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セイネンキレジェンド25話

2024-11-27 07:03:31 | 小説セイネンキレジェンド


直也の中には友の死によって抱いてはならないものがあった。怒りと憎しみながら憎しみが憎悪となる事が直也は怖かった。思春期の直也は自分の心と向き合う事も怖かった。捉われた感情から逃れたい逃れたいといつも思っていた。仲間がいても直也の抱いた思いは、仲間達には判らない。ただ漠然と感じるだけの仲間達、それだけに直也は孤独だった。ボクシングを学ぶ事で直也は知った事があった。スパーリングで倒され意識を失った時の涙が直也のありのままの心だったのだ。涙を流す事で負けを認めると直也の持つ感情を大きくしてしまう。直也は決して負ける事を認めるわけにはいかなかった。そして強い自分をいつも寄り添ってくれた優子に見せたかった。優子が直也に対する思いは伝わっていたものの久美子の死が優子への思いを打ち消してしまうのだ。優子は直也の本当の心を知っていた。直也と優子の関係は幼なじみであり優子の片思いだったのかもしれない。優子は久美子に渡された久美子が作っていた大切なアクセサリーを直也がリング上で戦っている時にドリームキャッチャーを握りしめていた。直也はリング上で戦い優子はリング下で自分の気持ちと戦っていたのだ。優子の直也への思いは12年もの間、何も変わってはいなかった。
「時間だ、そろそろ行くぞ直也」「絶対に勝つって約束してよ直也」
「え?おまえ・・・」
優子の思いは直也を思うだけでなく勝利への導きであった。優子の思いを受け入れる事の出来ない直也にとって、この試合だけは優子の希望通り勝利しかないと思う直也だった。控え室を出て廊下を歩きながら直也は自分が出来る事を考える。これまでの3回戦で何を学んできたのか?
直也には試合で学んだ事を生かせる事が出来れば必ず勝てる自身があったが、それは後々の直也に襲い掛かるものでもあった。直也は1回戦目からをさかのぼって考えた事がある。それはパンチを繰り出す時のバランスとパンチ後の引き際である。このタイミングを逃すと相手の策略にはまる。4回戦の相手は前回プロ並みの選手であった。そして優勝を勝ち取った選手だった。直也と相手の選手の身長差や腕のリーチ幅に大差はなく試合を見る限りパンチ力は直也以上とみられる。ただ違いと言えば足の5センチほどの長さだ。この差が直也のフットワークに活からされば相手のパンチ力へのリスクを有利に変える事が出来るとリングサイドでは考えていた。直也は引き際のタイミングだけで勝負を挑む事を考える。しかし直也の左腕が耐えられるかどうか。
「あのフットワーク、どう引いたらいいのか?」
直也が引き際の事を考えているとプロテスト前の康志は直也に何かを察知したのだろう。
「直也、引き際の時パンチを受けながら弾く事が出来るか?」
「先輩、どういうことですか?」
「相手のパンチを受けている事が相手にとって不安材料になる」
「不安材料ですか?」
「相手はパンチが当たってると思い始めるはずだが相手はパンチ力に自信を持っているんだ逆手にとれ」
直也は彼の言葉を信じてみようと思った。しかしどうしたらそんな事が出来るのか?直也はボクシングを始めて約4カ月の素人と一緒だ。
「試合の中で何を学ぶしかないか?」
直也は不安とプレッシャーの中でも試合会場へと向かった。



