りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“ゲルダ” ―全8場― 完結編

2012年09月22日 18時50分35秒 | 未発表脚本


         ゲルダ歌う。

         “人の愛は・・・
         あなたが考えるよりずっと
         大きくて温かい・・・
         心のないあなたには
         きっと分からない・・・
         あなたには理解できる筈がない
         どんなに深くて広いかが・・・
         言葉で表現など出来ない!!”

         ゲルダ、トロルが落とした鏡を拾う。
         ゆっくりカイの方へ向かって差し出す。

  ゲルダ「・・・私は・・・本当は・・・本当は・・・あなたとの毎日なん
       て忘れちゃったわ・・・!!あんなつまらない日々は、二
       度と戻ってこなくていい!!カイなんて・・・カイなんて
       雪の女王と勝手に何処へでも行けばいいのよ!!二
       度と会えなくなっても、私は全然平気なんだわ!!カイ
       なんて大っ嫌い!!そのまま氷人間になっちゃえばい
       いのよ!!(叫ぶ。)」
  フロル「ゲルダ・・・?」
  雪の女王「それはいいわ!(笑う。)」

         その時、鏡が光出し、ガラスのひび割れる
         音が響き渡る。カイ、ほんの少し、ゲルダ
         の叫び声に反応する。

  フロル「・・・え・・・?」
  雪の女王「何・・・?」

         カイ、一時ゲルダを見詰める。涙を拭う
         ような仕種をする。

  フロル「カイの心の中の氷が融け出した!!」
  雪の女王「どうして・・・!?」
  カイ「(ゆっくりと口を開く。)・・・ゲルダ・・・」
  ゲルダ「・・・カイ・・・?」
  フロル「カイ・・・!」
  カイ「(ハッキリと。)・・・ゲルダ・・・ゲルダ・・・!!」
  ゲルダ「カイ!!(カイに抱き寄る。)」
  雪の女王「・・・何故・・・!?」
  ゲルダ「・・・温かい・・・温かいわ・・・!!」       ※
  カイ「ゲルダ・・・」

         ゲルダ、カイ抱き合う。
         トロル、ゆっくり目覚め、起き上がる。

  フロル「(トロルに気付き。)トロル!!」
  トロル「オイラ・・・」
  フロル「(嬉しそうに。)馬鹿野郎・・・心配かけやがって・・・(涙
      を拭うように。)」
  トロル「・・・フロル・・・ごめん・・・」
  雪の女王「(皆の様子を見て。)・・・畜生!!もう少しだったの
        に!!どうして氷が溶けだしたんだ!!」
  フロル「彼女が言った・・・人の心は簡単に片付くようなものじゃ
      ない・・・。あなたがゲルダの愛情を跳ね返す魔法を使っ
      て、カイを自分の囲いの中に閉じ込めていたから、ゲル
      ダは愛情とは反対の、憎しみの感情で、カイの心の中の
      氷に、割って入ったんだ・・・!!」
  雪の女王「何だって・・・!?」
  フロル「きっと、人間ではないあなたには、分からないだろうね
      ・・・。そして・・・僕にも・・・。けれど、ゲルダのカイを思う
      愛情の強さだけは、あなたにも分かる筈だよ。普通の人
      間がこんなところまで・・・死ぬかも知れないって言うのに
      、愛する人を救いたい一身で来るなんて・・・」
  雪の女王「ふん・・・!!あと少しでカイは私のものになるところ
        だったのに!!」

         雪の女王、怒りに肩を震わせ、マントを
         翻し下手へ去る。
         トロル、フロル、嬉しそうに顔を見合わせ、
         ゲルダ、カイを見詰める。
         ゲルダ、カイ、スポットに浮かび上がる。

  ゲルダ「とても心配したのよ・・・!!」
  カイ「・・・ごめん・・・。なんだかまだ夢の中にいるようだ・・・。ま
     た・・・君に会えるなんて・・・」
  ゲルダ「よかった・・・(何かに気付いたように、ハッとして。)そう
       だわ!!フロル!!トロル!!(2人を捜すように。)」
  カイ「(ゲルダの側へ。)誰だい?」
  ゲルダ「フロル・・・トロル・・・(カイを見る。)私をあなたのところ
       まで導いてくれた・・・天使よ・・・」
  カイ「・・・天使・・・?」
  ゲルダ「ええ・・・本当の天使だったに違いないわ・・・」

