黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

長崎さるく #54 小菅修船場跡1

2010-11-15 01:24:12 | 長崎さるく
シリーズでお送りしている長崎さるくの第三弾。
今回は通称「そろばんドック」の名で知られる、
小菅修船場跡です。



グラバー園から約1.5km、
細く食い込んだ入江に造られた小菅修船場は、
明治元(1868)年完成の、現存最古の洋式ドッグであり、
その捲上小屋は現存最古の赤煉瓦建造物、
近代化産業遺産として世界遺産の暫定候補でもあり、
國の指定重要史跡、
さらには社団法人日本機械学会が認定した、
最初の機械遺産でもあるという、
錚々たる肩書きを持ちながら、
いつ行っても殆ど見学してる人を見ない、
不遇の遺産です。





敷地の入口に立てられた解説板にあるように、
薩摩藩とグラバーが音頭をとって完成した修船場は、
幕末から各藩が集めた軍艦の修理等で活躍するものの、
その後三菱の経営下に入ってからは、
対岸の造船所(現在の三菱重工長崎造船所)の勢いに押され、
徐々にその役割を終えて行ったそうです。





長崎造船所の史料館に展示されている、
初期の頃の修船場の写真。
この写真は何処から撮影したんでしょうか。
現在の小菅の入江は長崎湾い向かって広がっているので、
岸から撮影したとは思えず、
さらにかなり高さのあるところから撮影しているようです。
水面の上に浮遊して撮影した様に思える、
不思議な写真です。





また、長崎造船所史料館には、
創業の頃の修船場の模型も展示されていますが、
これによって、
船台が「そろばん」の様だったことがわかります。

また創業当時の引き上げワイヤーは中央に一本。
ちなみにこのワイヤー、画像をよく見ると、
何カ所かつなぎ目の様な物が見えると思いますが、
当時は一気に巻き上げるのではなく、
引いたら引いた分だけワイヤーを外して行き、
巻き戻す時はワイヤーを継ぎ足して延ばしていたそうです。
煙突の横に並ぶ筋状のものが、
その継ぎ足し様ワイヤー。





入江の少し海寄りから捲き上げ小屋をみたところ。





潮の引いた入江に降りて、
かつて船台が乗っていた中央の軌道を間近で見たところ。
約150年前の機械は、潮と風にさらされて、
かなりボロボロです。





捲き上げ小屋を背にして海側の眺望。
満潮の時に海中に沈めた船台に船を乗せ、
干潮の時にドッグに引き上げて作業をしていたそうです。
また、両岸の護岸はかつて軍艦島の堤防にも使われた、
天草石によるもので、
現在も当時のオリジナルのまま残存しています。





約150年の時を越えて、
狭い入江に密集する近代化遺産の宝石箱。
次回は巻き上げ小屋の中も見てみようと思います。

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2 Comments

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お久しぶりです (えいはち)
2010-11-23 11:22:48
いいですねー、ドック。
♪I'm sittin' on the dock of the bay♪
この夏、大森の人工ビーチに行きましたが、その近くにも小規模なドックがありました。
http://ei8at12so.seesaa.net/article/158634490.html
水没していくレールが堪らなかたのですが、同調者が現れ、周辺にいくつもあること知らせてくらました。
http://ankyoneko.exblog.jp/14308232
金谷の石井造船所跡も今はどうなってるでしょうね。
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▼えいはちさんへ (KLO @ 廃墟徒然草)
2010-11-23 15:28:52
お久しぶりです!ご無沙汰しております(汗)
水没してゆくレール、いいですね!
金谷の造船所はどうなったんでしょうね。
年末年始富津へ行くので、
時間があったら見てこようと思います。
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