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セイネンキレジェンド24話

2024-11-16 07:10:53 | 小説セイネンキレジェンド


直也の3回戦目の勝利で手が挙げられた時に直也の瞳には涙が浮かぶ。リングサイドに向かう直也は朦朧としながら歩いていた。「おれ限界かな」と弱気になる直也だった。しばくして痛みからの苦しみは直也にとって初めての事だった。こんな思いに駆られながらリング下に降りる。4回戦目の決勝戦までは休憩は10分だけだったが審判員達は何かを話し合い主催者側と協議を行っていた。 直也がリング下の椅子に座った時だった。
「4回戦、優勝決定戦は、30分後に行います」
「どういうことだ?」と誰もが思った。
優勝決定戦には審判員達の協議の結果で充分ではないが30分の休息になった。これまでにない試合が行われ直也をドクターに診てもらう事だった。審判員は直也が試合を続けられるか気にかけていたのだ。直也達は控室に行きドクターの診察を受けるとドクターストップと言う事になるがコーチと康志は納得できなかった。そしてジムの会長に優子は直也の思いを伝えていた。
「君は、何故あそこまでやるのか?」
「先生、俺は勝たなきゃならないんです」
「なぜ? 教えてもらえないか?」
「相手に勝つ為だけにボクシングはしてないんです」
直也はドクターと話をしながら診察を受けた。ドクターが言うには3ラウンドは無理だと会長に話したが会長は反論する。
「先生、私は直也の問題と考え試合に出場させたんですよ」
「もしもの事があったら誰が責任をとるの?」
「私が責任を取りボクシングジムを閉鎖します保証も」
「会長!」「なあ直也お前の気持ち充分感じたぞ、やれるか?」
「はい、できます」
ドクターは、しばらく考え直也の左腕にテーピングを巻いた。そして条件が付けられた。もしも左腕が下がりガードも出来ない状況になった時にはタオルを投げるようドクターは指示を出した。その指示に会長達は従うという事で試合続行が認められた。 直也は筋肉質の身体だが誰が見ても左腕の腫れはわかる。相手の選手は必ず直也の左腕を見ながら戦うだろう。もうどんなに策をこうじても左腕が動かなくなれば勝利はない。
「俺は必ず勝ちます、どんな事をしても勝ちたい!」
「何故、そこまでして勝つ事に拘る?」
「この試合の勝利は俺自身の勝利なんです」
「自分自身に勝ちたいという意味か?」



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セイネンキレジェンド23話

2024-11-06 06:41:49 | 小説セイネンキレジェンド


両者ともに必死な戦いが始まり負け劣らずパンチを出し合う。
ジャブ、ジャブ、ジャブ、フック、ボディー! 下がれ下がれ右だ
ジャブ、ジャブ、ジャブ、フック、ボディー!
左に回れ左に回れジャブ、ジャブ、ジャブ、フック、ボディーだ!
まるでリズムを打つメトロノームになっているかのようだった。繰り返されるパンチの連打が10秒が過ぎた頃に直也の右ボディが炸裂した。相手は一瞬あっけになったようで嫌な顔をし後ろに下がり足を動かし直也から離れる。これが直也の心理戦が効果を出した。何故ならいきなりサウスポーの左利きになったからだ。
「直也のボディが確実に効いたぞ!よし!」
「直也ー!ボディボディボディー!」
直也のリングコーナーから大きな声が聞こえる。観客達は皆立ち上がりリング上の2人の選手を見つめていた。声援は一瞬だけ消え去り、しばらくすると大きな声援が始まる。この繰り返しだ。 優勝候補の相手を追い詰めていく直也の行動に観客達は戸惑いながら。直也はどこまでも相手を追い詰めていく。
「チャンス到来か?」直也の脳裏に言葉がよぎった。
「いける、いける、いける!いけるぞ!」とリングサイドでは言っていたが直也は無心で戦っていた。直也が近づくと相手はすぐにクリンチをするようになる。そして相手のクリンチが多くなっていく。直也はクリンチをする相手を冷静によく見ていた。相手のクリンチの瞬間を直也は見逃す事はなかった。徐々にクリンチをして来る間隔があいて来る。 直也は相手を追い詰めていく更にどこまでも。このクリンチはムエタイではクリンチ状態から頭や首を制して肘打ちや膝蹴りを放つ技術であるがボクシングでは相手に抱きつき動きを止める事である。相手がクリンチする瞬間に直也のボディが炸裂する。相手はボディを打たれても必死にクリンチで逃れようとする。直也はクリンチされる時には相手の息づかいを聞き3ラウンド2分が経過した後だった。
直也は相手に対しクリンチさせず、ボディボディボディ!の連打が続いていく。
「ボディボディボディ!ボディボディボディ!」
リングサイドからもボディボディボディ!の声ばかりが聞こえる。
ボディボディボディ!の声援で直也は相手の右アッパーのように必死にボディ。直也のボディが炸裂すると相手の選手は無防備状態になりボディボディボディ!の連打によって相手の選手はリング床に膝まついた。
ダウン・ダウン・ダウン・ダウン・ダウンだ!ダウンを奪いカウントダウンだ!
「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス・・・」
優勝候補者の相手の選手は首を振りマウスピースを吐き出し立ち上がる事が出来ず相手のリングコーナーからタオルが投げられた。この最終戦前の3回戦3ラウンド2分で激戦の末で審判から直也の手が挙げられた。


