家庭用の燃料電池を使った発電・給湯機器(エネファーム)は既に発売されていますが、これまでの戸建て用の他、
マンションタイプも発売され、いよいよ販売拡大に力を入れ始めている中、昨年暮れには、トヨタが燃料電池自動車
(FCV) “MIRAI” を発売しました。 世界に先駆けて一般の消費者にも水素の利用を広げる取り組みが進んでおり、
安倍首相も成長戦略で “水素社会の実現” を掲げて、ここにきて一気に拡大の様相を呈しています。
このような動向を聞きかじりしているうちに、少し前に届いた会報にも、これに関連した記事が掲載されていたり
していましたので、この際、俄かつくりではありますが、ネットなどを含めて少し調べてみました。
既に、パナソニックや東芝などが製造している家庭用燃料電池 “エネファーム” が水素活用の裾野拡大の一翼を
担っているといえるかもしれません。
一方、先ごろ今年2月には、トヨタなどの自動車メーカ3社(トヨタ、日産、ホンダ)は、水素ステーションの整備促進に
向けた共同支援に合意し、その導入普及に滑り出しています。 燃料電池自動車(FCV)は、水素社会実現に向けた
重要な牽引役として期待されているとしているからです。 トヨタは、MIRAIを発売して、今年1月には、FCV
関連特許 約5680件 を無償提供すると公表しました。
また、東京都は、昨年から “水素社会実現に向けた東京戦略会議” をスタートさせ、今年2月には一応のまとめを
行うなど積極的に取り組まれています。 来る2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、2020年までに
水素ステーションを、選手や大会関係者の輸送ルートを重点に都内35か所に設置するとしています。 さらに、
2025年までに、80か所に拡大する計画を発表しました。
また、全国的には、2015年度内に全国40か所(埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、愛知、滋賀、大阪、兵庫、
山口、福岡)に水素ステーションを稼働させる予定としています。
水素ステーション例(ネット画像より)
3.11以降、原発の議論が活発になった一方で、地球温暖化の問題には目をそむけている感じがします。
2012.5月までに、例外的な大飯原発(3,4号機)を除いて、すべての原発は運転を停止(定期検査)しています。
先ごろ、九電の川内原発(1,2号機)の再稼働合意がなされ、今後 保安規定審査などの流れにはあるものの、
この間の電力需要は火力に依存してきているのです。 日本のエネルギー需給率は4%程度と極めてわずかで、
殆どを輸入の石油、天然ガスなどに依存して、原油安になったとは言え、既に巨額の費用が流出しています。
そして、これらの化石燃料のおかげで、電力需要は賄えているものの CO₂排出は構っておれないのですね。
このような背景から、再生可能エネルギーが一挙に浮上し、過熱気味になってきましたが、こちらも、
“再生可能エネルギー買取問題” などで、混乱を招いている状態ですね。 固定価格買取制度(FIT)が発足し、
企業などは、もっぱら太陽光発電が最も好条件のためこれに集中して、申込み事業者が殺到し、電力会社として、
これらすべてを受け入れることが出来ず、申し込みをストップしているからです。 つまり、太陽光発電ばかりが
増えても、発電量は太陽光に依存しており、電力供給量に大きな波(変動)が生じることになりますが、
電力需要は、発電量とは無関係に求められますから、このバランスをすべて電力会社が負担しなければならない
ということが起こるからです。 発電量が需要を上回って、電力が余った時には、蓄電すればよい、そして、
不足する時には、蓄電した電力を使用すればいいということになりますが、この蓄電のためのコスト、スペースが
現実的ではないため、ここに大きな問題があるのです。 太陽光発電だけでなく、風力や地熱(地熱は、発電量が
安定している)など他のエネルギーとのバランスが必要になってきます。 電力には、量の安定だけではなく、
周波数や電圧変動などの電力の “質” が重要であり、この質を保持するための設備投資負担も大きいのです。
話が、横道にそれましたが、ここに、燃料電池(水素)が着目される理由があるのですね。 水素の利点は、
CO₂がゼロ(排出は水だけ)、水素で蓄電(貯められる、運べる)、したがって電力量を安定して供給、ほぼ無限に
