大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記・9『天下布部』

2021-06-20 14:36:42 | ノベル2

ら 信長転生記

9『天下布部』   

 

 

 アハハハハハハハ 

 うっけるぅ!

 それって、あんたのキャッチコピーじゃん!

 てか、ヘ-キなわけ? そんな部活に入ってさ!?

 アーハハハハ アハハハハ お腹よじれるウウウウウ……

 

 天下布部に入部したと言うと、市は腹を抱えて笑う。

 

 ツボにはまったのだろうが、こんなに腹を抱え、大口開けて笑う市をみるのは初めてだ。

 こいつのノドチンコを見るのは初めてだ。

 美人の誉れ高い女だが、ノドチンコは平凡だ。

 美人であることの自覚はあるんだろうが、ノドチンコの平凡さは気が付いていないだろう。

 急いでスマホを出して、写真に撮る。

 パシャ

「ちょ、なにとってんのよ!」

「まあ、見てみろ」

「ノ、ノドチンコのアップ(#'∀'#)!?」

「左右対称というだけの詰まらんノドチンコだ」

「あ、あたりまえでしょ! こんなの普通でいいのよ、普通で!」

「サルのノドチンコはおもしろいぞ。笑いに比例して、喉もノドチンコも振動する。振動するだけではなく、縮んだり膨らんだり、時には左右に振れて、喉の内壁を打って、えも言えん倍音になる。サルの明るさの秘密は、こういうところにも表れるんだ」

「そんなことはどーでもいいのよ! 天下布武をパクられて、なんにも言えない信長ってゆーのが、メッチャ情けないんですけど!?」

「字が違う。天下布部と書くのだ」

 スマホに文字を出してやる。

「え? 武が部になってんの?」

「天下布武は天下に武を布く。この信長の武力によって天下に平和をもたらすという俺の意気込みを現すものだ。しかし、こちらのは部分の『部』だ」

「どういうこと? 言葉遊びにパロってるだけに見えるんですけど」

「部分を布くということだ」

「部分?」

「個性と云うことだ。この世界では、自分の個性を伸ばすことが一番ということを現している。信玄、謙信のいずれかは分からんが、うまいことを言う」

「そ、そーなんだ」

 負けと思ったのか、興味を失ったのか、市はミシンを持ち出してリビングのテーブルに据える。

「何を始めるんだ?」

「スカート短くすんの」

「一日穿いただけだろ」

「だって、みんな短くしてんだもん」

「みんながやってるからというのは、志が低い。ミニスカは私服だけにしろ」

「いいじゃん、元々、あたしは美脚なんだから、見せていいなら、見せなきゃ損っしょ」

「ほう……」

「な、なによ」

「いや、なんでもない」

「ふん」

 ジョキジョキ

 惜しげもなく、スカートの裾を切り落とすと、ガガガーーとミシンをかけ始めた

 プツン

「どうした、頭の線が切れたか」

「糸が切れたのよ……よし」

 ガガガ ガガガ……プツン

「また切れた!」

 ガガガ ガガガ……プツン

「ま、また」

 ガガガ ガガガ……プツン

「ま、また……!!」

「糸のかけ方が間違っている」

「え、そうなの?」

「ここと、こことが逆だ」

「え、違いが分からないんですけど」

「どけ、俺がやってやる」

 ガガガガガガガガガガガガ

「ほら、できた。あとは、きれいに折ってまつり縫いしておけ」

「あ、ありがと」

「フン」

「フンって言わなくていいでしょ、フンて」

「市」

「なによ!?」

「おまえの美しさは脚だけではない」

「そ、そう?」

「ああ、胸の形もいいし、尻の姿もいい」

「あ、まあ、それなりにね」

「だったら、それも見えるようにしてはどうだ?」

 ボキ!

 こんどは、針を折ってしまった。

 

 下手に妹をおちょくるものではない。

 日付が変わるまでかかって、手縫いでまつり縫いをする羽目になってしまったぞ。

 庭で熱田大神の笑う声がした。

 

 

☆ 主な登場人物

  •  織田 信長       本能寺の変で打ち取られて転生してきた
  •  熱田大神        信長担当の尾張の神さま
  •  織田 市        信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
  •  平手 美姫       信長のクラス担任
  •  武田 信玄       同級生
  •  上杉 謙信       同級生

 

 

 

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せやさかい・212『水着の準備』

2021-06-20 09:04:53 | ノベル

・212

『水着の準備』さくら    

 

 

 水着の準備した?

