ハネカクシを調べてみました。「日本列島の甲虫全種目録(2019年)」(以後、目録と略します)によると、日本産ハネカクシ科は404属2410種。なかなか手を付けることができずに、いつもハネカクシの仲間とだけ書いてギブアップしていました。でも、今年は何とか虫の空白区をなくそうと思って、ささやかながら抵抗をしてみました。といっても、まだ、亜科の検索の段階なのですが・・・。
今回調べたのはこのハネカクシで3月9日にマンションの廊下で捕まえたものです。たぶん、ハナムグリハネカクシの仲間だろうということは分かるので、おそらくOmaliinae(ヨツメハネカクシ亜科)になるだろうと見当をつけて検索をしてみました。ちょっとした練習のつもりです。検索表には次の論文に載っている検索表を用いました。
A. J. Brunke and J. Klimaszewski, "Staphylinidae of Eastern Canada and Adjacent United States. Key to Subfamilies; Staphylininae: Tribes and Subtribes, and Species of Staphylinina", Can. J. Arthropod Identification 12, 1 (2011).(ここからダウンロードできます)
これはカナダ東部とそれに接するアメリカでのハネカクシに関する文献なのですが、たぶん、亜科の検索はそのまま使えるだろうと思って使ってみました。
検索してみると案の定、Omaliinaeになったのですが、検索の過程を抜き出して書いてみるとこのようになります。拙い語学力で翻訳していますので、間違って訳しているところがあると思います。そのつもりで見ていただければ助かります。結局、①b~⑨までを調べるとOmaliinaeであることを確認できることになります。ちょっと驚いたのですが、〇〇とは違うというたぐいの検索項目ばかりです。たぶん、ハネカクシは外形だけで亜科の違いがかなり分かるのだろうということが分かります。この検索表に出てくるいろいろな亜科は論文内の写真で確かめることができるのですが、著作権の関係でそのままここに出すわけにはいきません。それで、画質を極端に悪くして、外観だけでも分かるようにして載せてみました。
何となく外観の違いは分かるのではと思います。これらと比べてみると、確かに今回のハネカクシと同じような外形のものはいないということが分かります。それで、〇〇とは違うという項目を除いて写真で確かめていきたいと思います。いつものように、検索順ではなく、部位別に出します。
これは背側から見た全体像です。体長は3.6mm。いろいろな項目があるのですが、皆、〇〇とは異なるという項目なので、それらを飛ばすと②の上翅に隆起線がないという項目だけが残ります。写真で見る限り、隆起線はありません。ということでここではすべての項目をOKだとしました。
次は腹面です。⑥は眼で見える腹節の数に関するものです。腹節にちゃんとした番号をつけようと思って文献を探してみました。
C. E. Tottenham, "Coleoptera Staphylinidae Section (a) Piestinae to Euaesthetinae", Handbooks for the Identification of British Insects Vol. IV, Part 8(a) (1954).(ここからダウンロードできます)
いつもの英国の本に載っていました。番号をつけてみると、確かに全部で6節になります。次の後胸腹板は後脚の前の部分の腹板を指しますが、そこにはlobeと言われるような突起はありません。それで両方ともOKとしました。
次は複眼に対する触角の挿入口の位置です。撮る角度によって位置が変わって見えるのですが、こんな角度で撮ると確かに複眼より前に位置していることが分かります。
最後はたぶんもっとも重要な項目なのですが、複眼の後方には確かに単眼が2個あります。他のハネカクシには単眼がないので、これで決定的です。単眼と複眼を合わせると確かにヨツメになるので名前の由来も分かります。ということで、亜科までは無事に達することができました。先ほどの目録によると、日本産ヨツメハネカクシ亜科には28属190種が記録されているそうです。ハナムグリハネカクシはEusphalerum属に属するのですが、この属だけでも57種。う~ん、うなってしまいます。
ついでに撮った写真を載せておきます。
最初は頭部を腹側から写した写真です。口肢がよく見えます。
次は触角です。生物顕微鏡の10xの対物レンズで撮影したので、触角が視野からはみ出してしまいました。そこで、2つに分けて撮影し、後でくっつけました。全部で11節です。
そして、最後は腹部末端です。こんな形はたぶん♀ではないかと思います。
