労働安全衛生法の改正によりストレチェック制度が義務化され、社員・職員が50人以上の事業所は2015年12月から毎年1回ストレスチェックを実施することを義務付けられました。
ストレスチェック制度において、実施者が社員や職員のストレスの状況を正確に把握し、メンタルヘルス不調の防止と職場環境の改善につなげるためには、事業場においてストレスチェック受検者の健康情報保護が適切に行われることが極めて重要です。
また事業者がストレスチェック制度に関する社員や職員の秘密を不正に入手するようなことがあってはなりません。このため、労働安全衛生法第66条の10第2項ただし書の規定において、ストレスチェックを受けた社員や職員の同意なくストレスチェック結果が事業者には提供されない仕組みとされています。
しかし、この仕組みが法令等に従って導入され実施されているかどうか、よくチェックしないと、ストレスチェックは社員や職員にとって個人情報が保護されず、会社や法人から不利益な取扱いを受けるリスクの大きな制度となってしまいます。
ストレスチェック受検者の健康情報の保護
(1)実施事務従事者の範囲と留意事項
ストレスチェックを受ける者について解雇、昇進または異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施の事務に従事してはならないとされています。
*労働安全衛生規則第52条の10第2項「検査を受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない。」
(2)ストレスチェック結果の受検者への通知
事業者は、実施者にストレスチェック結果を受検者に通知させるにあたっては、封書または電子メール等で当該労働者に直接通知させるなど、結果をストレスチェック受検者以外が把握できない方法で通知させなければなりません。
*安全衛生規則第52条の12「事業者は、検査を受けた労働者に対し、当該検査を行った医師等から、遅滞なく、当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。」
(3)ストレスチェック結果の事業者への提供
1.受検者の同意の取得方法
ストレスチェック結果が受検者に知らされていない時点でストレスチェック結果の事業者への提供についての受検者の同意を取得することは不適当であるため、事業者は、ストレスチェックの実施前または実施時に(原則としては)受検者の同意を取得してはならないとされています。
同意を取得する場合は次に掲げるいずれかの方法によらなければならないものとする。ただし、事業者は、受検者に対して同意を強要する行為または強要しているとみなされるような行為を行ってはならないことに留意しなけねばなりません。
・ストレスチェックを受けた者に対してストレスチェックの結果を通知した後に、事業者、実施者またはその他の実施事務従事者が、ストレスチェックを受けた者に対して、個別に同意の有無を確認する方法
・ストレスチェックを受けた者に対してストレスチェックの結果を通知した後に、実施者またはその他の実施事務従事者が、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた者に対して、ストレスチェック受検者が面接指導の対象であることを他の社員や職員に把握されないような方法で、個別に同意の有無を確認する方法(ストレスチェックを受けた者が、事業者に対して面接指導の申出を行った場合には、その申出をもってストレスチェック結果の事業者への提供に同意がなされたものとみなして差し支えありません)
2.事業者に提供する情報の範囲
事業者へのストレスチェック結果の提供について受検者の同意が得られた場合には、実施者は、事業者に対して受検者に通知する情報と同じ範囲内の情報についてストレスチェック結果を提供することができます。なお、衛生委員会等で調査審議した上で、当該事業場における事業者へのストレスチェック結果の提供方法として、ストレスチェック結果そのものではなく、受検者が高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた旨の情報のみを事業者に提供する方法も考えられます。ただし、この方法による場合も、実施者が事業者に情報を提供するにあたって、上記1のいずれかの方法により、受検者の同意を取得しなければなりません。
3.外部機関との情報共有
事業者が外部機関にストレスチェックの実施の全部を委託する場合(事業場の産業医等が共同実施者とならない場合に限ります)には、外部機関の実施者、その他の実施事務従事者以外の者は、受検者の同意なく、ストレスチェック結果を把握してはなりません。なお、外部機関の実施者が、ストレスチェック結果を委託元の事業者の事業場の産業医等に限定して提供することも考えられますが、この場合にも、緊急に対応を要する場合等特別の事情がない限り、受検者の同意を取得しなければなりません。
