嶽本野ばら先生の小説「カフェー小品集」の舞台の一つになった名曲喫茶ミニヨン。
前から行ってみたかった。
荻窪駅から徒歩3分。
古びたビルの2階。
ドアを開けると非日常がそこにあった。
左手に、夥しいレコードとカウンター、右手にグランドピアノ。
アナログ的な音楽装置が中央に鎮座し、それを囲むかのようにテーブルが配列されている。
奥では渋い感じの何人かの殿方が、原稿用紙に向かいペンを走らせていた。
私はブレンドコーヒーを頼んだ。
そのとき、
「御煙草は控えめにお願いします」
と女性店主に言われた。
すっかりびびってしまった私。
一週間でバケツ1杯の吸い殻を生産するような吸い方をしている私が、久々にちびちびと煙を吸っていた。でも吸った気にならなかった。
暫く借りてきた猫状態でいたが、オーケストラが鳴り響く中、野ばら先生の本を開くと落ち着いてきた。
この小説の舞台となった喫茶店は大概が閉店になってしまったらしい。
薄暗い店内、背後の窓からはスポットライトのような春の光が射して、持参してきた本の一番好きな頁を白く浮かび上がらせていた。
果たして出されたコーヒーは大変味わい深いものであった。
この光も味も、本当に現実なのだろうか。
いつしか、私は、小説の中に迷い込んだ乙女になっていた。
前から行ってみたかった。
荻窪駅から徒歩3分。
古びたビルの2階。
ドアを開けると非日常がそこにあった。
左手に、夥しいレコードとカウンター、右手にグランドピアノ。
アナログ的な音楽装置が中央に鎮座し、それを囲むかのようにテーブルが配列されている。
奥では渋い感じの何人かの殿方が、原稿用紙に向かいペンを走らせていた。
私はブレンドコーヒーを頼んだ。
そのとき、
「御煙草は控えめにお願いします」
と女性店主に言われた。
すっかりびびってしまった私。
一週間でバケツ1杯の吸い殻を生産するような吸い方をしている私が、久々にちびちびと煙を吸っていた。でも吸った気にならなかった。
暫く借りてきた猫状態でいたが、オーケストラが鳴り響く中、野ばら先生の本を開くと落ち着いてきた。
この小説の舞台となった喫茶店は大概が閉店になってしまったらしい。
薄暗い店内、背後の窓からはスポットライトのような春の光が射して、持参してきた本の一番好きな頁を白く浮かび上がらせていた。
果たして出されたコーヒーは大変味わい深いものであった。
この光も味も、本当に現実なのだろうか。
いつしか、私は、小説の中に迷い込んだ乙女になっていた。