三浦春馬氏 最後の主演作、「天外者」が
ハワイ国際映画祭に出品されることに決定しました。
一般の映画館での上映の可能性が高まりました。
期待します。
https://hiff.org/events/tengaramon/?fbclid=IwAR3a6UQh9DrE1S_hgdxgwx4aV5H9-fCxv7nzXPfQplL18D2nLTUvHPLElyc
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朝ドラ「あぐり」
春馬氏のデビュー作が再放送されております。
出演部分を24年ぶりに見ることができてました。
東京の夫の元に向かうあぐりが、汽車の中で出会う親子連れ。
小さい男の子が、「お腹がすいた~~」とぐずるシーン。
母親が「次の駅で何か買ってあげるから」と言っても
「お腹すいた~、お腹すいた~、お腹すいた~」連呼。
あぐりが「どうぞ」と でっかいおむすび🍙を差し出すと
「ありがとう」も言わずにぱくついていた少年。
字幕では「子供」になってますが、
ちゃんと「しょうたろう」という役名がありました!!
冴久馬―― 三浦春馬
マナ ――― ??
< 第 九 章 >
同じ高校にいたでしょう、日本の」
漁師の青年に駆け寄って叫んだが、
不思議そうに見返すだけだ。
ボウボウに伸びた髪が茶褐色に焼けている。
「マナ、どうした。こいつは言葉がわからないんだ」
クンバさんが言う。
「わからないの?この人は日本人よ、私と同じ」
クンバさんは しょんぼりして首を振った。
「言葉だけでねえ、浜辺で気を失って倒れていて、
何も覚えてねえだ」
「なんですって!」
漁師の青年の瞳は焦点があっていない。
「あなたは、冴久馬くんよ。ご両親も心配して待っている。
どうして分からないの?私だってば、マナ。
ねぼけマナコのマナ!」
私のことが分からない!?
記憶喪失……。
なんてことだろう。
だから、待っても待っても帰ってこなかったんだわ。
呆然としているうちに、クンバさんは、
冴久馬を連れて浜へ帰っていってしまった。
< 第 十 章 >
そうだ!
退屈な会議中に思いついて、つい叫んでしまったので、
活動チームの皆が振り向いた。
「あ、すみません、なんでもないんです」
と言いながら、我ながらナイスアイデア!と
心の中で笑っていた。
冴久馬くんが大好きだった、
カメレオンを見れば、記憶が戻るかも?
しかし、超、難関なのが
カメレオンをどうやって持って行くか、だ。
クンバさんに相談してみると、この島にも南米のと似た
緑色のおぞましいのがいるらしい。
「おし、俺がどこかのジャングルで探してきてやろう」
そして、数日後、クンバさんが分厚い唇を
ニヤケさせてやってきた。
手には、ヤシの葉で囲んだ宝石のような??カメレオン。
顔がひきつり、トリハダがたつのをどうしようもできないが、
浜で魚をより分けている冴久馬くんのところへ向かった。
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「冴久馬くん、これ、分かる?」
カメレオンをクンバさんの手からぶら下げて
見せられた彼の表情は、うつろなまま。
「君が大好きだった、カメレオンよ。
ほら、子どもの時に大切にしてたでしょう」
すると……すると……
乾燥ワカメののれんの間から覗いていた
彼の瞳に小さな光がともった。
「お前……、ねぼけマナコのマナ!大丈夫なのか、
気を失っちまって!」
「え……」
魚のにおいの沁みついた仕事着の
ポロシャツのままの胸に、
ぎゅうううう~~~~~と、抱きしめられた。
「やっぱり、冴久馬くん……その瞳があなた!
すぐに分かったわよ、キラキラした瞳が変わっていない!」
「良かったあ、俺、カメレオンの
カメ吉にびっくりさせちまって、どうしようかと、
パニクッちまって急いで帰っちまったから。
で―――保健室で目を覚ましたのか?」
「え?」
と思っている間に、ぐちゃぐちゃに抱きしめられた。
「マナの眼が俺、好きなんだ。ねぼけマナコのよ。
ビックリするなんて思わなかったんだ……」
ま、待て。。。
記憶が戻ったらしいけど、
保健室って小学校の記憶だろう。
そんなことにはお構いなし、
磯くさい胸から逃げられない。
クンバさんの捕まえてきたカメレオンが、
のっそりと私の腕に昇ってきたけど、
今度は必死で悲鳴をかみ殺した。
大好きな瞳の冴久馬くんが帰ってきたのだから―――。
ほっとしたとたんに、
保健室のオバチャン先生かと……」
★★★(@_@;)★★★!!
「瞳があなた!」 完。ってほど長くない(笑)
★最後まで お読み下さいました方へ
心より感謝申し上げます。
<イメージ>
冴久馬 ――― 三浦春馬
マナ ―――― ??
< 第 七 章 >
黄金の浜辺に波が打ち寄せている。
潮騒とともに、薄い薄い波が繰り返しひた寄せる。
大昔からこの十年も変わらず。
二十六歳になった私は日本から遠く離れた
南の島にいた。
あの日、高校の修学旅行で行くはずだった、
あの島に。
十年前の事故を忘れるはずはない。
冴久馬がまだ帰らない。
だからかもしれない。
大人になってから、この島での発展補助の
海外派遣の仕事を選んだのは。
まだ、思春期だった冴久馬。
教室の机の上をスニーカーのまま
飛び跳ねていた冴久馬。
誰よりも太陽のような笑顔をして、
青空の下、汗臭そうなシャツでボールを転がしていた。
(えっ?な、なんか、こんなのが頭に浮かぶって、
まるで冴久馬のことを?)
思い切りぶんぶん頭を振って、水平線に背を向けた。
「どうしたの、マナさん」
活動仲間たちが不思議そうに声をかける。
二年前に おじいちゃんはこの世を去っていった。
ベレー帽が似合った。大正生まれのおじいちゃん。
最期まで「冴久馬を待っててやれ」って言っていた。
そして、今、派遣されて立っている小さな島は
なんという偶然!
おじいちゃんと冴久馬のおじいちゃんが戦争の時に
一緒だった島だった、と
お父さんからのメールで知った。
< 第 八 章 >
島の市は賑やかだ。
褐色の肌の老若男女が カラフルな民族衣装で
押し合いへしあいしている。
市にならぶ香辛料やフルーツの前で
大声を張り上げている。
ここに来て、二年になるからそんな風景を
見慣れている。
今日も良い天気だ。スコールは来るかな。
市に魚を並べにくる、漁師のクンバさんが
ニコニコ笑いながらやってきた。
「マナ、久しぶりだな。こんなに焼けちまって。
もう俺たちと見分けがつかないな」
「また、クンバさんたら、これでも私、乙女……」
……と、言いかけて、動けなくなった。
クンバさんの連れている漁師の青年―――
ボロボロになったTシャツ、
魚と取り換えたのか、腕にはカゴいっぱいの南のフルーツ。
肩まで伸びたカサカサの髪の毛。
彼から目がそらせない。
島の漁師のなりをしていても、その瞳は
思春期のままの冴久馬ではないか。
そう――――。
見間違えない。あの冴久馬の瞳だ。
少年時代の頑張り屋さんの瞳に間違いない。
潮騒も市場の喧騒も黙り込んだ。。
黄金の南の島に、ポツンと立っているのは、
頑張り屋さんの瞳の青年だけだ。
★第九章に続く。