香の幻想：ベルガモットミント

　放課後、暑い日差しの中野球部が練習に励んでいます。バックネット裏には大勢の生徒が見学しています。

　彼女は白いセーラー服が汗でからだに張り付いているようです。手に持ったハンカチで胸元を扇いでいます。両隣にいる友人はお目当ての野球部員に釘付けですが、彼女は顔だけはグランドを見ながらも十数メートルくらい離れたところから見学している男子が気になっています。

　彼は友人たちとふざけながら野球部の練習風景を見るともなしに見ています。取り巻きの女子の中のひとりの女の子にどうしても目がいってしまいます。彼女はまっすぐな黒い髪をあごの長さに切りそろえ、美人ではないけど清楚です。暑そうにハンカチをパタパタさせたり、生え際の汗を拭いたりしています。

　彼女は相変わらず顔だけは野球部のほうを見ながら、全神経を彼のほうに向けています。彼はスポーツには縁がない、ひょろっとした体系の目立たないタイプ。涼しげな目元には知性も窺えます。彼女は斜め後ろから刺してくる彼の視線を感じながらも振り返ることが出来ずにいます。

　炎天下のグランド、部員たちの掛け声とバットが球を打つ音が響き渡ります。






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