         音楽流れ、ゲルダ歌う。

         “あなたのお陰で
         勇気を持てた・・・
         あなたがいたから
         ここまで来れた・・・
         ありがとうも言えずに
         思いを残し
         私を幸せに導いてくれた
         本当の天使だったに違いない・・・
         羽を隠して地上に降りた
         夢の国に住むもの・・・
         忘れないわ・・・
         あなたたちのこと・・・
         決して・・・”

  ゲルダ「・・・ありがとう・・・!!」

         優しくゲルダに寄り添うカイ。
         2人、微笑み合う。
         暗転。

    ――――― 第 7 場 ―――――

         明るくなる。と、舞台中央にトロル、
         座り込んで嬉しそうに、手に持って
         いた鏡を大事そうに磨いている。
         そこへ上手より、フロル登場。

  フロル「手の傷はどうだい?」
  トロル「まぁな・・・」
  フロル「(嬉しそうに。)けど、トロルがゲルダを庇って氷に閉じ
      込められ、凍傷になるなんて・・・(笑う。)名誉の負傷だ
      な。」
  トロル「あれは!!つい・・・」
  フロル「本来の自分の役割に目覚めたのかな?でなきゃ、いつ
      までも悪戯を繰り返してちゃ、君は堕天使のままだぜ!!
      “トロル”なんて呼び名、嫌だろ?小鬼だなんて・・・。なぁ、
      チロル!!」
  トロル「(恥ずかしそうに。)・・・別に・・・小鬼だって、オイラは・・・
      そ・・・それより見てみろよ!!」

         トロル、手鏡を嬉しそうにフロルの方へ
         差し出す。

  フロル「また、そんなものを作ってるのかい?」
  トロル「馬鹿!こいつはなぁ、前の鏡とはちょいとばかし訳が違
      うんだ!!へへん!!オイラは心を入れ替えたのさ!!
      聞いて驚くなよ!!この鏡は・・・」
  フロル「・・・この鏡は・・・?」
  トロル「誰もが美男美女に映る、名付けて“夢の変身鏡”なのさ
      !!(声を上げて笑う。)」
  フロル「・・・ゆめ・・・?(呆れたように。)・・・くだらない・・・」
  トロル「見るか?見るか?」
  フロル「・・・見ないよ・・・」
  トロル「そんなこと言わねぇで、ちょっとだけ見てみろよ!!」
  フロル「いやだ・・・」
  トロル「面白いと思うがねぇ・・・」

         トロル、自分で鏡を覗いて、うっとりする。

  フロル「(その様子を見て。)馬鹿だなぁ・・・(笑う。)」
  トロル「(ハッとして鏡を見るのを止める。)・・・そ・・・それにして
      も、雪の女王と天上界の女王って、似てたと思わねぇか
      ?」
  フロル「・・・え?ああ、確かに・・・。けど、天上界の女王様が、“
      畜生”なんて言わないよ。それより、雪の女王の手・・・見
      たかい?」
  トロル「・・・いいや。」
  フロル「なんと!・・・手袋をはめてたんだぜ・・・」
  トロル「嘘吐け!」
  フロル「本当だってば!長いコートの下から、チラッとだけ見え
      たんだ!真っ白な手袋・・・!なんか解せないよなぁ・・・あ
      の2人・・・」
  トロル「分かった!!天上界の女王様の心にも、鏡の破片が突
      き刺さってたんだ!!天上界の女王様くらいになると、破
      片が刺さったところで、感情は自由に操れるんじゃねぇか
      ?だから冷たい心になった時は、雪の女王に変身してた
      んだ!!・・・なぁんてね・・・(笑う。)」
  フロル「だけど君・・・残る破片は後一つ!って、雪の女王の城
      へ行く前に言ってたじゃないか。」
  トロル「馬鹿だねぇ・・・ガラスの破片だぜ?後、一個で完成かど
      うか、集めてみないと分かんねぇじゃねえか!(笑う。)」
  フロル「・・・いい加減な奴・・・(呆れように。)それで・・・?完成し
      たの?」
  トロル「ああ!カイの破片を嵌め込んだ時には、まだ隙間があっ
      たんだけど、いつの間にか綺麗に復活してたんだ!」
  フロル「いつの間・・・って・・・」

