上砂理佳のうぐいす日記

3月31日(月)から4月6日(日)まで銀座中央ギャラリーの「10×10版画展」に銅版画小品を出品します★

聖なるイチジクの種★

2025-02-28 | うぐいすよもやま日記
「ヒジャブをきちんと被っていない」という罪に問われ逮捕され、後に死亡した若い女性の事件がありました。2022年のことでした。その事件があったイランが舞台の一家4人の物語。カンヌ国際映画祭で特別賞を獲り、米アカデミー賞にもノミネートされ話題となっています。

国家公務員として永らく勤めてきたお父さんが最近「予審判事」に昇進して、「これで3LDKに住めるわね!」と喜ぶお母さん。長女は大学生、次女は高校生。お洒落なインテリアの自宅に自家用車、美味しそうな食卓、今既にプチブルジョワ的な良い暮らしをしています。
「ヒジャブ事件」以降、街では毎日のように反政府派と取り締まり側の衝突が起こり、とても物騒です。
国家権力に反発を覚える長女のスマホにも、捉えられ警察から暴力を受ける人たちの生々しい動画が送られてきます。
ある日、長女の友人女性も重症を負いましたが、お母さんは「お父さんの出世に支障が出るから、反政府側の人と関わらないで!」と非難します。
お父さんは「政府に逆らう人」に刑罰を下すことが仕事で、日に何百人もの逮捕者を扱わねばならず多忙でイライラ。家族とロクに団欒もしていません。「国に忠実に仕えること」が、お父さんにとり一番大事なのです。
お母さんは、不機嫌な夫に気を遣い、反抗心を募らせる娘たちを叱りながら、なんとか精神の均衡を保っています。

昇進後、「護身用」として職場から渡されたピストルをお父さんが家に持ち帰りました。「怖い」と驚くお母さん。寝室の引き出しにしまったのですが、ある朝お父さんはピストルが無くなっていることに気付きます。

国から託された武器を無くした、とあっては、懲役半年~三年の罪。何より信用を無くして、今までのキャリアと現在の地位全てがパーに。
焦ったお父さんは探しまくりますが、疑いは妻と娘に向けられ、やがて一家の日常は狂い出し。。。

私は他にもイランの映画を見たことがありますが、女性が被らねばならないヒジャブ=スカーフの存在が、単なる被服の問題ではなく「人権蹂躙」になっているのだと、痛切に感じます。男の人たちの心情はわかりませんが、イスラム教の教義に従うことがやがて「権力」に結び付く恐ろしさ。

「イチジクの種」は、鳥の糞に混じり木の下に落とされ、やがて芽が出たら地中に根を張る。
その根は伸びやがて強烈な力で、自分が張り付いた大木をも締め付けて殺してしまう。
「政府批判だ」として映画を作った監督は逮捕状が出ており国から脱出。命がけで作った映画は国内では上映禁止。イラン国民は見られない、という皮肉なことになっています。
世界中の人に見て欲しいし、女性を虐げる宗教文化って、何なのかな?と悶々としますが、とにかくサスペンス映画としても面白い一本です★
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