ということでハネカクシの亜科の検索をやってみました。ハネカクシは種類が多いのですが、検索表を見ると、外形で亜科くらいは区別できるものが多そうです。一度、図鑑で代表的な種を拾ってきて亜科の見本みたいなものを作るとよいかもしれないなと思いました。
今回調べたのはこのハネカクシで3月9日にマンションの廊下で捕まえたものです。たぶん、ハナムグリハネカクシの仲間だろうということは分かるので、おそらくOmaliinae(ヨツメハネカクシ亜科)になるだろうと見当をつけて検索をしてみました。ちょっとした練習のつもりです。検索表には次の論文に載っている検索表を用いました。
A. J. Brunke and J. Klimaszewski, "Staphylinidae of Eastern Canada and Adjacent United States. Key to Subfamilies; Staphylininae: Tribes and Subtribes, and Species of Staphylinina", Can. J. Arthropod Identification 12, 1 (2011).(ここからダウンロードできます)
これはカナダ東部とそれに接するアメリカでのハネカクシに関する文献なのですが、たぶん、亜科の検索はそのまま使えるだろうと思って使ってみました。
検索してみると案の定、Omaliinaeになったのですが、検索の過程を抜き出して書いてみるとこのようになります。拙い語学力で翻訳していますので、間違って訳しているところがあると思います。そのつもりで見ていただければ助かります。結局、①b~⑨までを調べるとOmaliinaeであることを確認できることになります。ちょっと驚いたのですが、〇〇とは違うというたぐいの検索項目ばかりです。たぶん、ハネカクシは外形だけで亜科の違いがかなり分かるのだろうということが分かります。この検索表に出てくるいろいろな亜科は論文内の写真で確かめることができるのですが、著作権の関係でそのままここに出すわけにはいきません。それで、画質を極端に悪くして、外観だけでも分かるようにして載せてみました。
何となく外観の違いは分かるのではと思います。これらと比べてみると、確かに今回のハネカクシと同じような外形のものはいないということが分かります。それで、〇〇とは違うという項目を除いて写真で確かめていきたいと思います。いつものように、検索順ではなく、部位別に出します。
これは背側から見た全体像です。体長は3.6mm。いろいろな項目があるのですが、皆、〇〇とは異なるという項目なので、それらを飛ばすと②の上翅に隆起線がないという項目だけが残ります。写真で見る限り、隆起線はありません。ということでここではすべての項目をOKだとしました。
次は腹面です。⑥は眼で見える腹節の数に関するものです。腹節にちゃんとした番号をつけようと思って文献を探してみました。
C. E. Tottenham, "Coleoptera Staphylinidae Section (a) Piestinae to Euaesthetinae", Handbooks for the Identification of British Insects Vol. IV, Part 8(a) (1954).(ここからダウンロードできます)
いつもの英国の本に載っていました。番号をつけてみると、確かに全部で6節になります。次の後胸腹板は後脚の前の部分の腹板を指しますが、そこにはlobeと言われるような突起はありません。それで両方ともOKとしました。
次は複眼に対する触角の挿入口の位置です。撮る角度によって位置が変わって見えるのですが、こんな角度で撮ると確かに複眼より前に位置していることが分かります。
最後はたぶんもっとも重要な項目なのですが、複眼の後方には確かに単眼が2個あります。他のハネカクシには単眼がないので、これで決定的です。単眼と複眼を合わせると確かにヨツメになるので名前の由来も分かります。ということで、亜科までは無事に達することができました。先ほどの目録によると、日本産ヨツメハネカクシ亜科には28属190種が記録されているそうです。ハナムグリハネカクシはEusphalerum属に属するのですが、この属だけでも57種。う~ん、うなってしまいます。
ついでに撮った写真を載せておきます。
最初は頭部を腹側から写した写真です。口肢がよく見えます。
次は触角です。生物顕微鏡の10xの対物レンズで撮影したので、触角が視野からはみ出してしまいました。そこで、2つに分けて撮影し、後でくっつけました。全部で11節です。
そして、最後は腹部末端です。こんな形はたぶん♀ではないかと思います。
ということでハネカクシの亜科の検索をやってみました。ハネカクシは種類が多いのですが、検索表を見ると、外形で亜科くらいは区別できるものが多そうです。一度、図鑑で代表的な種を拾ってきて亜科の見本みたいなものを作るとよいかもしれないなと思いました。