作り出すことができる。 しかし、当然のことながら、燃料電池(水素)に対する課題もあります。 現状では、
まだまだコストがかかりすぎる課題は当然あります。 その他技術的な課題としては、着火範囲が広く爆発の
危険性が高い、水素脆化(金属の劣化現象を起こす)などが検討されますが、技術的に見れば、前者はガソリンと
同程度、後者はプロパンと同程度とみなされるそうですが、水素が俄かに浮上したため、より危険度が高いような
錯覚があり、実態に見合った新しい規制(制度)を見直す必要があると指摘されています。
たとえば、水素の貯蔵には、高圧の水素容器(ボンベ)が想定されますが、既に外国では炭素繊維強化プラスチック
容器の実用化が行われていますから、わが国でもこれら軽量の容器の開発と利用ができるようにし、安全、輸送コスト、
スペースの観点から改善策を構築すべきでしょう。 20数年前に、私が、セルフ給油方式のガソリンスタンドの
導入プロジェクトに参画していた時、消防法やその他の安全関連法律でがんじがらめであったことを想い出しました。
それが、今日では当たり前のようにセルフ給油、しかも都心ではビルの1階でさえ設置されているのですから、
新しいものの実現には、規制そのものの見直しが必須であることは証明されています。
また、貯蔵、輸送の面から考えれば、水素そのものでなく、水素の元といわれるナトリウム(Na)を、例えば
海水から洋上風力発電装置で生成し、貯蔵・輸送し電力需要地で水素に変換し(2Na+2H₂O⇒H₂+2NaOH)、
水素発電を行うとする見方もあるようです。
ちょっと古いですが、2013年の日経ネットでは、「世界の水素インフラの市場規模は、2015年ではまだ7兆円
程度しかない。この内訳をみると、最も大きいのは液化水素基地やパイプラインなどの周辺インフラ市場である。
定置型燃料電池が日本を中心に普及しつつあるが、投資のほとんどはこれから来る「水素社会」に向けて
周辺インフラに振り分けられる。 その後、水素インフラ市場はスロースタートを切る。2020年の市場規模は
約10兆円。2015年からの5年間で約40%の成長にとどまる。年率換算では7%増と市場がまだそれほど
大きくない段階としては小さい成長率である。
しかし、その後は次第に成長が加速し、2025年までの5年間ではほぼ倍増の約20兆円市場になる。
定置型燃料電池と燃料電池車(FCV)の普及が進むことが背景にある。 しかし、両製品とも本格的な普及は
2030年以降の見通しだ。 特に燃料電池車は、本体価格の低下に加えて水素ステーションの整備が進み、
5年ごとに市場を2倍に拡大しながら2045年には約60兆円の市場を形成する。」とあります。
水素市場の予測(日経ネット2013より)
また、「定置型燃料電池は、2015年時点では市場の大半が業務用だが、2025年には家庭用が市場規模で
上回る。 現在、家庭用は低価格化が急速に進んでおり、今のペースで行けば2015年には出力1kWで100万円の
製品が発売されることになる。 それが2020年には約60万円となり、電力会社から購入するよりも電力料金が
安くなるケースが出てくる。2 025年には、50万円を下回る製品が発売され、広く一般に普及するようになる。」
とありますが、現実には、パナソニック製エネファーム2015.4発売の新製品で160万円(0.7kw)のようですから、
まだやや高めですね。
東京都では、普及促進のための種々の支援が計画されていて、たとえばその一つに、2015.2.27以降、
FCV購入補助制度が発表されています。
モデルケースでは、
FCV車 723.6万円
国の補助202万円
都の補助101万円(国の補助の1/2)
であり、都内で FCV車を420.6万円で購入可能となります。
以上、生煮えの感は否めませんが、いずれ大きな問題となるであろう地球温暖化の元凶であるCO₂を排出しない
エネルギーとして、そして 貯める、運ぶ ことが可能で無制限に入手できる “水素” に大きな魅力を感じるのです。
地熱も安定した推進したいエネルギーと思われますが、水素は、さらに蓄積・輸送により送電ロスを生じない点、
理想的といえるかもしれません。
国、地方自治体、大企業が同じベクトルに力が相乗されるプロジェクトが どうぞ順調に推進され大きく
ブレークスル―することを切に期待したいものです。
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