4.事業場におけるストレスチェック結果の共有範囲の制限
事業者は、本人の同意により事業者に提供されたストレスチェック結果を、受検者の健康確保のための就業上の措置に必要な範囲を超えて、受検者の上司または同僚等に共有してはなりません。
(4)集団ごとの集計・分析の結果の事業者への提供
1.集団ごとの集計・分析の最小単位
集団ごとの集計・分析を実施した実施者は、集団ごとの集計・分析の結果を事業者に提供するにあたっては、その結果はストレスチェック結果を把握できるものではないことから、集団の受検者個人の同意を取得する必要はありません。ただし、集計・分析の単位が少人数である場合には、集団の個々の受検者が特定され、受検者個人のストレスチェック結果を把握することが可能となるおそれがあることから、集計・分析の単位が10人を下回る場合には、集団ごとの集計・分析を実施した実施者は、集計・分析の対象となる全ての労働者の同意を取得しない限り、事業者に集計・分析の結果を提供してはなりません。ただし、個々の受検者が特定されるおそれのない方法で集計・分析を実施した場合はこの限りではありませんが、集計・分析の手法および対象とする集団の規模について、あらかじめ衛生委員会等で調査審議を行わせる必要があります。
2.集団ごとの集計・分析の結果の共有範囲の制限
集団ごとの集計・分析の結果は、集計・分析の対象となった集団の管理者等にとっては、その事業場内における評価等につながり得る情報であり、無制限にこれを共有した場合、管理者等に不利益が生じるおそれもあることから、事業者は、その結果を事業場内で制限なく共有してはなりません。
(5)面接指導結果の事業者への提供
面接指導を実施した医師は、面接指導結果に関する情報を事業者に提供するにあたっては、必要に応じて情報を適切に加工することにより、ストレスチェック受検者の健康を確保するための就業上の措置を実施するため必要な情報に限定して提供しなければなりません。診断名、検査値、もしくは具体的な愁訴の内容等の生データまたは詳細な医学的情報は事業者に提供してはなりません。なお、事業場の産業医等ではなく、外部の医師が面接指導を実施した場合、その医師は、受検者の健康を確保するために必要な範囲で、受検者の同意を取得した上で、事業場の産業医等に対して生データまたは詳細な医学的情報を提供することができます。
ストレスチェック制度において、実施者が社員や職員のストレスの状況を正確に把握し、メンタルヘルス不調の防止と職場環境の改善につなげるためには、事業場においてストレスチェック受検者の健康情報保護が適切に行われることが極めて重要です。
また事業者がストレスチェック制度に関する社員や職員の秘密を不正に入手するようなことがあってはなりません。このため、労働安全衛生法第66条の10第2項ただし書の規定において、ストレスチェックを受けた社員や職員の同意なくストレスチェック結果が事業者には提供されない仕組みとされています。
しかし、この仕組みが法令等に従って導入され実施されているかどうか、よくチェックしないと、ストレスチェックは社員や職員にとって個人情報が保護されず、会社や法人から不利益な取扱いを受けるリスクの大きな制度となってしまいます。
ストレスチェック受検者の健康情報の保護
(1)実施事務従事者の範囲と留意事項
ストレスチェックを受ける者について解雇、昇進または異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施の事務に従事してはならないとされています。
*労働安全衛生規則第52条の10第2項「検査を受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない。」
(2)ストレスチェック結果の受検者への通知
事業者は、実施者にストレスチェック結果を受検者に通知させるにあたっては、封書または電子メール等で当該労働者に直接通知させるなど、結果をストレスチェック受検者以外が把握できない方法で通知させなければなりません。
*安全衛生規則第52条の12「事業者は、検査を受けた労働者に対し、当該検査を行った医師等から、遅滞なく、当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。」
(3)ストレスチェック結果の事業者への提供
1.受検者の同意の取得方法
ストレスチェック結果が受検者に知らされていない時点でストレスチェック結果の事業者への提供についての受検者の同意を取得することは不適当であるため、事業者は、ストレスチェックの実施前または実施時に(原則としては)受検者の同意を取得してはならないとされています。