 

 明日の用意をしてたら、留美ちゃんが言うてくれた。

「あ、せやね!」

 元気に思い出して、衣装ケースの中からスク水を取り出す。

 

 留美ちゃんが一緒に暮らすようになって、主な衣類にはイニシャルを入れてる。

 なんせ、同じ中三で、学校関係の衣類や持ち物は、名前とかイニシャル付けとかんと分からんようになる。

 詩(ことは)ちゃんのもあるんで、洗濯機を使うものは完ぺきを期してる。

 パンツとか穿き間違えたら、メッチャ恥ずかしいしね(^_^;)。

 

 留美ちゃんが越してきた時に、当面のものは終わってたんやけど、夏物は後回しにしてた。

 

 それで、来週から水泳の授業が始まる……のを忘れてた。

 留美ちゃんは、しっかり覚えてて注意をしてくれたというわけ。

「……なんか臭う(;'∀')」

 水着を出してビックリ。

「あ、いっしょにしてたんだ……」

 留美ちゃんが気の毒そうに言う。

 無精者のあたしは、普段は使えへん衣類といっしょのとこに水着をしもてた。

 小学校の頃の制服とか、古い縫いぐるみとか、サイズが合わへんようになった思い出の服とかの衣装ケースに。

 なんでか言うと、普段使いの衣装ケースが一杯になって収まらんようになって、邪魔くさいので、余裕があった衣装ケースに放り込んでたというわけ。

 憶えてただけマシやねんけど、その衣装ケースは、めったに開けへん非常持ち出しみたいなもんやから、大量の防虫剤が入ってる。

 で、その臭いが、完璧にスク水に移ってしもたというわけ……。

「水に入ったら分からなくなるよ(^_^;)」

 留美ちゃんは優しくフォローしてくれる。

 せやけど、これは出しただけで臭う。

 想像してみる。 

 更衣室で着替えよと思たら「なんかニオウね」と言われそう。

 特に普段からニオイに敏感な女子。先週、エアコンが点いたときも「クッサー!」と遠慮のなかったA子なんかもおる。

 プールサイドで準備運動してる間も臭いっぱなしやろし……。

「いっかい洗うわ!」

「あ、でも、明日プールだよ。ゼッケンの付け替えも……」

 せや、来週と思てたら、今日は日曜日。で、月曜日には体育の授業がある(;'∀')。

 用意のええ留美ちゃんは、ゼッケンも今年のにしてるけど、うちは、まだ二年生のときのまま。

 ガラ!

 窓を開けて天気を確認。

「おし、今日は日本晴れや!」

「そ、そだね(^_^;)」

 階段を一段飛ばしで駆け下りて、洗濯機に放り込んでスイッチオン!

 ゴーーー

 洗濯機が「了解、ご主人様!」という感じで任務開始!

 洗濯機の番してるのもアホみたいなんで、部屋に戻って、ついでに衣装ケースを整理する。

 ついでに、ベッドの下を整理したり、掃除機かけたりと我ながら時間を無駄にせえへん。

 留美ちゃんは、ええ子で、いっしょに付き合ってくれる。

 お喋りしてるうちに、詩ちゃんが、ダミアの散歩に失敗したことを思いだす。

「よし、うちらでやろか!」

 お片付けハイになったうちは、留美ちゃんとブタネコダミアの散歩に出かける。

 今日のダミアは機嫌がええのんか、素直に言うことをききよる。

 学校の向こうから公園に回って、お喋りして帰る。

 

 で、洗濯してるのを忘れてしもた。

 

 あ!?

 

 思い出した時は夕方。

 で、洗濯機の意地悪か、調子が悪いのか脱水ができてへん。

 うちら女子の洗濯物は本堂脇の目に着かへんとこに干すんやけど、午後は日の当たらん場所。

 しゃあないんで、レギュラーの物干しに。

「えと……裏がえしにしないと乾き悪くなるよ」

 留美ちゃんが、遠慮気味に注意してくれる。

「あ、そか……」

 で、裏返しにすると……ちょっと恥ずかしい。胸のパットのとことかね……。

「表のままでいくわ!」

 今日の洗濯物は、とうにおばちゃんが取り込んでて、物干しにはうちの水着だけ。

 なんや、陳列してるみたい(;'∀')。

 今度は、忘れんように目覚ましかけて部屋で待機。

 

 で、このあとの展開が、我ながら面白いので、あした続きをレポートします!

 乞うご期待!

