新「廊下のむし探検」

大阪北部のマンションの廊下で見つけた虫の名前を調べています

虫を調べる ハナムグリハネカクシの仲間

2019-04-04 08:05:41 | 虫を調べる
ハネカクシを調べてみました。「日本列島の甲虫全種目録(2019年)」(以後、目録と略します)によると、日本産ハネカクシ科は404属2410種。なかなか手を付けることができずに、いつもハネカクシの仲間とだけ書いてギブアップしていました。でも、今年は何とか虫の空白区をなくそうと思って、ささやかながら抵抗をしてみました。といっても、まだ、亜科の検索の段階なのですが・・・。



今回調べたのはこのハネカクシで3月9日にマンションの廊下で捕まえたものです。たぶん、ハナムグリハネカクシの仲間だろうということは分かるので、おそらくOmaliinae(ヨツメハネカクシ亜科)になるだろうと見当をつけて検索をしてみました。ちょっとした練習のつもりです。検索表には次の論文に載っている検索表を用いました。

A. J. Brunke and J. Klimaszewski, "Staphylinidae of Eastern Canada and Adjacent United States. Key to Subfamilies; Staphylininae: Tribes and Subtribes, and Species of Staphylinina", Can. J. Arthropod Identification 12, 1 (2011).(ここからダウンロードできます)

これはカナダ東部とそれに接するアメリカでのハネカクシに関する文献なのですが、たぶん、亜科の検索はそのまま使えるだろうと思って使ってみました。



検索してみると案の定、Omaliinaeになったのですが、検索の過程を抜き出して書いてみるとこのようになります。拙い語学力で翻訳していますので、間違って訳しているところがあると思います。そのつもりで見ていただければ助かります。結局、①b~⑨までを調べるとOmaliinaeであることを確認できることになります。ちょっと驚いたのですが、〇〇とは違うというたぐいの検索項目ばかりです。たぶん、ハネカクシは外形だけで亜科の違いがかなり分かるのだろうということが分かります。この検索表に出てくるいろいろな亜科は論文内の写真で確かめることができるのですが、著作権の関係でそのままここに出すわけにはいきません。それで、画質を極端に悪くして、外観だけでも分かるようにして載せてみました。



何となく外観の違いは分かるのではと思います。これらと比べてみると、確かに今回のハネカクシと同じような外形のものはいないということが分かります。それで、〇〇とは違うという項目を除いて写真で確かめていきたいと思います。いつものように、検索順ではなく、部位別に出します。



これは背側から見た全体像です。体長は3.6mm。いろいろな項目があるのですが、皆、〇〇とは異なるという項目なので、それらを飛ばすと②の上翅に隆起線がないという項目だけが残ります。写真で見る限り、隆起線はありません。ということでここではすべての項目をOKだとしました。



次は腹面です。⑥は眼で見える腹節の数に関するものです。腹節にちゃんとした番号をつけようと思って文献を探してみました。

C. E. Tottenham, "Coleoptera Staphylinidae Section (a) Piestinae to Euaesthetinae", Handbooks for the Identification of British Insects Vol. IV, Part 8(a) (1954).(ここからダウンロードできます)

いつもの英国の本に載っていました。番号をつけてみると、確かに全部で6節になります。次の後胸腹板は後脚の前の部分の腹板を指しますが、そこにはlobeと言われるような突起はありません。それで両方ともOKとしました。



次は複眼に対する触角の挿入口の位置です。撮る角度によって位置が変わって見えるのですが、こんな角度で撮ると確かに複眼より前に位置していることが分かります。



最後はたぶんもっとも重要な項目なのですが、複眼の後方には確かに単眼が2個あります。他のハネカクシには単眼がないので、これで決定的です。単眼と複眼を合わせると確かにヨツメになるので名前の由来も分かります。ということで、亜科までは無事に達することができました。先ほどの目録によると、日本産ヨツメハネカクシ亜科には28属190種が記録されているそうです。ハナムグリハネカクシはEusphalerum属に属するのですが、この属だけでも57種。う~ん、うなってしまいます。

ついでに撮った写真を載せておきます。



最初は頭部を腹側から写した写真です。口肢がよく見えます。



次は触角です。生物顕微鏡の10xの対物レンズで撮影したので、触角が視野からはみ出してしまいました。そこで、2つに分けて撮影し、後でくっつけました。全部で11節です。



そして、最後は腹部末端です。こんな形はたぶん♀ではないかと思います。

ということでハネカクシの亜科の検索をやってみました。ハネカクシは種類が多いのですが、検索表を見ると、外形で亜科くらいは区別できるものが多そうです。一度、図鑑で代表的な種を拾ってきて亜科の見本みたいなものを作るとよいかもしれないなと思いました。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
著作権 (ささき)
2019-04-05 06:53:34
私は著作権については一般論しか知らないので教えていただきたいのですが、すでに公表されている論文から引用する場合は、出典を明記すれば著作権の侵害にはならないものと思っていました。たとえば写真を転載する場合は「画質を極端に悪く」するなどの対処が必要なのでしょうか?
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著作権 (roukanomushi)
2019-04-05 08:26:14
私も以前著作権にはずいぶん苦しめられました。公表された論文は、大きな出版社の場合は著作権の移行がなされているので、たいてい出版社が権利を持っています。この権利は連名になった著者の最後の一人が亡くなってから日本では50年、米国などでは70年はその権利が残っています。小さな出版社の場合は個人がもっている場合は多いのですが、その場合も同様で亡くなった後はその権利を引き継がれた方がそのまま持っていることになります。論文の図や文章を長文で引用する場合は、出版社と著者の両方に許可をとらなければなりません。この作業が大変で、引退された方は学会などを通じて住所を聞きまくらないといけません。亡くなっている場合はどなたが権利を引き継いだか分からないので引用を諦めました。出版社の場合は書こうとする論文の出版社が同じ組合に入っていないとたいがいは有料になり、図1枚で数千円から数万円は取られます。引用するときも出典の明記が要求され、場合によっては書き方まで規定されることがあります。特に、ホームページなどのように不特定多数の人が見る場合には要注意です。正式に許可をとると論文の場合より値段が高くなるし・・・。だから、本当はこれほど画質を落としてもダメなのかもしれませんが・・・。
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Unknown (roukanomushi)
2019-04-05 10:24:18
ささきさんへ、メールをいただいたのですが、返信をしようとするとアドレスが認識されないというエラーが出て送れません。調べてみると、@マーク直前の"."は2009年4月1日以降使えなくなったと書かれていました。
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