まともに当たって外してしまいました(^_^;)
この説明に、瀬戸内先生は「え?」という顔をした。
「だから、あたしの裏拳がまともに当たって、矢治君の顎を外してしまいました」
「あ、あーー、なーるほど…………え!?」
瀬戸内先生は他人事みたいに気の抜けた返事をしてからビックリした。
階段下の盗撮三人組をやっつけてしまった直後に瀬戸内先生がやってきたのだ。
異常を感知し、教師の使命感でやってきたのではない。化学準備室でお昼をした直後に、たまたま出くわしただけである。
たいていのことは見て見ぬふりをする瀬戸内先生だが、あの立ち廻りを目撃してしまっては、そうもいかない。
事務室の人たちも出てきているので、どうしても教師らしく振る舞わざるを得ないのだ。
「えと、病院とか行かなきゃだめかな?」
めんどうは御免だが、怪我をしているのなら放ってはおけない。いちおうアリバイ的に聞いてみる。
「あ、こんなの一発で治ります」
そう言うと、まりあは矢治の顎を掴んだ。
ウギッ! グチャ!
くぐもった悲鳴と顎の骨が正しく収まる音がした。
「はい、もう大丈夫です。でしょ?」
「あ、うん、ぜんぜん大丈夫……」
矢治は目に涙を浮かべながらの泣き笑いで応えた。
「あ、そう。喜田君も矢治君もオーケーね」
「「ハ、ハイ」」
「じゃ、みんな仲良くね。あ、もう大丈夫ですから!」
事務室の人たちも強引に納得させると、瀬戸内先生は、そそくさと行ってしまった。
「ちょっと、スマホ出しなさいよ」
「あ、うん」
迫力負けした矢治は、素直にスマホを出した。
「……なんだ、あたしのだけなんだ」
「あ、あの、悪気はないんだ。安倍さんて可愛いってかコケティッシュてか、その、魅力的だから、ちょっと悪ノリしちゃって」
「常習だったら、このまま生活指導室に引っ張っていくところ。あたしの写メだけでも立派に犯罪なんだけど……行っとく?」
男三人はブンブンと首を横に振りまくった。
「あたしのパンツって、ここにアミダラ女王のプリントがあるの」
マリアは自分のお尻を指さした。瞬間視線を向ける三人だが、すぐに逸らした。
「アミダラ女王が写っていたらブチ殺す!……とこだけどね、ほんのチラッとだから、消去するだけで許してあげ……ごめん、他のデータも全部消しちゃった(^_^;)」
「あ、ああーーーー!」
「なんか文句ある?」
「い、いえ、ありまっせーーーん!」
「じゃ、先生も、ああおっしゃったことだし、これからは仲良くしようね」
「え、あ……」
「いやなの?」
まりあは、すごいジト目で三人を睨んだ。
「「「よ、喜んで!」」」
ドヤ顔で腕を組んではいるが、内心は「しまった!」のまりあであった。