは巡りこず
過ぎ去ったもの・・・
そんなちっぽけな
暖かなものに包まれた・・・
夢を持っておまえは・・・
彼方へと飛び去った・・・”
ジェフ、天を仰ぐ。
――――― “ジェフ・カート”完結編へつづく ―――――
※ こんな場面・・・チョー不得意分野です・・・^^;
※2 この台詞を書きながら・・・どこかで聞いたことが・・・
と、思っていたのですが・・・そうそう、7周年記念公演
作品の1本、ちょっとだけ大人な作品の“J”で登場する
ダブル主役的な片割れが、発する台詞そのままなの
でした~^_^;
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(どら余談^^;)
今日の夕方、変な投稿をご覧になった方・・・いらっしゃい
ますでしょうか・・・(・。・;
慌てて削除したのですが・・・正しくは“してもらった”ので
すが、突然に訳の分からないものをお見せしてしまい、
申し訳ありませんでしたm(__)m
実はお盆休みで東京にいる弟が来ていて、仕事柄、
パソコンに詳しい弟にあれこれ聞いている時に、弟が
やってしまったのです~(-_-;)
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
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