世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

旅情

2011年03月04日 23時07分59秒 | Weblog
仕事で遠出の外出。
久々の直行。

電車の車窓から富士山が大きく聳えているのを見て、「嗚呼、こんなに遠くまで来たんだ」と思う。
昨夜は眠れなかった。
如何せん、行ったこともない場所に仕事で行くのである。
普段は篭の中の鳥である内勤事務員が。
緊張しないわけない。


今、「八日目の蝉」を読んでいる。
主人公の逃亡中の心理が、今日の移動中の自分の心情と重なった。

一日中、北風が強く、両足で踏ん張らないと飛ばされていきそうだった。
それにすこぶる寒く、外でバスを待っている間、凍死しそうだった。
スーツの下のインナーを長袖のニットにして正解だった。

お昼ご飯は、パスタのランチ。
釜揚げしらすと菜の花のジェノベーゼ。
見た目が春らしく、美味しかった。


静かな店内には空気のようにクラシックが淡々と流れていて、心地よかった。
喫煙できる店が少なくて、仕方なく入った店だったが大当たりだった。
遠すぎて多分もう二度と来ないと思うが。



バスや電車を何度も何度も乗り継いだ。

山々は冷ややかな空気にはっきりと輪郭を宿し、雲は忙しなく移動していく。
畑の真ん中を突っ切っている道路の端を、畑仕事を終えたような老婆がゆっくりとした足取りで歩いている。
バスの隣の座席では、見慣れぬ制服の高校生が単語帳を捲っている。
それらの移り行く景色を見ながら思う。
普段、私が会社で仕事をしている間、こういう場所ではこういう時間が流れていて、こういう人がこんなふうにして生活しているんだ、と。
…って、これって立派な旅情だよな。
「旅」でもく、「出張」でもなく、あくまで「外出」なんだが。


夕方、会社に帰還。
「恥ずかしながら帰って参りました」と横井正一さんばりの帰還を果たした。
もしくは、サンプルリターンに成功した小惑星探査機はやぶさ。
イトカワの砂のような「情報」を携えての帰還…。

強風に煽られて、せっかくの巻き髪も、しおしおのパァ~である。
脱水機にかけられたウニみたいな私に、「今日はどこに行っていたんデスカ?」と尋ねる部長。
ガーン…。

部内では、明日、挙式を迎える後輩男子タイスケくんの話題一色だった。

今日はよく寝て、肌の調子を整えよう。