各地から送られてくる紅葉の便りは、絵にかいたような美しい風景を映し、しばし
和まされます。昨日朝のニュースでは、札幌大通り公園の真っ白な雪景色が映されて
いました。 この時期、日本列島は色彩豊かなパノラマとなるのですね。
寒くなってきましたが「夜空」のお話です。
少し前に届いた会報の連載記事、「宇宙の言の葉を尋ねて『流れ星』」(渡部潤一氏、
国立天文台上席教授)は、今回12回を数え、副題に「夜空を切り裂く一瞬の輝き」と
あります。 私も時々、流れ星のベランダ観察を試みていますが、街中の夜空は、月が
出ていなくても真夜中も明るい状態ですから、よほど明るい流れ星でないと見ることが
出来ないのです。この地に来て30年ほどになりますが、昔はもう少し見ることが出来た
記憶があります。
この流れ星は、宇宙空間にある直径1㎜から数㎝程度のチリの粒(砂粒)が地球の大気
に飛び込んできて大気と激しく衝突し、高温になってチリが気化する一方で、大気や
気化したチリの成分が光を放つ現象だとあります。
地球は秒速30㎞という猛スピードで動いており、これらのチリ(砂粒)も同じような
猛スピードですから、地球の大気に突入してくる相対速度は、速いものでは秒速70㎞
にも達するそうで、これはピストルの弾丸のスピード秒速数100mをはるかに超えてい
ます。なので、砂粒が燃えて消えて行くのは一瞬の出来事であるのですね。
この時の発光の度合いは、 質量×速度²×1/2 の式で表されるそうで、砂粒が重い
ほど、また速度が速いほど明るく光るのだそうです。
では、このチリ(砂粒)はどこから来るのか? といえば、それは「彗星」が起源で、
太陽の熱で融け出した彗星のガスの中のチリ(砂粒)が放出されるのです。彗星はこの
ようなチリの粒を軌道上に放出していて、彗星の軌道と地球の軌道が交差している時、
チリの粒がまとめて地球の大気に飛び込んできて起こるとあります。 地球が彗星の
軌道を横切る日時は毎年ほぼ決まっているので、毎年特定の時期に特定の流星群が出現
することになるのです。
流星の起こる仕組み
(国立天文台より)
地球に飛び込んでくるチリの粒はみな同じ方向からやってきて、それを地上から見る
と、星空のある一点から放射状に飛び出すように見えるので、その流星が飛び出す中心
となる点を「放射点」と呼び、放射点のある星座の名前をとって「○○座流星群」と
呼ばれています。主な流星群は下表のとおりです。
主な流星群 (国立天文台より)
注1:一般的な出現期間で、非常に少ない場合も含む。注2:年によって1~2日のずれがある。
注3:理想的な条件の時の流星出現数 注4:極大時に十分暗い空の場合
私が住む地域では、街の明かりがあり、上の表のような具合には行きませんが、国際
天文学連合などでは、数百の流星群リストがあるといいますから、暗い夜空で天の川
なども見える環境でないとむづかしいのかもしれません。 それでも、上表のうち、
しぶんぎ座流星群、ペルセウス座流星群、そして12月中旬のふたご座流星群の三大流星
群には挑戦することがままあります。ふたご座流星群はもうじきですが、昨年もトライ
しました。
会報には、これらの解説のほか「流れ星」に関して、昔からのさまざまな意味付けが
なされてきたことにも触れられていました。
ギリシャをはじめとする古代西洋では、宇宙の中心に地球がありその周りに惑星が
あり、更に遠方には星々が輝く天蓋があるとされ、その外側は光に満ちた神の世界で
あると考えられていた。その天蓋が一瞬だけ開いた時、天上界の光が一瞬漏れて流れ星
として見えると考えられていたそうです。
人の魂が神に召される時に現れると解釈されたり、病気や死を意味するなど凶兆と
して扱われていたようです。中国でも、三国志の中で真っ赤な流星が落ちるのを見て
諸葛孔明が死んだのを悟ったともあるという。
日本では、死に係る凶兆としての意味付けがあるほか、流星を女性の元へ通う男性に
見立て、「よばい星」としていたようで、あの「枕草子」では、『星はすばる。彦星。
夕づつ(宵の明星)。よばいぼしすこしをかし。』とあります。静岡では「星の嫁入り」、
富山では「インキリボシ(縁切り星)」などと言うのもあるそうです。
現代では、「流星が見えている間に、願い事を三度唱えると叶う」というのがあり
ますが、流星が光っている間はほんの一瞬ですから、実際には無理なことですね。
しかし、流星を凶兆の意味に捉えることは殆どないように思われます。科学が発達
して、そのような迷信めいた話はなくなって、よりロマンチックに捉えられているので
しょう。いや、スマホ時代の人達には、何らの意味付けもないのかもしれませんね。
Perry Como - Catch a Falling Star (Audio)