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水戸室内管弦楽団第90回定期演奏会

2014-05-25 23:14:35 | 音楽たちークラシック
水戸室内管弦楽団第90回定期演奏会の中継をテレビで見た。
演目は、指揮者なしで「メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲 第2番 ニ長調」、ついでフィリップ・トーンドゥルのオーボエによる「モーツァルト:オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314」、そして小澤征爾指揮で「ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92」。
今回、どの曲も長調の明るいもので、季節柄に合っていた。
メンデルスゾーンの十代初期の交響曲の習作というが、華やかな曲調はサロンなどを盛り立てるのにふさわしく、今日の演奏会の一曲目として成功していた。
モーツァルト21歳のとき作曲したオーボエ協奏曲も艶やかかつ軽やかなオーボエの音色で、演奏に合わせてこちらの心も浮き立つものだった。
オーボエのソロパートは、この水戸室内管弦楽団のオーボエ奏者でもあるフィリップ・トーンドゥルによるもので、張りのある軽快な音色が曲のある持ち味を引き立たせていたように思う。
そして、好演奏への惜しげない拍手喝さいを受けてのアンコール演奏では、アレッサンドロ・マルチェッロの「オーボエと弦楽合奏のための協奏曲 ニ短調 第2楽章」があった。
とても有名な曲で、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないかと思っていたら、バッハがチェンバロ協奏曲として編曲しているとあり、どちらかといえばバッハで馴染んでいたのだとわかった。
マルチェッロも、形を変えて彼の曲が残っていくことを悪くは思うまい。
第1部でも十分満足のいく演奏だったが、第2部はさらに盛り上がったのだった。
小澤征爾が4ヶ月ぶりに今度はベートーベンの交響曲第7番を携えて指揮に戻ってきた。
「ベト7」という略称で「のだめカンタービレ」でもお馴染みのこの曲は、とにかく明快なリズムが曲をテンポよく引っ張っていく、古典的曲調と一線を画したものだ。
第1楽章は、それこそ「のだめ」のテーマ曲ともいえる明るくはっきりとしたリズムと覚えやすいフレーズで曲が構成されている。
第2楽章は、暗く静かでゆっくりとしたテンポが曲を占め、ここでもそれに見合ったフレーズが色合いを変えながら繰り返される。
第3楽章は、前の2つを合わせたかのような軽快で速いテンポと伸びやかで穏やかなテンポを交互に繰り返す。
第4楽章は、強く速いテンポに細かく刻むリズムが力強く歌い上げ、畳み掛ける音とともに一気にクライマックスへと駆け上がっていくのだ。
第3から第4にかけて、指揮者は疲れを振り切ってまでも、醸成された曲の雰囲気を壊さないために演奏を続行した。
おかげで聴いている者は、ベートーベンの曲の世界に酔いしれることができた。
第1部と第2部の休憩時間には、楽団員へのインタビューを放送してくれ、その中で、「ベートーベン交響曲第7番は大編成のオーケストラで演奏されることが一般的だが、小規模の室内管弦楽団でどのようになるか興味深い」「ベートーベンの演奏構成によると、フルート・オーボエ・ホルンなどの管楽器はそれぞれ各2つとあるから、ベートーベンの意図にあった楽団構成に近い」などの話があり、曲を聴くときその点も注意深く聴いてみることができた。
なるほど、もともと華やかなメリハリのある曲だけれど、シンプルに曲の真髄に近づけるような気がして、好感が持てた。
劇的作風の多いワーグナーは、この交響曲第7番を評してこう語った「舞踏の聖化」と。
踊って恍惚の状態になるようなダンスのステップを踏むかごとくのリズムが、そう言わしめたのかもしれない。
最後の第4楽章に向かっての怒涛のリズムは、やがて迎える大団円でフィナーレを飾る先導者。
演奏が終わった後のコンサートホールの興奮と熱気は、それを如実に物語っていた。
あの世で聴いていたとしたらベートーベンは、きっと満足したことだろう。




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