         その時、下手より天上界の女王、登場。

  女王「まぁ・・・2人揃って、近頃仲がいいですね・・・。」
 
         フロル、トロル、驚いたように顔を見合わせ
         作り笑いする。

  女王「(ゆっくり上手方へ歩きながら。)それも、あの鏡のお陰か
     しら・・・。満更、役立たずの鏡でもなかった訳ですね・・・。
     (笑う。)」

         トロル、通り過ぎた女王のドレスの裾に、
         何か見つけ、慌ててそれを取る。

  女王「(トロルに気付いて。)何かしら・・・?」
  トロル「(首を振る。)」
  女王「そろそろ“トロル”と言う呼び名は、返上してもよさそうね
     ・・・。(微笑む。)」

         女王、上手へ去る。

  フロル「何、見つけたんだい?」
  トロル「(拾ったものを自分の耳に当てる。)」
  フロル「・・・イヤリング・・・?」
  トロル「これ・・・雪の女王がつけてたイヤリングに、似てると思
      わねぇか・・・?」
  フロル「・・・そう言えば・・・」

         2人、顔を見合わせる。

  2人「まさか・・・」

         2人、顔を引き攣らせて笑う。
         その時、鐘の音が響き渡る。
         2人、下(地上。)を見るようにしゃがみ込む。

  フロル「あっ!!カイとゲルダの結婚式だ!!」
  トロル「綺麗だなぁ・・・」
  フロル「祝福の歌を贈ろう!!」

         立ち上がって、フロル、トロル歌う。
   
         “バラの花 
         香る谷間におわします
         幼子のイエス様!”

         途中、豪華な音楽流れ出し、フィナーレへと
         続く。

    ――――― 第 8 場 ―――――

         下手より、ウェディング姿のカイとゲルダ、
         寄り添い歌いながら、上手より天上界の女王、
         歌いながら登場。
         トロル、フロル、歌いながら微笑んで迎える。
         天上界の女王、ゲルダに花(ブーケ)を手渡す。

         “優しい気持ちは些細なことで
         違うものへと変わることもある
         けれど心の奥深く 根付いた思いは
         何があっても変わらない
         それが本当の思いの宝・・・
         誰もが持ってる温かな温もり
         決して変わらない心の宝
         それを手に入れた者は何よりも強く
         そして誰よりも優しさ溢れる・・・
         きっと分かる筈さ
         君の心の中にも生まれた宝があるから!!”

         その時、花弁がチラチラ舞い落ちる。
         皆、嬉しそうに空を見上げる。
         そのピンクの花弁は、春の訪れを告げているよう。








           ――――― 幕 ―――――








     それでは、次回掲載作品の紹介ですが・・・
     次回は“キャシーの森”の原作・・・とでも言いましょうか、
     人形劇用に書き直したものではなく、舞台用に書いた、
     当時の作品そのままをご覧頂こうかな・・・と思います♪
     人形劇用と、内容的には変わりはないですが、言葉使い
     や背景描写など、微妙に違う部分を読み比べ、楽しんで
     みて下さい(^_^)v
     



















   ※ この辺り、以前の台詞にプラスする形で、全面的に
     書き直しながら進めてる為、少しずつの掲載になって
     しまってすみません~・・・





― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


   (どら余談^^;)

   今日は久しぶりに、有名ミュージカルの舞台観劇に、お出掛
   けして来ました(^_^)v
   とっても有名な歌がメインのこの作品、主演のお2人の歌声
   が素晴らしく・・・一時、夢の世界の住人と化して来ました(^^)
   確か・・・この作品に感化されて、記念公演の“J”作品が生ま
   れたのではなかったかと・・・^_^;
   ・・・ま、それはさて置き・・・
   とても楽しい自分時間を持てた一日でした♪











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