rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

麦茶を煮出す

2011-08-16 23:01:13 | 食べ物たち
暑さにめげずに、毎日麦茶を煮出す。
時には、日に二度三度、煮出すこともある。
年がら年中、麦茶を煮出している。
水出し麦茶が一般的ご時世にもかかわらず、麦茶を煮出している。
煮出した麦茶は、まろやかな味わいがする。
我が家は、生水、井戸の水。
冷蔵庫で冷やして、がぶがぶ飲むには、煮出した麦茶が安心だ。

煮出した麦茶には、母の思い出がある。
さらしで作った袋に煎り麦を入れて、後には金網でできた煎り麦かごで、毎日麦茶を煮出して、冷蔵庫に常備してくれていた。
子供は、学校から帰ったといっては、遊んで咽喉が渇いたといっては、食事とともに、母の作った麦茶を、当たり前のこととして飲んでいた。
子供が巣立ってからは、麦茶の減りも遅くなり、いつしか麦茶を煮出さなくなった母。
その習慣は、母の子へと引き継がれ、こうして毎日麦茶を煮出している。
これが、次へと引き継がれるかどうか、分からない。
でも、麦茶を煮出している後姿、控えめで優しい麦茶の記憶は、中くらいの人たちの味覚に残ることだろう。

ささやかなことだけれども、手間をかけて成されたことを、当たり前のように受け取る。
だからこそ、心にじんわりと沁みこんで、子供達の大切な土台を作っていく。
彼らが大きくなり、愛を持って何気ないささやかなことを成し続けられるようになれば、それはまた誰かに引き継がれるに違いない。
愛は、地味で目立たないものだ。
しかし、人にはとても必要なもの。
小ぬか雨が、大地の深くまで確実に浸透し潤すように、地味で目立たない愛が、人々と全てのものに遍く行き渡るよう、小ぬか雨の一粒にも満たないが、これからも麦茶を煮出していこう。
暑くても、寒くても。