今月初めから広尾に移転した山種美術館へ行く。
以前の千鳥ヶ淵にあったこじんまりとした雰囲気も好きだったが、今のモダンな感じも素敵。
好きな絵がある。
速水御舟(はやみ ぎょしゅう)の「炎舞」だ。
今日はその絵を見に行った。
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速水御舟は大正、昭和を駆け抜けた画家だ。
絵が好きだった少年は画家になり、25歳で浅草の路面電車に轢かれ、左足首から下を切断。
でも画家としての自分を見失わなかった。
「京の舞妓」を発表したが、酷評され軽井沢で静養。
その時に見た炎に吸い込まれる蛾を一心不乱ににデッサンし、完成したのが「炎舞」だ。
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紅蓮の炎、妖しい光。
観察の眼力とその結晶。
渦巻く炎に乱舞する蛾たちがいざなうのは、漆黒の闇。
写実と幻想の果てが、その絵の中にはあった。
炎の下部は抽象的なのだが、炎から煙に変わる部分がなんとも溜息モノ。
吸い込まれていく蛾の心境が分かる。
蛾の羽の精緻さに息を呑む。
今にも絵の外に飛んできそうではないか。
それにこの蛾。
正面から見た構図になっている。
炎は横から見た構図なのに。
見飽きない不思議な絵だ。
やっと「炎舞」の実物を見られた。
嗚呼、もう思い残すことはない。
ルーベンスの絵を見て息絶えたネロ(フランダースの犬)になった気分。
その他の作品も良かった。
「埃及所見」
ロバさんの足音が聞こえてきそう。
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「婦女群像」(未完)
ヨーロッパから帰国して、人物像を描き始めた御舟。
キャンバスに染みができてしまい、再チャレンジをしようとしていた矢先に亡くなってしまった。完成されたものを見たかった。とにかく大きな絵だった。
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「名樹散椿」
桜を描こうとしていたのだが、良い朱色が手に入ったために描いた絵。
椿も良いが、金地の滑らかさが印象的だった。「撒きつぶし」の技法。
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「夜桜」
なんて綺麗な絵だろう。
釘付けになってしまった。
桜の可憐さと夜の空気の静謐さがマッチした作品。
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40年の短い人生の中で、様々な技法や様式を探求した速水御舟。
そのチャレンジ精神には脱帽してしまう。
どの作品も完成度が高く、作品を通して御舟の人柄を感じた。
美術には深い信念と情熱を持っていた御舟だが、ヨーロッパに半年間行っていた間も3人の娘や奥さん其々に手紙を書いていた家族思いの一面など、今回の展覧会で知った。
小さな展覧会だったので2周ほどし、2時間滞在。
静かな空間でゆっくりと速水ワールドを堪能できた。
またこの美術館のミュージアムショップの充実ぶりは素晴らしい。
図録をはじめ、大人買いしてしまった。
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以前の千鳥ヶ淵にあったこじんまりとした雰囲気も好きだったが、今のモダンな感じも素敵。
好きな絵がある。
速水御舟(はやみ ぎょしゅう)の「炎舞」だ。
今日はその絵を見に行った。
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速水御舟は大正、昭和を駆け抜けた画家だ。
絵が好きだった少年は画家になり、25歳で浅草の路面電車に轢かれ、左足首から下を切断。
でも画家としての自分を見失わなかった。
「京の舞妓」を発表したが、酷評され軽井沢で静養。
その時に見た炎に吸い込まれる蛾を一心不乱ににデッサンし、完成したのが「炎舞」だ。
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紅蓮の炎、妖しい光。
観察の眼力とその結晶。
渦巻く炎に乱舞する蛾たちがいざなうのは、漆黒の闇。
写実と幻想の果てが、その絵の中にはあった。
炎の下部は抽象的なのだが、炎から煙に変わる部分がなんとも溜息モノ。
吸い込まれていく蛾の心境が分かる。
蛾の羽の精緻さに息を呑む。
今にも絵の外に飛んできそうではないか。
それにこの蛾。
正面から見た構図になっている。
炎は横から見た構図なのに。
見飽きない不思議な絵だ。
やっと「炎舞」の実物を見られた。
嗚呼、もう思い残すことはない。
ルーベンスの絵を見て息絶えたネロ(フランダースの犬)になった気分。
その他の作品も良かった。
「埃及所見」
ロバさんの足音が聞こえてきそう。
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「婦女群像」(未完)
ヨーロッパから帰国して、人物像を描き始めた御舟。
キャンバスに染みができてしまい、再チャレンジをしようとしていた矢先に亡くなってしまった。完成されたものを見たかった。とにかく大きな絵だった。
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「名樹散椿」
桜を描こうとしていたのだが、良い朱色が手に入ったために描いた絵。
椿も良いが、金地の滑らかさが印象的だった。「撒きつぶし」の技法。
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「夜桜」
なんて綺麗な絵だろう。
釘付けになってしまった。
桜の可憐さと夜の空気の静謐さがマッチした作品。
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40年の短い人生の中で、様々な技法や様式を探求した速水御舟。
そのチャレンジ精神には脱帽してしまう。
どの作品も完成度が高く、作品を通して御舟の人柄を感じた。
美術には深い信念と情熱を持っていた御舟だが、ヨーロッパに半年間行っていた間も3人の娘や奥さん其々に手紙を書いていた家族思いの一面など、今回の展覧会で知った。
小さな展覧会だったので2周ほどし、2時間滞在。
静かな空間でゆっくりと速水ワールドを堪能できた。
またこの美術館のミュージアムショップの充実ぶりは素晴らしい。
図録をはじめ、大人買いしてしまった。
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