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セイネンキレジェンド22話

2024-10-27 07:12:55 | 小説セイネンキレジェンド


2ラウンドのゴングが鳴り直也はリングサイドの椅子へ戻ろうとするが直也の足運びと歩く平衡感覚に変化が見られた。直也の身体は左に傾きやや疲れた感じリングの床を見ながらリングサイドの椅子に座った。ガードも甘くなっていった事を気にする会長やコーチだったが康志は冷静に直也を見ていた。
「どうした、直也?」「え?なんで?」「お前まさか左腕を見せてみろ」
「はい」「直也お前、左腕を痛めたな」
相手のパンチを打たれ続けた事で腕は赤くなり左腕はしびれがあり直也は息を荒くしていた。相手の選手は直也と同じ右利き、それだけに左腕にパンチが集中していた。ノックアウトKO勝ちを相手の選手は狙っていたのだ。勝利の為の左腕を痛めた直也にコーチは次のラウンドで動きが止まればタオルを投げると直也に告げていた。
「コーチ、タオルを投げるのは次の試合にしてください」と直也は言っていた。
「お前の身体の事、考えるのがコーチの仕事だ!」
「わかってます、でも俺は勝ちたいんです」
「このままだと次のラウンドはもたないぞ」「俺は必ず勝ちます」
コーチと直也の会話を聞いていたプロテスト前の康志は直也の持つ潜在的能力を考えている。
「直也、右腕はどうだ?」「右腕は問題ないです」
「なら相手は体力をかなり消耗してる見てみろアイツを」
「苦しい感じですね」
「そんな時は左ストレートをフェイントして右でボディだけを狙え」
コーチとは正反対に康志は直也の気持ちを優先させた。康志はプロテスト前だった為に勝利と言うものを考えるのは当たり前だった。
「サウスポーでこれからが本番だ!オレが教えたろ」
会長やコーチに黙って康志は左利きでのボクシングスタイルを直也に教えていたのだ。直也の気持ちを良く理解していた康志だった。優子は直也の傍に行き涙目で笑う。
「直也なら勝てるよ絶対に勝てるから」
優子の言葉は直也の心に強く響くものがあった。
会長やコーチは1分の間3人の間での会話を聞いていて直也なら勝てるか?と、そんな思いを持つようになる。
「直也、勝ちたいのならコイツの言う通りサウスポーでボディだ」
「もう勝ちに行くしかないぞ、判定では相手が有利だ」
「そうですね、相手もそのことを充分理解してるはずですから」
「わかりました、やってみます」
いよいよ3ラウンドの最後のゴングが鳴る。
「カーン!カーン!カーン!」
両者ともに勢い良く走り出しリングの中央で戦いは始まった。



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セイネンキレジェンド21話

2024-10-17 06:21:14 | 小説セイネンキレジェンド


相手がパンチを出さなければ、隙を突きながら軽いパンチを相手に当てるのだ。相手の選手は冷静にパンチを出す直也に、まんまと策略にはまっていく。しかし、この策略は直也にとってもリスクがあったのだ。直也の体力は保持されるが身体のどこかを痛める可能性がある。中学生の直也は、そんな事はどうでも良かった。
「勝ちたい、優勝したい」
この思いだけで直也は打たれ強いタイプとみられたかったのだ。なぜか?それは前回優勝者に勝ち優勝トロフィーを優子に渡したい思いがあった。直也が、この2ラウンドで何を求めていたのかと言えば最終の4回戦だけであったのだ。この思いが闘争心に変わり直也に力を与えていたが心の中の思いは直也の奥深くの心にあった、まだ本当の直也自身は気づく事はなかった。
「直也ー!直也ー!直也ー!ガンバーだよ」
亡き久美子の「ガンバ」は口癖だった。その久美子の言葉をいうような優子の声援が直也を岩石に変えた。いや岩となりサンドバックのように殴られ続けていたのだ。2ラウンド2分を過ぎると直也の体勢に変化が起きた。初心者の直也にとってメリットよりもリスクが大きかった。直也の体勢は、やや下に下がりガードも甘くなっていった。
「やばいか!限界か?」と会長やコーチは言っている事の小さな声が直也に聞こえていた。
リンサイドにいるコーチは次の試合は無くなると思い始める。直也はコーチは会長の顔を見ながら首を縦にふりうなずいていた。
2ラウンドは数10秒で終わる。3ラウンドで直也の体勢が崩れる事あればタオルを投げる指示を会長は出していた。
あと十秒、九秒、八秒、七秒、六秒、五秒、とリング下の審判は口ずさみ始めリング上の審判はダウンのタイムカウントを口ずさむ。
「ワン、ツウ、スリー、フォー、ファイブ」と観客がダウンのタイムカウントを口ずさむ。きっと観客達は興奮した応援のあまり叫び始めたのだろう。直也が立っていられるかどうか?そして2ラウンドの鐘がなった。直也はゴングに救われた。
「カーン!」2ラウンド終了のゴングが鳴った。



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