 

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ライトノベルベスト・『男子高校生とポケティッシュ』

2021-06-20 06:24:20 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『男子高校生とポケティッシュ』 




 街頭で配っているポケティッシュは必ず受け取る。

 正確に言うと、無視ができない。

 ポケティッシュを配っているのは駅の入り口、商店街の入り口、交差点。それも人の流れを掴んだ絶妙な場所に立っている。

 受け取らないようにしようとすると、かなり意図的にコースを外れなければならない。なんだか、それって露骨に避けているようで「あ、避けられた」と思われるのではないかと、つい流れのままに通って受け取ってしまう。

 友達なんかは、すごく自然にスルーする。まるで、そこにティッシュを配っている人間が居ないかのように。

 それも、とても非人間的な行為に思えてできない。

 子どもの頃は、ポケティッシュをもらっても家に帰ってお婆ちゃんにあげると喜んでくれた。

 お婆ちゃんは、家のあちこちに小箱に入れたポケティッシュを置いていて、みんなが使うものだから自然に無くなり、ボクがもらってくるのと、無くなるのが同じペースだった。

 だから、なんの問題もなかった。

 二年前にお婆ちゃんが亡くなってからは、そのサイクルが狂いだした。

 お婆ちゃんが亡くなってからは、ボクはポケティッシュを誰にも渡さなくなった。正確には忘れてしまう。お婆ちゃんのニコニコ顔が、ボクの脳みそに「ポケティッシュを渡せ」という信号を送っていたようだ。

 ボクがもらったポケティッシュは、カバンやポケットの中でグシャグシャになり、使い物にならなくなってしまう。

「もういい加減、この習慣やめたら」

 お母さんは言う。

「だって……」

「だって、あんた、時々ガールズバーとかのもらってくるんだもん」

「しかたないよ、渋谷通ってりゃ、必ずいるもん」

 お婆ちゃんは、こういうことは言わなかった。

 で、この治らない習慣のために『男子高校生とポケティッシュ』なんてモッサリしたショートラノベを書かれるハメになってしまった。

 ラノベと言えば、タイトルの頭に来るのは女子高生という普通名詞か、可愛い固有名詞に決まっている。「ボク」とか「俺の」とかはあるが、むき出しの「男子高校生」というのはあり得ない。

 そんなボクが、いつものように渋谷の駅前でポケティッシュをもらったところから話が始まる。

「おまえ、またそんなものもらってんのかよ」

「なんだか、オバハンみたいでかわいいな」

「てか、それガールズバーじゃんか」

「アハハ」

 そうからかって、友達三人は、ボクの先を歩き出した。

 ボクは、一瞬ポケティッシュをくれた女の子に困惑した顔を向けてしまった。刹那、その子と目があってニコッと彼女が笑った……ような気がした。

 後ろで、衝撃音がした。

 振り返ると、友達三人が、バイクに跳ねられて転がっていた。

 ボクはスマホを取りだして、救急車を呼んだ。もしポケティッシュをもらわずに、三人といっしょに歩いていたら、運動神経の鈍いボクは、真っ先に跳ねられていただろう。

 警察の事情聴取も終わり、病院の廊下で、ボクは友達の治療が終わって、家の人が来るのを待っていた。

 気づくと、ズボンに血が付いていた。

「あ」と思って手を見ると、左手の甲から血が流れている。事故の時、小石かバイクの小さな部品が飛んできて当たったのに気が付かなかったみたいだ。

 リュックからポケティッシュを出して傷を拭おうとした。慌てていたんだろう、ティッシュの袋の反対側を開けてしまい、数枚のティッシュが、中の広告といっしょに出てしまった。我ながらドンクサイ。

