普通“チャシ”と聞いて皆さんは何を想像されるでしょうか?
食べ物?それとも何処かの方言?
実は、近世北海道のアイヌ文化の中から造られたある種の施設と一般的には言われていて、大抵は小高い丘の上などに築かれ周囲を柵などで囲った砦のような施設のことを指すようです。
ただ現在でもアイヌの文化に関する資料が乏しく詳しいことは殆どわかっていないそうでその用途に関してはいろいろな説が唱えられているようですが、一般的には和(倭)人(アイヌ族以外の民)との戦いに築かれた砦と考えられているようです。
2004年夏北海道に調査旅行をした際に、どうしても訪れて見たかった代表的なチャシ3ヶ所をご紹介します。
【鶴ケ岱チャランケ砦跡・ハルトルチャランケチャシ】
釧路駅から釧路川に架かる久寿里橋を渡り道沿いに暫く走ると春採湖があります。
そのほとりに鶴ケ岱チャランケ砦跡はあります。
春採湖周辺は、ボート乗り場や公園・遊歩道が整備されていて、ネイチャーセンターや釧路市立博物館もあって、釧路市民の憩いの場所となっています。
入り口より森の茂みから分け入ること数分でかつて砦のあったであろう広場に出ます。
ここからの眺望は素晴らしくかつてここに砦が築かれていたとすれば最高ロケーションだったことでしょう。
別の場所に移動してみます。
茂みの中に地蔵と石仏が祀られていました。
釧路博物館へ至る遊歩道より
「チャランケ」とは、アイヌ語で「話し合いの場」と、言う意味になるそうです。かつて周辺に住む部族間との会合の場だったのかも知れません。
東南から北西方面を望む(Google Mapsより)
【モシリヤ砦跡】
続いて先程の久寿里橋からすぐにあるモシリヤ砦跡に移動しました。
住宅街の中に突然現れます。
(A)現在セブンイレブンのある辺りから
(B)東南角より
登ると微妙な起伏がけっこうあります。
(それぞれ(C~F) サムネイルをクリックして拡大します。)
(G)北西角より
興味深い地形です。
A~Gは、記事中に記した写真撮影場所となります。(Google Mapsより)
モシリヤ砦跡は、いわゆるお供え型と言われる典型的な例で、1751年(寛延4)に「トミカラアイノ」という人物によって築造されたと分かっている数少ないチャシのひとつなんだだそうです。
以前までは「サルシナイ(芦の生えている沢)チャシ」、「ポロ(大きい)チャシ」とも呼ばれていたそうですが、現在の「モリシヤ」とは、「島のある川」の意だそうす。
北西から北東方面を望む(Google Mapsより)手前角の地形写真(G)が興味深いです。
【オタフンベチャシ跡】
ここは、今回のツアーで一番興味深かったチャシのひとつです。
釧路市内より根室本線と並走する国道38号線の海沿いをひたすら走り恋問海岸を過ぎ直別川を渡った先から道道1038号に入って海岸に出るとすぐに右手に小高い異様な丘陵が見えて来ます。
オタフンベチャシ跡全景(駐車スペースのある東北方面から南西方向を望む)
南西から東北方面を望む
こちらから頂上へ登ることが出来ます。
頂上からの眺望は、絶景です。ただし登るには、かなりの急斜面で難儀します。現在はわかりませんが、訪れた当時は登山路らしきものはありませんでしたので、ほぼ直登ルートでした。
俯瞰写真(Google Mapsより)やはりここも興味深い地形です。土塁と思われる境界が今でもハッキリ見る事が出来ます。
オタ・フンベとは、アイヌ語で“砂・クジラ”の意味だそうです。
馬の背状に厚内海岸へと伸びる眺望抜群の立地にあり上部の壕で囲まれた平坦面は、21m×7m。頂上の標高は約27mあるそうです。
古い伝承では、以下のような記録が残っています。
昔、白糠アイヌの長は立派な宝物を持っていると評判が高かったので、メナシ(北海道東方)で一番勢力のあった厚岸アイヌの長が奪い取ろうと攻め込んできた。激しい戦いが各所で行われたが、白糠軍は厚岸軍にうち破られ最後の本拠地オタフンベチャシを死守することとなった。必死の防戦に攻めあぐんだ厚岸軍は一策を案じ、夜中に砂で海浜にクジラの形を作り、その上に魚を置き、油をまき、「寄りクジラ」に見せかけてその陰に軍を伏せておいた。
夜が明け、たくさんのカラスが群れ集まっているのを見た白糠軍は、食糧不足に苦しんでいたので、「寄りクジラ」だと思い込み、武器も持たずに駆けつけたところ厚岸軍のためにうち破られてしまった。それを見た白糠の長もチャシから出て戦ったが、重傷を負い戦死してしまった。厚岸軍は白糠の長の屍を葬り、引き揚げた。だが、船に乗ってこぎ出そうとしたところ、長を葬った場所から飛び出した蜂の大群に襲われ、ほとんど刺し殺されてしまい、残った者はほうほうの態で逃げ帰ったという。
(以上はこちらより引用しました)
(訪問日:2004年8月)
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