同意を取得する場合は次に掲げるいずれかの方法によらなければならないものとする。ただし、事業者は、受検者に対して同意を強要する行為または強要しているとみなされるような行為を行ってはならないことに留意しなけねばなりません。
・ストレスチェックを受けた者に対してストレスチェックの結果を通知した後に、事業者、実施者またはその他の実施事務従事者が、ストレスチェックを受けた者に対して、個別に同意の有無を確認する方法
・ストレスチェックを受けた者に対してストレスチェックの結果を通知した後に、実施者またはその他の実施事務従事者が、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた者に対して、ストレスチェック受検者が面接指導の対象であることを他の社員や職員に把握されないような方法で、個別に同意の有無を確認する方法(ストレスチェックを受けた者が、事業者に対して面接指導の申出を行った場合には、その申出をもってストレスチェック結果の事業者への提供に同意がなされたものとみなして差し支えありません)
2.事業者に提供する情報の範囲
事業者へのストレスチェック結果の提供について受検者の同意が得られた場合には、実施者は、事業者に対して受検者に通知する情報と同じ範囲内の情報についてストレスチェック結果を提供することができます。なお、衛生委員会等で調査審議した上で、当該事業場における事業者へのストレスチェック結果の提供方法として、ストレスチェック結果そのものではなく、受検者が高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた旨の情報のみを事業者に提供する方法も考えられます。ただし、この方法による場合も、実施者が事業者に情報を提供するにあたって、上記1のいずれかの方法により、受検者の同意を取得しなければなりません。
3.外部機関との情報共有
事業者が外部機関にストレスチェックの実施の全部を委託する場合(事業場の産業医等が共同実施者とならない場合に限ります)には、外部機関の実施者、その他の実施事務従事者以外の者は、受検者の同意なく、ストレスチェック結果を把握してはなりません。なお、外部機関の実施者が、ストレスチェック結果を委託元の事業者の事業場の産業医等に限定して提供することも考えられますが、この場合にも、緊急に対応を要する場合等特別の事情がない限り、受検者の同意を取得しなければなりません。
4.事業場におけるストレスチェック結果の共有範囲の制限
事業者は、本人の同意により事業者に提供されたストレスチェック結果を、受検者の健康確保のための就業上の措置に必要な範囲を超えて、受検者の上司または同僚等に共有してはなりません。
(4)集団ごとの集計・分析の結果の事業者への提供
1.集団ごとの集計・分析の最小単位
集団ごとの集計・分析を実施した実施者は、集団ごとの集計・分析の結果を事業者に提供するにあたっては、その結果はストレスチェック結果を把握できるものではないことから、集団の受検者個人の同意を取得する必要はありません。ただし、集計・分析の単位が少人数である場合には、集団の個々の受検者が特定され、受検者個人のストレスチェック結果を把握することが可能となるおそれがあることから、集計・分析の単位が10人を下回る場合には、集団ごとの集計・分析を実施した実施者は、集計・分析の対象となる全ての労働者の同意を取得しない限り、事業者に集計・分析の結果を提供してはなりません。ただし、個々の受検者が特定されるおそれのない方法で集計・分析を実施した場合はこの限りではありませんが、集計・分析の手法および対象とする集団の規模について、あらかじめ衛生委員会等で調査審議を行わせる必要があります。
2.集団ごとの集計・分析の結果の共有範囲の制限
集団ごとの集計・分析の結果は、集計・分析の対象となった集団の管理者等にとっては、その事業場内における評価等につながり得る情報であり、無制限にこれを共有した場合、管理者等に不利益が生じるおそれもあることから、事業者は、その結果を事業場内で制限なく共有してはなりません。
(5)面接指導結果の事業者への提供
面接指導を実施した医師は、面接指導結果に関する情報を事業者に提供するにあたっては、必要に応じて情報を適切に加工することにより、ストレスチェック受検者の健康を確保するための就業上の措置を実施するため必要な情報に限定して提供しなければなりません。診断名、検査値、もしくは具体的な愁訴の内容等の生データまたは詳細な医学的情報は事業者に提供してはなりません。なお、事業場の産業医等ではなく、外部の医師が面接指導を実施した場合、その医師は、受検者の健康を確保するために必要な範囲で、受検者の同意を取得した上で、事業場の産業医等に対して生データまたは詳細な医学的情報を提供することができます。