 取りあえず血を拭って、廊下に散らばったティッシュと広告を拾った。

――当たり――

 と、広告の裏には書いてあった。

 三人とも入院だったけど、家族の人が来たので、ボクは家に帰ることにした。

 帰ると、お母さんが事情を聞くので、疲れていたけど、細かく説明した。

 ぞんざいな説明だと、必ずあとで山ほど繰り返し説明しなければならないので、お父さんや妹、ご近所に吹聴するには十分な情報を伝えておいた。

 ボクは、何事も、物事が穏やかに済む方向に気を遣う。

 部屋に入ってビックリした。

 女の子が一人ベッドに腰掛けている。

「お帰りなさい」

 百年の付き合いのような気楽さで、その子が言った。

「ただいま……て、君は?」

「当たりって、書いてあったでしょ?」

「え、ああ、うん……」

「あたし、当たりの賞品」

「え……」

「長年ポケティッシュを大事にしていただいてありがとう。ささやかなお礼です」

 そう言うと、彼女は服を脱ぎだした。

「ちょ、ちょっと」

「大丈夫、部屋の外にには聞こえないようになってるわ。時間も止まってるし、気にしなくていいのよ」

 そう言いながら、その子は、ほとんど裸になって、ベッドに潜り込んだ。

「あ……そういうの」

「ダメなの……?」

「あ、ごめん……」

「フフ、君ってかわいい……いい人なんだね」

「どうも……」

「じゃ、三択にしましょう。① 一晩限りの恋人。当然Hつき。② 一年限定のオトモダチ。ときどきいっしょに遊びにいくの。➂ 取りあえず、一生の知り合い。さあ、選んで」

 こういうときは、ボクは、一番消極的なものを選ぶ。

「じゃ、取りあえず知り合いってことで……」

「わかったわ」

 そういうと、脱いだ服をベッドの中で器用に着て、部屋を出て行った。

「じゃ、またね」

 それが最後の言葉だった。

 明くる日、電車の中で気分の悪くなった女子高生を助けた……というか、気分が良くなるまで付き合った。

 それがきっかけで、ボクは彼女と付き合い始め、五年後には結婚することになった。

 誓いの言葉を交わし、エンゲージリングをはめてやって気が付いた。

「ね、一生の知り合いよ。なにもかも知り尽くそうね」

 と、彼女が言った……。

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コッペリア・29『再チャレンジ……』

2021-06-20 05:58:28 | 小説6

・29

『再チャレンジ……』 




 咲月は、オーディションの付き添いに栞を選んだ。

 学校の友人だけでなく、家族からもAKPの再チャレンジに反対されてるんだろう。そう思ったが、栞はなにも言わずに会場まで付いて行ってやった。

 咲月は受験生としては、やや年かさだった。たいて中学生くらいで、中には小学生と思しき子までいた。

「気にすることなんかないよ。要は実力と時の運。実力は……大丈夫。運は、あたしが連れてきたから!」

「え、どこに?」

「咲月の影……ほら、いつもより濃いでしょ。こいつが逃げて行かないように……」

 栞は、目に見えない針と糸を取り出すと、影と咲月を縫い付けてしまった。

「これって……?」

「ヘヘ、ピーターパンの最初。ウェンディーがピーターパンの影を縫い付けちゃうじゃん。あそこからファンタジーが始まるんだ」

「ふふ、ありがとう」

 その妙なパントマイム(栞には真剣なおまじない)に同じ控室の受験者や付添人たちもクスクス笑っている。

「いい、卒業した服部八重はオーディションのときは、二十歳。それも一回落ちて、あとで審査員が、あの子惜しいねって呟いて決まったんだからね。咲月は、絶対いける!」

「ありがとう。栞に言われると、そんな気になってきた」

「ハハ……それに、今日の審査には、総監督の矢頭萌絵が入ってるよ」

「え、どうして分かるの?」

「超能力!」

 栞には、人間になった時(颯太には、相変わらず動く人形だが)少しばかり人間には無い能力が身についていた。

「……うん、水分さん、歌はそこそこだね」

 と、ディレクターの大仏康。

「あと三十秒で自己アピールして」

 と、矢頭萌絵。

「二回目のチャレンジなんですけど、あたしって、二回目の方が力が出るんです。体力測定もそうだし、お料理も憶えて二回目からはバッチリです。それに、何より誕生日が四月八日。AKPのオープンと同じ日。あたしはAKPに幸運をもたらす人間です」

「きみ、二回目の二年生なんだね」

「はい。あたし、なんでも二度目に力が出ますから」

「でも、この業界、一発で決めなきゃならないことだってあるわよ」

「大丈夫。AKPも二回目のチャレンジですから、AKPに関しては失敗しません。それに、ここに来るまでに宝くじ買ったんです。前も買いました。前は外れでしたけど、今度は宝くじも当たります!」

 前回と違って、間を開けずウィットの効いた受け答えができた。咲月は手ごたえを感じた。

「精一杯やれた!」

 控室に戻ると、咲月は栞に抱き付いた。

「そうみたいね。今度はひい爺ちゃんにも喜んでもらえるよ!」

 二人で喜んで会場をあとにしようとして、栞はかすかな異変を感じた。

「ちょっと先に帰ってて。今度は、あたしの番みたい……」

 そう言って栞は、審査会場に戻って行った。

 正確には審査会場の審査員控室の隣の部屋。スタッフやメンバーが休憩に使う部屋へ……。

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