再生可能エネ普及の予算を原発事故処理に流用できるようにする改正法が、今日にも成立する。震災復興関連予算と抱き合わせにして議論を封じ、短期成立を期す、またも卑怯(ひきょう)な「束ね法案」だ。
予算とは、いわば国のお財布だ。通常の行政経費に充てるのが一般会計。特別な事業に使うため、一般会計から取り分けるのが特別会計だ。国が管理する膨大かつ複雑な金の流れを明確にするための制度という。
特別会計は、目的に応じてさらに小分けがされている。それを「勘定」と呼んでいる。
問題にしたいのは「エネルギー対策特別会計」(エネ特)だ。
エネ特には再生可能エネルギーの普及や省エネの推進、二酸化炭素(CO2)の排出抑制などに使う「エネルギー需給勘定」(エネ需勘定)や、原子力政策に用いる「電源開発促進勘定」(電促勘定)などがある。
エネ需勘定から電促勘定へ、一時的に予算をやりくりし、原発事故の後始末にも使えるようにしようというのが“改正”の目的だ。
エネ需勘定の財源は、石油会社やガス会社から徴収する石油石炭税。あらかじめ用途を決めて徴収したものを他に流用できることになり、金の流れを明確にするという制度の趣旨をねじ曲げることになる。明らかに禁じ手だ。
後ろめたさがあるからか、復興庁の設置期間を十年間延長する法案など計五本の震災復興関連法案の中に「福島の復興・再生に関する施策の財源確保のため」という名目で忍ばせた、現政権お得意の「束ね法案」。二重の禁じ手だ。
背景には、政府が一部を負担する福島原発の事故処理費用、とりわけ事故で生じた汚染土や廃棄物を一時的に保管する中間貯蔵にかかる費用が膨らんで、電促勘定では賄いきれなくなってきたという台所事情がある。
だからといって、再エネ普及のための財布から原発推進のための財布へと、返済の期限も切らずにお金を移すというのは本末転倒だ。ただでさえ、先進各国に比べて見劣りするといわれる再エネの導入が、さらに遅れる恐れも強い。
復興関連とうたえば、野党も反対しづらいという思惑もあるだろう。だが福島県は3・11の教訓に立ち、脱原発と再生可能エネルギーの推進を「復興ビジョン」の柱に据えている。本当に「福島の復興・再生」を願うなら、このような流用は許されない。
☕アン・ルイス・女はそれを我慢できない
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