最近、youtube「手塚プロダクション公式チャンネル」で、
あるアニメを観た。
本放送は、昭和44年(1969年)4月~9月。
ブラウン管を見つめていた頃、僕はわずか4歳に過ぎないのだが、
意外に覚えているシーンが多く驚く。
それだけ記憶に残る理由は、画質かもしれない。
既にカラー放送が始まって10年近くが経つにも係わらず「白黒」だった。
また、インパクトの強さも大きな要因だろう。
放送時間は、毎週日曜日夜7時30分。
フジTV系列のそこは「カルピスまんが劇場」。
ファミリー層、低年齢層の視聴者をターゲットにしたスポンサード枠で、
カラー露出をためらうほど、陰鬱で残酷で刺激的。
--- それが、アニメ「どろろ」なのである。
ほんの手すさび 手慰み。
不定期イラスト連載 第二百四弾「どろろと百鬼丸」。
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TVアニメ「どろろ」の時代設定は、室町時代半ば。
世に言う「応仁・文明の乱」を経た戦乱の世。
主人公は2人。
一人は、14歳の少年「百鬼丸(ひゃっきまる)」。
その出自は、禍々しさに満ちていた。
ある戦国武将が自らの野望を叶える代償に、
我が子の身体を48の魔物に貢ぐことを約束。
そのため、手も足も目も耳もない--- 48ヶ所を欠損した状態で生を享けた。
生まれた直後、川に流された所を医者に拾われ一命を取り留める。
育ての親は、欠けたパーツすべてを人工物で補い、大切に育ててくれた。
成長するにつれ、重い障害をカバーする鋭敏な第六感やテレパシー能力が発達し、
見た目も行動も常人と変わらないようになってゆく「百鬼丸」。
そして、義手に刀剣、義足に強酸、鼻に爆薬などの武器を仕込んでもらい旅に出る。
魔物を倒し、奪われた四肢と五感を取り戻すために。
もう一人は、作品タイトルにもなっている「どろろ」。
推定年齢10歳前後。
戦乱により田畑を奪われ夜盗となった親の元に生まれた。
放浪のさ中、父母を失うもコソ泥を働き糧を得て、独り逞しく生きる戦災孤児。
一見、少年のようだが、実は女の子。
金と刀に目が無く、腕に名刀を仕込む「百鬼丸」を付け回し連れ合いになった。
旅は苦難の連続。
行く先々で、妖怪や死霊が襲いかかって来た。
むろん、それは望むところ。
「どろろ」の助けを受けながら、魔物と戦う「百鬼丸」。
果たして、2人は目的を完遂できるのか---?!
時代劇で妖怪物。
斬殺、拷問、強盗、合戦、飢餓など、人間の悪行の数々を盛り込んだ「どろろ」。
そのクリエイター陣は、実に豪華絢爛だ。
@原作は“漫画の神様”「手塚治虫」氏。
@総監督は「杉井ギサブロー」氏。
鉄腕アトム、新宝島、千夜一夜物語、まんが日本昔ばなし、
タッチ、キャプテン翼などを手掛けた、日本アニメ界の重鎮。
@音楽は「冨田勲」氏。
シンセサイザーサウンドの草分けで、日本人初のグラミー候補となった音楽家だ。
昭和44年版「どろろ」は半世紀前に制作されたTVアニメ。
予算もスケジュールもタイト。
CGやデジタル処理は遥か遠い未来の技術。
全編手描きのそれは、現代と比べ拙い面が見え隠れはするものの、
なかなか見応えがある。
やはり、優れた才能が結集したからこそ。
そして、独創的な原作設定があればこそだ。
しかし、不人気のうちに幕を閉じる。
「(特に手塚作品の)漫画・アニメは明るい作風で子供向け」
そんな風潮がスタンダードだった当時。
世間が、怨念渦巻くダークファンタジーをエンターテイメントとして受け容れるには、
少々早すぎたのかもしれない。
--- 反面、僕のように心奥深く刻まれた視聴者も少なくない。
事実2000年代以降、時代が追いつく。
再アニメ化、実写映画化、舞台劇、浄瑠璃、ゲームなど、
数々のリメイクが成され、類似設定作品も出現した。
最後に、今回調べてみて初めて知ったのだが、物語の舞台はわが石川県。
それで合点がいった。
主題歌のタイトルバックで筵旗(むしろばた)を掲げ、
竹槍・鎌・鍬などを手にした農民たちが駆け抜けるシーンは
「加賀一向一揆」だったのである。
「どろろ」と言う名前は聞いた記憶がありましたが、TVアニメだったとは知らなかったです。(書籍漫画であった記憶がかすかに)
りくすけさんのブログに書かれた概略を読むと、現在では、日曜のゴールデンタイムに放映でないでしょうね。勉強になりました。
今回のイラスト、いつにも増して良く書かれていると思います。
では、また。
個人的に、昨今の放送倫理については、
少々五月蠅過ぎる気はしますが、
日曜ゴールデンはおろか、地上波では深夜以外、
アニメ「どろろ」の放映は無理かと考えます。
半世紀前にしても、よくGOが出たと思います。
ご指摘の通り「どろろ」の紙の漫画、ありました。
少年サンデー(小学館)~冒険王(秋田書店)と
掲載誌をまたいで連載されましたが、
やはり人気が出ず短命に終わったそうです。
今投稿で原作漫画についても
触れようかどうか迷いましたが、
話がややこしくなり、いたずらに長くなると考え、
割愛した次第。
今でも「手塚治虫 全集」などで読めます。
拙イラスト、お褒めに与り恐縮すると同時に、
大変嬉しく思います。
では、また。