路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

続・四丁目の夕日

2008-01-26 | 『小鉄』

『小鉄』が再び姿を消したのは、川沿いで再会して三日後の事だった。

納骨堂の裏を通る度、『小鉄』の名を呼んでみた。

街頭の明かりに照らされたベンチの上には、

おばあちゃんが置いていってくれた、猫用の餌が淋しそうに盛られている。

おばあちゃんも『小鉄』には会えていない様子だ。

休日の明るい内に、近所を捜索していると、

犬の散歩のおばさんに声を掛けられた。

「小鉄にそっくりなのが家の近所でウロウロしとるよ。見においで。」

教えられた場所へ急ぐと、『小鉄』がそのおばさん宅の前でうずくまっていた。

私に気付くと罰の悪い顔をして近付いて来た。一応、安心した所で、帰る事にした。

次の日、再びおばさん宅へ行ってみると、

川沿い散歩の人達の噂を聞いておばあちゃん迄、『小鉄』を探しに来ていた。

腰の曲がったおばあちゃんがここまで来るのは大変だったろう。

でも何より『小鉄』が心配だったのかもしれない。

しかしその日、おばあちゃんも私も『小鉄』には会えなかった。

昨日の様子では、この家の外飼い猫にして貰っている様だったので、

もう捜す必要は無いのかもしれない。




夜遅い帰り道、 「翌檜公園」 (川沿いの納骨堂からかなり離れた場所)に差し掛かると

「ニャ~ッ!」と声がし、何故かここに居る筈の無い『小鉄』が現れた。

可笑しくて泣けてきた。

私の膝に乗り、直ぐに満足気に丸くなる『小鉄』…。


 お前は私を捜してここ迄来たのか?


猫に口が利けるのならば一度、訊ねてみたい。



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